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ミニ四駆に悔いを残していたら過去に飛ばされたの巻  作者: さかざき


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10/11

予選

――多い。


ピットに並ぶマシンの中に、FMシャーシが思いのほか目につく。

最新のスーパー1シャーシ一色になると思われていた予選会場で、あえて旧世代とも言えるFMを選ぶ参加者が、ちらほらと混じっていた。


「去年より、FM使い増えたよな……」


誰かの会話が耳に入る。


「そりゃそうだろ。

前年チャンピオンが使ってりゃ、真似するやつも出るさ」


その視線の先にあるのは、ユウ自身のマシンだった。

去年、優勝を飾ったFMシャーシ。

その印象は思っている以上に強く、深く、この世界に残っている。


やがて、コウスケの出番がやってきた。


空気が一段階、張り詰める。


コウスケのグループは、まるで博物館のようだった。

スーパー1だけでなく、FMシャーシ、ゼロシャーシ。

今では見かけることの少なくなった旧型が、堂々とスタートラインに並ぶ。


「うわ、タイプ2だ……」

「まだ使ってる人いるんだな」


ざわつく観客の声を背に、コウスケは黙ってマシンを置いた。


彼のタイプ2シャーシは、派手さこそない。

だが、徹底的に磨き込まれたシャーシと、無駄を削ぎ落としたセッティングが、静かな自信を放っている。


「……いける」


小さくつぶやいた瞬間、スタートの合図が鳴った。


マシンは開始直後から、意外な速さを見せる。


「速っ……!」


スーパー1に劣らないスピード。

タイプ2とは思えない伸びを見せ、直線では他の旧シャーシとの差を広げていく。


コーナーでは荒削りな挙動を見せながらも、踏みとどまる。

コウスケのマシンは、旧シャーシとは思えない加速で、先頭に躍り出た。


「速い……!」


観客席から、どよめきが広がる。


「タイプ2シャーシだぞ!?」


タイプ2シャーシの底力を、観客に見せつけるかのような力強い走り。

その姿に、どこかユウのマシンと似た風格を感じる者もいた。


「最強最速のアバンテが帰ってきた!

他を圧倒する、圧倒的なスピード!

過去の栄光ではない!

現在もその速さは健在だぁぁぁ!」


ミニ四ファイターの実況にも、自然と熱が入る。


派手な加速ではない。

だが、ラップを重ねるごとに、シャーシ剛性の弱さがわずかに顔を出す。


そして、ゴール。


「タイプ2シャーシで1位だ……」

「しかも、かなりいいタイム……」


コウスケは一度だけ、拳を握った。


続いて呼ばれたのは、ユリのグループ。


スタートラインに並ぶマシンは、全員がスーパー1シャーシ。

まるで申し合わせたかのような、最新鋭の布陣だった。


その中で、ひときわ目を引くのがユリのマシンだ。


鮮やかなカラーリング。

光を反射するボディに、観客の視線が集まる。


「すごい色……」

「目立つな」


だが走り出したマシンは、派手さとは裏腹に、実に堅実だった。


レーンチェンジャーで姿勢を崩さず、着地も安定。

コーナーでは無駄な減速をせず、丁寧にコースを駆けていく。


「いい走りだ……」


ユウは思わず、そう呟いた。


「安定感がある!」

「これは伸びるぞ!」


実況の声も弾む。


「派手な見た目とは裏腹に、実に手堅い走り!

ミスのないレース運びだぁ!」


1周、また1周。

確実にラップを刻み、順位を守り続ける。


しかし――。


最後の直線。

僅かに前を走るマシンとの差が、どうしても縮まらない。


全力を出し切ってゴールした瞬間、ユリは結果を悟っていた。


「……2位、か」


健闘だった。


ユリはマシンを抱え、悔しさを飲み込むように、静かに息を吐いた。


その後もレースは続く。


攻めすぎてコースアウトする者。

慎重すぎてタイムを伸ばせない者。


それぞれの思惑と選択が、結果となって突きつけられていく。


「……通過でござるな……」


ジョンの声が、微かに呟く。


東京予選。

優勝は、最速タイムを叩き出したユウのネオバーニングサンに決まった。


「東京予選大会優勝者、ユウ選手!」


ファイターの声が会場に響く。


その名前が呼ばれた瞬間、拍手が一斉に弾けた。


――まずい。


ユウの頭に浮かんだのは、その一言だった。

身バレ防止、身バレ防止。


テリー・ボガードのように深くキャップを被り、顔の露出を極力減らす。


表彰台の撮影が終わるや否や、ユウは素早く姿をくらませた。


この後すぐに、決勝大会が控えている。


ユウは、ジョンたちと合流するため、足早にその場を後にした。

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