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【エッセイ1話完結】ホストが刺される理由

作者: ワトソン
掲載日:2026/01/03

かっこいいは罪である。


2016年夏。


1人のかっこいい男がいた。


正確には、自分の事がかっこいいと思っている痛い男が1人いた。


その男の名は。


渡邊祐樹当時26歳。


渡邊祐樹といってもルフィではない。


同性同名の統合失調症持ちの病気の男だ。


その男は化粧をある日覚えた。


知り合いのあずきバーという人間の影響で。


化粧と言っても本当に簡単だ。


ただBBクリームを塗って、パウダーをつけるだけ。


その程度の化粧だ。


それでも、彼はとても調子に乗っていた。


彼はというか、俺はかなり調子に乗っていた。


俺は思った。


世界が。


世の中が。


俺が。


やばいって。


かっこいい俺が。


世界中のみんなが。


化粧でかっこよくなった俺を。


追いかけてる。


車で。


徒歩で。


常に周囲の監視の元、追いかけられているんだ。


今となっては妄想だが。


当時の俺は本当にそういう風に思っていたのだ。


ある日のこと。


スウィーツを食べていた。


満足感に支配されるまま。


充実感を得ながら。


美味しく食べていると。


ふと思った。


『今、俺は誰かに騙されている』


スウィーツを食べる行為というのは、普段の俺はめったにしない。


なのに、味覚が変わったのかそういう事をしている自分に気が付き。


『誰かに騙されているんだ』


そういう感覚に苛まれた。


じゃあ、誰に騙されているのか。


おそらく、俺が片思いしていた元キャバ嬢あずきバーさんの仕業だろう。


瞬時そう感じてしまった。


じゃあ、何を騙されているのだろうか。


あずきバーさんは組織からの刺客だ。


とどのつまり、組織が俺をなんらかの形で騙しているのだ。


それは一体なんなんだ。


俺はわからなかった。


そこで、俺はふと閃いた。


一つの名案を。


騙せ、騙そう、騙される奴が悪いという世界なら。


俺も人を騙してしまえばいいんだと。


気が付いたら、俺はいつもの川岸にいた。


車を止めて、車の中で、言った。


盗聴、盗撮されている前提で。


『今から、魚釣りをする。その釣った魚にタグをつけておく。そして、再びそのタグがついた魚を川へと投げ入れ逃がす。タグには結婚指輪と書いてある、明日中にこのタグのついた魚を釣り上げたものは、俺ワタナベユウキと結婚する権利を与えてあげよう』


