力を取り戻すため、アイドル目指して頑張ります〜猫の習性がうっかり出てしまうたびに、なぜか評価が爆上がりする件〜
2月22日は猫の日です。
そう言うわけで、短編です。
⚪︎月×日
三本あった尻尾が二本になってしまった。どうしよう。このままではただの猫になってしまう。私たち妖を人間が信じてくれないからだ。とにかく忘れられてしまうのはよくない。里の人間に声をかけてみよう
⚪︎月×日
里にはほとんど人がいなかった。おじいちゃんとおばあちゃんだらけで、私を見ると、「あらかわいい。どこの子だい?飴をあげようか。」
と子供扱いしてくる。
「私、実は猫又なんです。」
というと、
「今はそういう遊びが流行っているんだねえ」
って返ってきた。なんてことだ。
「一緒にご飯食べるかい?」
と言われてついていったら、見たこともないものがいっぱいあってびっくりした。特に絵が動く箱とか、話ができる小さいカラクリとか、私が山にいる間に世界は変わっていたらしい。しばらくおばあちゃんの家にお邪魔して、人間世界のことを勉強しようと思う。
⚪︎月×日
おばあちゃんの家に入り浸っていたら、三ヶ月経っていた。テレビって怖い。次々面白い番組がやっているから、つい見てしまう。見ていて分かったのは、もっとたくさん人間がいるところがある、と言うことだ。
おばあちゃんに、人間がたくさんいるとこってどこ?って聞いたら、
「東京かねえ」
って言ってた。ここからだとすごく遠いらしい。そしてちょっと寂しそうだった。
私が力を取り戻すためには、東京に行った方がいいんだろうか。もうちょっと情報を集めてみよう。
⚪︎月×日
おばあちゃんの息子がやってきた。
「お前か、最近居候してる奴は。」
居候なんてしてない。ご飯食べてテレビ見てちょっと昼寝してるだけだ。夜はちゃんと帰ってる。お礼に鼠取りもしてる。
「母さん。東京で俺と一緒に暮らそうよ。」
息子はおばあちゃんを東京に連れて行きたいらしいけど、お婆ちゃんは嫌がっている。代わりに私が行くって言ったら変な顔をされた。解せぬ。
⚪︎月×日
かわいい格好をした女の子たちが歌って踊っているのを見た。
たくさんの人たちがそれを見て応援している。
「あの子達、何してるの?」
「最近のアイドルは誰だか分からないけどねえ。歌って踊ったりするんだよ。昔は私もキャーキャー言ってたことがあったねえ。」
なるほど。アイドルという仕事をすれば、みんなに見てもらえるんだ。覚えた。
⚪︎月×日
おばあちゃんにアイドルになりたいって言ったら、ゆずは可愛いからなれるかもねえと言われた。
「今度息子の家に遊びに行くことになってるんだよ。ゆずも一緒に東京に行くかい?」
おばあちゃんが誘ってくれたので、一緒に行くことにした。そのまま東京に居座るつもりだから、ちゃんと荷造りしないと。流石に着物はおかしいって言われたから、インターネットとかいうので服を買ってもらった。人がいないところにまで配達してくれるサービスってありがたい。
⚪︎月×日
東京は人が多すぎて怖い。目がチカチカする。
おばあちゃんと別れて、近くの野良猫に挨拶に行った。東京には猫又がいないみたいで、威嚇された。お返ししたら、やめて服従態勢になったので許してあげる。安全な寝場所とアイドルになる方法を聞いたら、みんなに聞いてやるって。すっ飛んでいった。東京の猫は優しい。
⚪︎月×日
猫達に教えてもらった会社に行って「アイドルになりたい」って言ったらびっくりされた。
「おうちの人と一緒においで」って言われた。いないのに。
仕方ないので、もう一つ教えてもらったところに行った。
「もうちょっと大きくなったらおいで」
と言われたので、ちょっと大きくなったら悲鳴を上げられた。
あれ、ほんの少しだけ力が戻った気がする。
⚪︎月×日
「コイツは猫好きなんだぜ」と野良猫たちが勧めてくれた人のところに行った。
「え?君、尻尾二本ある?猫又?」
驚かれた。なぜだ。人間に化けているのに見破られた。
仕方がないので正直に話したら、同情された。
「アイドルねえ。歌や踊りはやったことあるの?」
手拭いを頭にのせて踊ったら、それじゃないって言われた。
解せぬ。
まずはアルバイトという仕事をしてみろと言われて、お化け屋敷を紹介された。化け猫の役をやれという。まかせろ。
⚪︎月×日
住んでいるところを聞かれて、路地裏で寝てると言ったら怒られた。小さな部屋に連れて行かれて、ここに住めと言われた。猫を入れていいかと言ったら大丈夫だと言っていた。よかった。でも、野良が十匹遊びに来たらやりすぎたって怒られた。いいって言ったのに。
⚪︎月×日
仕事は楽しい。私がちょっと顔を変えるだけでみんな悲鳴を上げてくれる。「お前の化け猫、ものすごく怖いってバズってるぞ。」って店長さんが教えてくれた。バズってるってなんだろう。でも仕事をすればするほど、力が戻ってくる。このままでもいい気がする。
⚪︎月×日
「お金も手に入ったし、レッスン受けてみるか?」
猫好きおじさん……じゃなくて、社長が言った。アイドルになるには、歌とか踊りのレッスンを受けないといけないらしい。
めんどくさいな、と思ってたら社長が、
「お化け屋敷は夏しか仕事できないぞ。」
と言われた。なんてこった!仕方ないのでレッスンを受けることにした。
踊りは褒められた。くるくるっと空中で回ったらものすごくびっくりされた。まかせろ。
歌は……うん。これから頑張ることにする。
⚪︎月×日
オーデイション番組、というのに出てみないかと言われた。
アイドルになりたい子達が集まって、一緒にオーディションを受けて、最後に残った子達だけがアイドルになれるんだって。出るだけでも顔を覚えてもらえるらしい。とりあえず、書類審査とかいうのがあるので、一生懸命書いた。筆で書くよりは楽ちんだ。
「特技に習字とアクロバットって書いとけ。前世は猫又ですって書いたら受けるかねえ。」
前世じゃなくて、今猫又なんだけど。
⚪︎月×日
なぜか、書類審査に受かった。社長がドヤ顔をしていた。
「歌はいいから、踊ってこい」
って言われたので、踊りをたくさん見せた。
「猫みたい」って言われたので「よく言われます」って返したら笑われた。解せぬ。それから笑顔が怖いって言われた。お化け屋敷では人気だったのに。
⚪︎月×日
合宿審査、というのが始まった。みんなで一緒に歌と踊りを練習するらしい。顔が覚えられないのでみんなの匂いを嗅いだら変な顔をされた。カメラとかいうやつがあちこちにある。
アイドルのコンセプトは、「けも耳アイドル」だって。耳と尻尾をつけて踊るらしい。自分のを使ってもいいんだろうか。
社長に聞いてみよう。
⚪︎月×日
自分のは隠しとけって言われた。つまんない。尻尾を二本付けたら笑われた。二本付けたらダメですか?って聞いたらOKが出た。丁寧語を練習しておいてよかった。
⚪︎月×日
練習の合間にうっかり昼寝をしたところをカメラで撮られた。
昼間は眠いんだよ。真夜中の練習はなぜか止められた。コンプラってなんだ。美味しいのか。
「やる気がないんじゃないの?」って嫌味を言ってくる子と、「体調悪いの?」って心配してくれる子がいた。「何か言われたらお礼を言っとけ」って社長が言ってたから、「ありがとう」って言ったら、変な顔をされた。
⚪︎月×日
審査に受かって先に進めることになった。あの二人も一緒だ。
あの件以来、二人は何かと話しかけてくる。カメラが寄ってくると、チョンチョンと教えてくれる。
「なるべく映してもらわないとね」
受かった感想を聞かれたので、素直に「早くアイドルになって、尻尾を三本にしたい。」と言ったら、また変な顔をされた。なんでだろうと二人に聞いたら、「そういう時は、嬉しいです。次も頑張ります」っていうんだよと教えてくれた。二人とも親切だ。お礼に鼻ちゅーをしたらびっくりされた。人間はしないんだね。
⚪︎月×日
残念。次の審査は通らなかった。社長に言ったら「そんな簡単じゃないからね。」と言われた。
しばらくして、オーディションの様子が放送されたら、なぜか「昼寝の子」ってあだ名がついた。その後、あの二人と仲良く話している姿も映ってて、ちょっと嬉しかった。また会えるといいな。
⚪︎月×日
社長に呼ばれた。鼻ちゅーしたところがなぜか撮られてて、切り抜き動画にされてるらしい。
「昼寝の子」だったのが「猫娘」に変わった。残念。ちょっと種族が違う。
「インスタの登録者数も増えてるからな。これから仕事が入ってくるかもしれないぞ。ゆずは猫娘で売り出して行くか」
社長が嬉しそうだ。でもそれなら、猫又にしてほしい。動画を撮ってインターネットにあげていくと言ってた。自前の耳と尻尾を使っていいって。やった。
三本目の尻尾が戻るのも、そんなに遠くないかもしれない。
読んでくださり、ありがとうございます。
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