表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロハチ隊  作者: ななわ
2/4

1話

ゼロハチ隊始動。

───ゼロ…汝、この世の救世主とならん。




───吾はそのために、君の身体を使わせてもらう。




「…?」


ゼロは何か頭の中で誰かが話しかけてきているような感覚を覚えながら

目覚めた。


「そんな訳、ないな。」


コンコン、と扉を叩く音がした。


「おはよぉ、ゼロ。」


俺がどうぞと言う前にその扉を叩いた人は入ってきた。


「おはようございます、マーレ様。」


俺は慎重にベッドから起き上がった。


そこに居たのは、マーレ様だった。


マーレ様はこの俺、ゼロの主人だ。

俺はそんなマーレ様に仕えている唯一の従者である。


「…また、あなた様は私よりお早くお目覚めになったのですか?」


俺は困ったようにマーレ様に言った。


「だって、今日も早く朝から動きたいんだもん。」


マーレ様は口を膨らませて言った。


「…まだ、マーレ様は朝食も食べられていないご様子じゃないですか。」


「別に1食抜いたって死ぬわけじゃないし。」


「お言葉ですが、1食抜いただけでも人間の体のエネルギーは不足してしまいます。ご飯は食べてください。私が用意いたしますので。」


「主に反対するんじゃなーい。

ゼロのバカ。」


「バカじゃありません。これは私なりにマーレ様のことを思っての事ですので。」


「…わかったよ。

僕着替えてくる。」


その言葉に俺は反射的にマーレ様の姿を改めてよく見た。


マーレ様はパジャマのままだった。


「お着替えすらまだだったのですか…。」


「んもう!僕着替えたら食卓で待っているからな。早く作ってくれよ!」


「かしこまりました。」


マーレ様は少し不貞腐れながらも部屋着のままの体を動かしながら服のしまってある部屋へ向かっていった。


「さてと、俺も朝食を作らないと。」


改めて着替えながらだが自己紹介といこう。

俺はゼロ。

俺は月の守護者の一族であり、フィールナット家一族の現当主であり、一族の唯一の月の住人マーレ様に仕えている。


あまり記憶は無いが、俺が幼少期の頃、前当主のマーレ様のお父様が生前に俺を召使いにとして雇い、その後養子に迎えたそうだ。


そんなどうでもいい話は良くて、今はとりあえずマーレ様の朝食を作らねば。


俺はエプロンを着てマーレ様の昨日のご飯と今日の予定を加味しつつチャチャッと料理を作った。



「お飲み物は何をお飲みになりますか?」


ご飯の支度ができる前に、もう食卓に事前に着いていたマーレ様に飲み物を聞く。


ちゃんと着替えたようだ。


「うーん、ゼロの入れたコーヒーが飲みたいな。」


マーレ様は少し迷ってからそう言った。


「かしこまりました。」


その言葉を聞いた俺はコーヒーを入れた。


もちろん、苦いものが苦手なマーレ様の為に

お砂糖を1つ入れ、ミルクをたっぷり入れたものを。


「もう他に忘れ物は…ないな。」


ワゴンに食事と飲み物を載せながら

忘れ物が無いか確認する。


「よし、行こう。」


―――俺はワゴンを押しながらマーレ様の元へと向かった。




「…ゼロ、僕は野菜が苦手だ。」


「存じております。」


「もっかい言うよ?ゼロ?

僕は野菜が!苦手だ!」


少し嫌そうにしながら目の前にある人参をマーレ様は指をさしながら言った。


「口に入れ、胃袋に入れればもうそれは人参ではございません。大丈夫ですよ。」


「口に入れるのが無理なんだけど。」


「いけます。」


「無理だ。」


「………ただの栄養分ですよ。」


「…ただの人参だよ。」


「はあ…。

貴方様が憧れの異界探索への切符を得たとして、異界探索へ行かれたら現地で野菜を食べなくてはいけない時もあるんですよ?」


「…そこはゼロが美味しくして。」


「私も行けるのでしょうか、ねぇ?」


「頑張って、ゼロ。」


「全く貴方様ったら…。」


はあ、と呆れた声を出す。


このようにマーレ様はとてつもない野菜嫌いだ。


偏食すぎて私でなかったら多分対応しきれなかっただろう。


「そういえば、異界探索隊、ゼロハチ隊の試験日はもうそろそろですね。」


マーレ様は俺の作った人参のピクルスを渋い顔で食べながら頷いた。


「そうだね…ゼロ…。」


人参頑張って食べているマーレ様は渋い声を出した。


異界探索の言葉の中の異界とは、謎の外来の神、ケプタル神によって侵略されてしまった地球のことを異界と呼んでいる。


もう、私たちの知る地球ではないからだ。


それを探索し、地球を奪還する方法を見つけながら異界の中を調査するのが

異界探索隊だ。


異界探索隊は各惑星からの一般募集に参加した人や神からの推薦者が、その惑星内の実技形式の神の試練で自らの実力を神に見せ、その実力が認められた調査隊員に任命された者たちで構成されている。


