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ミニ四駆に悔いを残していたら過去に飛ばされたの巻  作者: さかざき


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19/20

思春

中学生活は、この前まで小学生だった子どもたちに大きな変化をもたらす。


制服に袖を通しただけで、急に大人になった気分になる。

いや、正確には――

「大人にならなければならない空気」に、放り込まれたと言った方が近い。


上下関係というものを学び、先輩後輩という見えない線が校内に張り巡らされていく。


それに伴って、コロコロ系ホビーは「まだやってるの?」という視線を浴びる存在になった。

いつの間にか子どもっぽいものとして距離を置かれるようになっていた。

ミニ四駆も例外ではない。


(俺は思春期でもないし、中身はただのおっさんだ。今さら気にすることでもない)


周囲は明らかに影響を受けている。


昼休みの会話も変わった。

ホビーやアニメの話題は減り、部活の話、先輩の話、異性の話が増えていく。


あの頃、何に夢中だったのかなんて――

まるで最初から存在しなかったかのように。


コウスケも例外ではなかった。


コロコロコミックを、堂々と机の上に置くことはなくなり、家や学校以外の場所で読むようになった。

それは恥ずかしさというより、コウスケなりの処世術なのだろう。


ユリちゃんの呼び方も変えざるを得なかった。


周囲との兼ね合いを考えると「ユリちゃん」では浮いてしまう。

中学という場所では、それだけで妙な注目を集めてしまうのだ。


「ユリ先輩」


ニマァ。


そう呼ばれると、ユリは口元を緩め隠そうともせずにニヤけた。

年上として扱われることを全身で楽しんでいる証拠だった。


校内では、ユリも多少は大人しくしている。

廊下でセーラームーンの振り付けを披露することもなく、アニメのセリフを大声で叫ぶこともない。


根は相変わらずアレだが、奇行を抑える程度には空気を読めるようになったらしい。

中学という場所は、人を少しだけ大人にする。


奇行が収まったことで元々の容姿の良さもあり、男子からの人気は高いようだった。


それでも――

ミニ四駆に対する熱意だけは、あの頃のままだった。


周囲の温度が下がっていくのとは反比例するように、俺たちの中では、確実に何かが加速している。

冷めるどころか、静かに燃え上がっていた。


今年は、俺にとって山場となるジャパンカップが控えている。

この世界で目的を達成するための、大きな節目だ。


伝説と呼ばれる出来事を、予定通り――

あるいは、それ以上の形で完遂しなければならない。


コウスケはミニ四駆への情熱を失うことなく、全国へ出て活躍すること。

憧れではなく、現実として。


ユリは納得のいく最終回を迎えるために。

途中で投げ出すことも、妥協することも許さない。

自分自身へのケジメだ。


それぞれの目的は違う。

きっかけも、年齢も、考え方も違う。


それでも――

ミニ四駆という、ただひとつの軸において、向いている方向だけは一致していた。


最近は2人からミニ四駆の向上に関する相談を、以前よりも具体的に受けるようになってきた。


ホイールとタイヤ幅の考え方。

レーンチェンジャーでの安定性。

バッテリーとモーターの相性。


話のレベルが確実に上がっている。


それは単なる遊びではない。

目標を見据えた会話だった。


少なくとも今は――

過去世界からの、NGシグナルは感じられない。


ふたりに協力していい、ということなんだろう。

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