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力を取り戻すため、アイドル目指して頑張ります〜猫の習性がうっかり出てしまうたびに、なぜか評価が爆上がりする件〜

作者:
掲載日:2026/02/22

2月22日は猫の日です。

そう言うわけで、短編です。


 ⚪︎月×日

 三本あった尻尾が二本になってしまった。どうしよう。このままではただの猫になってしまう。私たち妖を人間が信じてくれないからだ。とにかく忘れられてしまうのはよくない。里の人間に声をかけてみよう


 ⚪︎月×日

 里にはほとんど人がいなかった。おじいちゃんとおばあちゃんだらけで、私を見ると、「あらかわいい。どこの子だい?飴をあげようか。」

 と子供扱いしてくる。

「私、実は猫又なんです。」

 というと、

「今はそういう遊びが流行っているんだねえ」

 って返ってきた。なんてことだ。

「一緒にご飯食べるかい?」

 と言われてついていったら、見たこともないものがいっぱいあってびっくりした。特に絵が動く箱とか、話ができる小さいカラクリとか、私が山にいる間に世界は変わっていたらしい。しばらくおばあちゃんの家にお邪魔して、人間世界のことを勉強しようと思う。


 ⚪︎月×日

 おばあちゃんの家に入り浸っていたら、三ヶ月経っていた。テレビって怖い。次々面白い番組がやっているから、つい見てしまう。見ていて分かったのは、もっとたくさん人間がいるところがある、と言うことだ。

 おばあちゃんに、人間がたくさんいるとこってどこ?って聞いたら、

「東京かねえ」

 って言ってた。ここからだとすごく遠いらしい。そしてちょっと寂しそうだった。

 私が力を取り戻すためには、東京に行った方がいいんだろうか。もうちょっと情報を集めてみよう。


 ⚪︎月×日

 おばあちゃんの息子がやってきた。

「お前か、最近居候してる奴は。」

 居候なんてしてない。ご飯食べてテレビ見てちょっと昼寝してるだけだ。夜はちゃんと帰ってる。お礼に鼠取りもしてる。

「母さん。東京で俺と一緒に暮らそうよ。」

 息子はおばあちゃんを東京に連れて行きたいらしいけど、お婆ちゃんは嫌がっている。代わりに私が行くって言ったら変な顔をされた。解せぬ。


 ⚪︎月×日

 かわいい格好をした女の子たちが歌って踊っているのを見た。

 たくさんの人たちがそれを見て応援している。

「あの子達、何してるの?」

「最近のアイドルは誰だか分からないけどねえ。歌って踊ったりするんだよ。昔は私もキャーキャー言ってたことがあったねえ。」

 なるほど。アイドルという仕事をすれば、みんなに見てもらえるんだ。覚えた。


 ⚪︎月×日

 おばあちゃんにアイドルになりたいって言ったら、ゆずは可愛いからなれるかもねえと言われた。

「今度息子の家に遊びに行くことになってるんだよ。ゆずも一緒に東京に行くかい?」

 おばあちゃんが誘ってくれたので、一緒に行くことにした。そのまま東京に居座るつもりだから、ちゃんと荷造りしないと。流石に着物はおかしいって言われたから、インターネットとかいうので服を買ってもらった。人がいないところにまで配達してくれるサービスってありがたい。


 ⚪︎月×日

 東京は人が多すぎて怖い。目がチカチカする。

 おばあちゃんと別れて、近くの野良猫に挨拶に行った。東京には猫又がいないみたいで、威嚇された。お返ししたら、やめて服従態勢になったので許してあげる。安全な寝場所とアイドルになる方法を聞いたら、みんなに聞いてやるって。すっ飛んでいった。東京の猫は優しい。


 ⚪︎月×日

 猫達に教えてもらった会社に行って「アイドルになりたい」って言ったらびっくりされた。

「おうちの人と一緒においで」って言われた。いないのに。

 仕方ないので、もう一つ教えてもらったところに行った。

「もうちょっと大きくなったらおいで」

 と言われたので、ちょっと大きくなったら悲鳴を上げられた。

 あれ、ほんの少しだけ力が戻った気がする。


 ⚪︎月×日

「コイツは猫好きなんだぜ」と野良猫たちが勧めてくれた人のところに行った。

「え?君、尻尾二本ある?猫又?」

 驚かれた。なぜだ。人間に化けているのに見破られた。

 仕方がないので正直に話したら、同情された。

「アイドルねえ。歌や踊りはやったことあるの?」

 手拭いを頭にのせて踊ったら、それじゃないって言われた。

 解せぬ。

 まずはアルバイトという仕事をしてみろと言われて、お化け屋敷を紹介された。化け猫の役をやれという。まかせろ。


 ⚪︎月×日

 住んでいるところを聞かれて、路地裏で寝てると言ったら怒られた。小さな部屋に連れて行かれて、ここに住めと言われた。猫を入れていいかと言ったら大丈夫だと言っていた。よかった。でも、野良が十匹遊びに来たらやりすぎたって怒られた。いいって言ったのに。