ゼロイチ隊から始まり、今ではゼロハチ隊まで続いている。


そんな異界探索隊は


「自分が救世主になるんだ」という気持ちの者


異界探索を完遂した後の報酬の金目当ての者


ただただやってみたいだけの者


憧れを持った者

など、さまざまな人が参加するため

とても人気であり、注目が高まっている。


今では一種のエンターテインメントとしても成立している。


異界探索特集が月や他の惑星でも視聴率がとても高くなっているのがその証拠だ。


そんな異界探査に月の人類の守護神ルナリース神からの推薦で俺とマーレ様はこの度実力試験に参加することになった。


元々マーレ様は、マーレ様のお父様が異界探索隊に所属しているのもあって異界探索隊がとても好きなので、とてもこの試験を楽しみにされている。


マーレ様が推薦されたのは分かる。

かなり月の中でも実力者だからな。


ルナリース神の祝福もあるし。


だが、何故俺までもなんだ。


戦闘とかでは動けなくは無いが料理の方が得意だぞ。絶対。


俺は祝福も持ってないどころか

ただの剣しか使えないのに。


まあ、少し自画自賛するところといえば剣の技量は月一番と言えるだけあるかもしれないが。


でも、流石に他惑星の本物の剣使いには劣るだろうが。


「ゼロ、今日の予定を教えてくれ。」


食事を食べ終わったマーレ様はこちらを向いて言った。


「はい。かしこまりました。

本日は午前からルナリース神との予定があるのでそれへの参加。

午後からは私と一緒に実技試験の為に剣の練習と祝福の能力の練習を行います。」


「えー、祝福の練習はもうよくない?

僕結構使えるよ?」


先程から“祝福”という言葉が出ているが


祝福とは神から人間に与えられる異能力のことだ。


人間が使える異能力には2種類ある。


ひとつは先程言ったように神から人間に代価なく与えられる異能力。

これを人間は祝福と呼んでいる。


もうひとつは神と契約して代価を支払って使う異能力だ。

これを人間は加護と呼んでいる。


異能力を得られる人間は限られており

一般人でも一応神と契約すれば加護は得られるが、異界探索に行く人間でもなければ中々そのような事はしないだろう。


俺の主人のマーレ様はその中でも月の守護神ルナリース神の祝福を受けている人間だ。


「ダメです。私はルナリース神から直々にマーレ様の祝福の扱い方についての指導を任されておりますので。」


「そんなぁ。

でも、ゼロは加護も祝福もないじゃん。」


「…実はルナリース神から“祝福の使い方初心者編”という著書を頂いておりまして。」


「え、それガチなやつ?」


「はい。」


「誰だよそんなの書いたやつー。

絶対祝福使ったことないやつじゃん。」


「でも現にマーレ様は私の指導でかなり能力を開花させられたと思うのですが…。」


「たしかに…。」


「とりあえず、お食事をもう終えているので

もう食器下げようかと思うのですが、下げてもよろしいでしょうか?」


「うん、頼んだ。」


俺が食器を片している時マーレ様は言った。


「そういえばゼロ、他の惑星の異界探索隊に選ばれた人ってわかる?」


「ああ、月が1番異界探索隊員の選考時期遅いのですよね。ではもう他の惑星は出てるでしょう。後ほど調べ、ご報告いたします。」


「ん、頼んだよ。」


「かしこまりました。」


「じゃあ僕少し屋敷の中走っているから、支度終わったら呼んで。」


「かしこまりました。」


「ん。」


そう言ってマーレ様は小走りで去っていった。


マーレ様は異界探索隊に選ばれたい為にこうした体力作りも欠かさずにしている。


それだけ異界探索隊に入りたいという気持ちがあるのが見受けられる。


マーレ様のお父様は異界と地球を繋ぐ要として異界に今住んでおり、月との通信を行ったり、異界の継続的な環境調査や異界探索隊の支援などをしているそうだ。


「さてと、俺もさっさと支度しないとな。」


俺は食器を洗ったり、外に出る支度をした。



───「マーレ様。」


「ああ、ゼロ。もう用意は終わったの?」


「はい。いつでもお外へ出かけれます。」


「そっか。」


「そろそろご出発されますか?」


「うん。そろそろ行こっかな。」


「かしこまりました。ここからは徒歩でルナリース神のいらっしