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ミニ四駆に悔いを残していたら過去に飛ばされたの巻  作者: さかざき


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14/16

進展

9月。


夏休みが明け、まだ日差しの残る朝。

校門前には、久しぶりに顔を合わせる生徒たちの声があふれていた。


「宿題終わった?」

「最終日に徹夜した」

「日焼けやばくね?」


そんな他愛もない会話の中、ユウは少し距離を置いて歩いていた。


変わらない日常。

それでも、夏の間に何かが変わったという感覚だけが、胸の奥に残っていた。


「おーい!ユウーーー!!」


後方から、聞き慣れた大声が響く。

振り向く間もなく、コウスケが勢いよく駆け寄ってきた。


「なあ、見たか?!」


「え?なにを?」


「え?何を?じゃねーよ!!

コロコロだよ、コロコロ!」


「ああ、もう発売日だね」


「発売日だね、じゃねーの!!

俺が写ってる、写ってるってーの!

ほら、ここ見ろよ!ここ!!」


コウスケは、手に持っていたコロコロコミックのページに指を挟み、

周囲の生徒を気にする様子もなく、素早く開いて見せてきた。


……表彰台の中央には、俯いたユウ。

その後方、少しぼやけた位置に、小さく写る人影。


よく見なければ気づかない。

だが、確かにそこにはコウスケとユリの姿があった。


「な?!これ俺だよな!!

隣にユリちゃんもいるだろ?俺だよな?!」


「……たぶん、そうだと思う」


「だよな?!すげー!

俺、全国誌デビューだぞ!!」


興奮するコウスケの声に、周囲の視線が集まり始めた。


「なにそれ?」

「コロコロ?」

「ジャパンカップのやつ?」


他の生徒が雑誌に群がってきた、その時。


背後から、影が差す。


「コウスケ。何を持って騒いでいる?」


「……え?」


ゆっくりと振り向くコウスケ。

そこに立っていたのは、見慣れた担任の姿だった。


「は、い、いや!その!あれですよ!

読書感想文のですね?あれですよ!」


「ほう、なるほど。

では職員室で詳しく聞かせてもらおうか」


「え?なんで?!やめてー!!」


引きずられていくコウスケの背中を見送りながら、

ユウは小さく息をついた。


「はぁ……去年と同じやん……」


そう呟きながらも、口元は少し緩んでいた。



放課後。

昇降口。


夕方の光が差し込み、床に長い影が伸びている。


「よ!」


コウスケが、昼間の出来事などなかったかのように、

いつもの調子でユウの肩を叩いてきた。


「ジャパンカップ、超楽しかったな!」


「うん。先生に呼ばれて、大丈夫だったの?」


「あー、今年もサチコから大目玉確定しました!泣」


(まるで成長していない……)


「でもさ」


急に、コウスケの声のトーンが落ちる。


「俺のアバンテさ、ユウに色々教えてもらってから、本当に速くなったんだ」


「うん」


「予選で1位取った時、

あ、ここまで来れたんだって思った」


一瞬、言葉を探すように視線を落とす。


「……でもさ」


顔を上げたコウスケの目には、

興奮とは違う、焦りの色が滲んでいた。


「その先が、見えなかった」


……ユウは、黙って続きを待つ。


「これ以上速くする方法が、

もう思いつかないんだ」


「もっと速くなりたい。

ユウにも負けないくらい速くなりたい」


「だからさ……

やっぱ、新しいスーパー1シャーシ、使ったほうがいいのかな?」


軽い口調を装っているが、

その問いの裏には、コウスケ自身の深い葛藤があった。


どう答えるべきか。

ユウは、未来の知識を思い浮かべながらも、

それを押し付けることにためらいを覚えた。


「コウスケが……そうしたいなら、

それが一番だと思う」


「え?どゆこと?」


「えーと……どうしたいか決めるのはコウスケだよ。速さなのか、こだわりなのか。

今、自分が何を一番大事にしたいのかで選べばいい」


「僕は、それを応援する」


しばらく黙り込んだあと、

コウスケは小さく息を吐いた。


「……そっか」


「ちょっと、考えてみる」


その横顔は、

学校のテスト中の時の顔よりも、

ずっと真剣だった。


コウスケは、マシンの未来を考えながら、

ゆっくりと帰路についた。


(展開はシリアスだけど、

サチコには普通に怒られるんだろうな……)


と、ユウは冷静に予想していた。

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