 ⚪︎月×日

 仕事は楽しい。私がちょっと顔を変えるだけでみんな悲鳴を上げてくれる。「お前の化け猫、ものすごく怖いってバズってるぞ。」って店長さんが教えてくれた。バズってるってなんだろう。でも仕事をすればするほど、力が戻ってくる。このままでもいい気がする。


 ⚪︎月×日

「お金も手に入ったし、レッスン受けてみるか?」

 猫好きおじさん……じゃなくて、社長が言った。アイドルになるには、歌とか踊りのレッスンを受けないといけないらしい。

 めんどくさいな、と思ってたら社長が、

「お化け屋敷は夏しか仕事できないぞ。」

 と言われた。なんてこった!仕方ないのでレッスンを受けることにした。

 踊りは褒められた。くるくるっと空中で回ったらものすごくびっくりされた。まかせろ。

 歌は……うん。これから頑張ることにする。


 ⚪︎月×日

 オーデイション番組、というのに出てみないかと言われた。

 アイドルになりたい子達が集まって、一緒にオーディションを受けて、最後に残った子達だけがアイドルになれるんだって。出るだけでも顔を覚えてもらえるらしい。とりあえず、書類審査とかいうのがあるので、一生懸命書いた。筆で書くよりは楽ちんだ。

「特技に習字とアクロバットって書いとけ。前世は猫又ですって書いたら受けるかねえ。」

 前世じゃなくて、今猫又なんだけど。


 ⚪︎月×日

 なぜか、書類審査に受かった。社長がドヤ顔をしていた。

「歌はいいから、踊ってこい」

 って言われたので、踊りをたくさん見せた。

「猫みたい」って言われたので「よく言われます」って返したら笑われた。解せぬ。それから笑顔が怖いって言われた。お化け屋敷では人気だったのに。


 ⚪︎月×日

 合宿審査、というのが始まった。みんなで一緒に歌と踊りを練習するらしい。顔が覚えられないのでみんなの匂いを嗅いだら変な顔をされた。カメラとかいうやつがあちこちにある。

 アイドルのコンセプトは、「けも耳アイドル」だって。耳と尻尾をつけて踊るらしい。自分のを使ってもいいんだろうか。

 社長に聞いてみよう。


 ⚪︎月×日

 自分のは隠しとけって言われた。つまんない。尻尾を二本付けたら笑われた。二本付けたらダメですか?って聞いたらOKが出た。丁寧語を練習しておいてよかった。


 ⚪︎月×日

 練習の合間にうっかり昼寝をしたところをカメラで撮られた。

 昼間は眠いんだよ。真夜中の練習はなぜか止められた。コンプラってなんだ。美味しいのか。

「やる気がないんじゃないの?」って嫌味を言ってくる子と、「体調悪いの?」って心配してくれる子がいた。「何か言われたらお礼を言っとけ」って社長が言ってたから、「ありがとう」って言ったら、変な顔をされた。


 ⚪︎月×日

 審査に受かって先に進めることになった。あの二人も一緒だ。

 あの件以来、二人は何かと話しかけてくる。カメラが寄ってくると、チョンチョンと教えてくれる。

「なるべく映してもらわないとね」

 受かった感想を聞かれたので、素直に「早くアイドルになって、尻尾を三本にしたい。」と言ったら、また変な顔をされた。なんでだろうと二人に聞いたら、「そういう時は、嬉しいです。次も頑張ります」っていうんだよと教えてくれた。二人とも親切だ。お礼に鼻ちゅーをしたらびっくりされた。人間はしないんだね。


 ⚪︎月×日

 残念。次の審査は通らなかった。社長に言ったら「そんな簡単じゃないからね。」と言われた。

 しばらくして、オーディションの様子が放送されたら、なぜか「昼寝の子」ってあだ名がついた。その後、あの二人と仲良く話している姿も映ってて、ちょっと嬉しかった。また会えるといいな。


 ⚪︎月×日

 社長に呼ばれた。鼻ちゅーしたところがなぜか撮られてて、切り抜き動画にされてるらしい。

「昼寝の子」だったのが「猫娘」に変わった。残念。ちょっと種族が違う。

「インスタの登録者数も増えてるからな。これから仕事が入ってくるかもしれないぞ。ゆずは猫娘で売り出して行くか」

 社長が嬉しそうだ。でもそれなら、猫又にしてほしい。動画を撮ってインターネットにあげていくと言ってた。自前の耳と尻尾を使っていいって。やった。


 三本目の尻尾が戻るのも、そんなに遠くないかもしれない。


読んでくださり、ありがとうございます。

面白かったよ!とか、ゆずちゃんかわいいよ!少しでも思われましたら、下記にあるブックマーク登録・レビュー・評価(広告の下にある☆☆☆☆☆→★★★★★)、リアクションなどしていただけると嬉しいです。

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