そんな事を宣言する。


だが実際は、宣言はするものの、そんな魚を川に放つなんてことはしない。


これは嘘である。


みんなを騙す嘘。


俺と結婚したい人をあぶり出すための嘘である。


そして翌日。


ここからは妄想だが。


題して

『ワトソンと結婚する者は誰だ? 魚釣り大会』


が地元の川で行われることになった。


川には多くの人、人、人。


ほとんどが女性。


男のゲイも何人かいる。


俺は、俺と結婚する人間が現れることを阻止するためにという、ていで、俺も魚釣りに参加することになった。


なぜか、平成ノブシコブシ吉村も魚釣りに参加することになって。


吉村さんが言った。


『俺は結婚指輪のついた魚を釣ってそれを、転売する!!』


お好きにどうぞと思ったが、何か様子がおかしい。


みんなが騙されているはずなんだが。


多くの人。


多くの女性たちが。


本当に必死に魚釣りをしている。


まるで、本当にそのタグが存在するかのように。


そこで、ふと思った。


タグなんて誰でもつければつけられる。


しかも、あらかじめこういうタグが付いていますという見本を用意していない。


組織の人間が勝手にタグをつけてしまえば、それは、もう本物であると言うしかならない。


この川には。


この川のどこかには。


その魚が。


もしかしたらいる。


そんな気がしてきて。


身の毛がよだってしまった。


すると、吉村と同じく近くで川釣りをしていたマツコデラックスが指をさして。


『あそこにタグがついた魚がいる!!』


と叫びだし、人を呼び、マツコもその魚を釣ろうとルアーを投げ入れる。


マツコに釣られたら大変だと思い、そこでなぜか、周囲の注意をひくために俺は、平成ノブシコブシ吉村を川へ突き飛ばした。


吉村は川へと落ち、近くにいたと思われるタグ付きの魚も、びっくりしてどこかへ消えてしまった。


吉村は、川の中へ着水し、姿勢を起こし言う。


『赤い学生気分、何学生気分みたいな事してるんだコラァあああ』


という。


危ないところだった。


タグのついた魚が目の前を現れそれをマツコに釣られそうになったからだ。


そこでふと思った。


俺は気がついた。


ホストが刺される理由が。


かっこいい人間は罪深い。


かっこいい人間は必ず嘘を付く。


俺も嘘をついた。


ホストも嘘をつく。


ホストが刺される理由は女の子を騙し、自分の嘘の限界値がその現実の許容範囲をオーバーし気づかれるからである。


そしてその嘘に加担する何ものかの存在が力を働かない、いわゆるその程度影響力だからだ。


俺の場合どうだろう。


俺は嘘をついた。


この川にタグがついた魚がいると。


嘘であるはずなのに、現実タグのついた魚はいた。


これは、この嘘に勝手に加担する組織の存在があったから。


俺という人間の影響力が高かったから、この嘘は嘘ではなくなった。


そこで、自分の影響力の高さに気が付いた。


よく考えてみろ。


中央競馬でも。


俺が宣言して買った馬券。


このオッズ。


俺が宣言した途端、オッズは急に下がり、みんなが俺と同じ馬券を買っている。


そして、絶対に馬券は外れるのだ。


よくみるとジョッキーがおかしな動きの騎乗をして。


八百長ともとれる動きをしてだ。


よもや中央競馬の結果やオッズすら動かせる人間に俺はなっているのだ。


そこで途端に怖くなった。


自分という人間。


童貞で自宅警備ばかりでうんこをひたすら製造してきた自分という存在が。


俺の行動や声は、もう世の中の人間を簡単に動かせるくらい次元まできているのだ。


俺のうんこを食えと言ったら、もしかしたら食う人間が現れるかもしれない。


その事実。


その現実に。


怖くなった。


と同時に。


このままだと。


このままだと。


誰かが死ぬ。


ワトソンの取り合いになって。


命を落とす暴動が起こるに違いない。


魚釣りは、無事誰もタグのついた魚は釣れぬまま時間オーバーで終わり。


安堵したが。


このままじゃだめだ。


このままじゃだめなんだ。


俺がかっこよすぎて誰かが死ぬ。


でも、それを『俺がかっこよすぎて』なんて理由を周囲に話せないでいる自分がいる。


どうすればいいだろうか。


どうすれば。


とそこで。


思った。


かっこいいというのを辞めればいんじゃないかって。


俺が求めていたのは、こういう嘘に塗り固められたカッコよさじゃない。


つくろって、着飾って、塗り固められた、嘘の字自分に本当の価値なんてあるのだろうかって。


本当の価値は、ありのままの自分を愛してくれる人にいるんだって。


そうか。


俺は、本当の価値に気付いてなかった。


多くの人が認めてくれることに価値があるんだって思っていたけど。


だから最近俺は、スウィーツばかりを食べていたのか。


だから俺は、川にタグのついた魚がいるなんて嘘ついたのか。


だから俺は、化粧をして着飾っていたのか。


そんな、嘘ばかりの自分に気が付く。


ばっさりと髪を切った。


坊主にした。


やりすぎるくらいに。


普段の俺は、やはり極端だ。


素直な自分は、極端な自分だ。


極端でいい。


やりすぎるくらいでいい。


化粧もやめ、ありのままの自分をかっこいい、良くなったって言ってくれる人を大切にすればいいんだって。


おもいっきり坊主にして家に帰った。


そして、家に帰るなり、お母さんが。


『やっぱりあんたは髪が長い方が似合う』


そう言って、大切な存在であるはずの価値を疑ったのであった。

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