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ミニ四駆に悔いを残していたら過去に飛ばされたの巻  作者: さかざき


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15/16

俯瞰

夜。


自分の部屋。


布団に横になり天井を見つめる。


もう何度目になるか分からない、この静かな時間。


最初は戸惑いしかなかった。


目を覚ませば1993年。

小学5年生の身体。

そして、43歳まで生きた記憶だけが、はっきりと残っている。


アニメみたいな設定だと笑うこともなく、

驚きすら長くは続かなかった。


――ああ、そういうことか。


不思議とすんなり受け入れてしまったのだ。


理由は分からない。

だが、この世界にはいくつかの「感覚」がある。


やってはいけないこと。

踏み込んではいけない領域。


不必要に未来を変える行動をしてはいけない、という感覚。


周りの人間の人生を大きく変えてしまう助言や選択。

ジョンの馬券の件が、まさにそれだった。


コウスケのスーパー1シャーシへの転換点も、同じだ。


頭の中に言葉が浮かぶわけじゃない。

ただ、「そうしなければならない」という信号だけが、静かに届く。


それは命令というより、

条件提示に近い。


目的は1つ。


FMシャーシで勝ち続けること。


それ以外の未来は、基本的に変えてはならない。


まるでそれが、

――ここに来られた条件であるかのように。


1つ1つの行動が、

OKか、NGか。


頭の中では、即座にジャッジが下される。


だから難しくはない。

ただ、深く考えようとすると、

思考そのものにブレーキがかかる。


考えるな、と言われている気がする。


今のミニ四駆界を頭の中で振り返る。


四駆郎のアニメ放送は、とうに終わっている。

第一次ブームは完全に去り、熱狂は過去のものだ。


自分がやってきた93年。

この頃のミニ四駆界は、完全な下火。


ジャパンカップの動員数も最低だった。


だが、未来を知っている。


94年。

第二次ブームの火付け役、

レツゴーの連載が始まる。

観客動員数も、目に見えて増え始める。


95年。

FMシャーシにとっての厄年。

あのパーツが出現し、

第二次ブームは、完全な形で到来する。

大会の動員数は、それまでの10倍近くに膨れ上がる。


96年は、あの――。


……やめておこう。


そこから先を考えると、

胸の奥が、少し重くなる。


だんだん、厳しくなってくる。


ユウは、これから起こる困難に、

どう立ち向かうべきかを毎日のように考えている。


だが、答えは出ない。


ネットもない。

スマホもない。

YouTubeもない。

チャットGPTも、この時代には存在しない。


未来の知恵袋は、すべて封じられている。


それでも。


この時代を生きている実感は、

決して悪くなかった。


懐かしい日々を目の当たりにして、

何だかんだで楽しんでいる自分がいる。


テレビから流れる音楽。

平成初期のJ-POP。

令和の歌よりも、こちらの方がしっくりくる。


ゲームも名作ばかりだ。


画質は荒く、システムも簡易的なのに、

何故かこの頃のゲームは、神がかっているように感じる。


テレビ番組もそうだ。


未来のレジェンド級の人気芸人たちの、

若々しいネタやトーク。

いつまででも見ていられる。


テレビの合間に流れるCMも、

どれも懐かしいラインナップだ。


つい口ずさんでしまうCMソングが、耳を離れない。


ただただ、懐かしい。


それにしても、カラダが軽い。


重い肩。

痛い腰。

スッキリしない頭。


それらが嘘のように、

羽のように軽い身体。


これが何より嬉しい。


ふと仲間の顔が浮かぶ。


コウスケ。

ユリ。

ジョン。


いつの間にか、集まった仲間たち。


正直に言えば、

この辺りの記憶は何故か曖昧だ。


当時の人生には、

存在しなかったはずの時間。


まるで、当時の記憶が、

意図的に消されているかのような感覚。


これも、

過去に来たことによる制限の1つなのだろうか。


ただ、


未来は、確実に動き始めている。


静かな夜の中で、

そのことだけは、はっきりと感じていた。

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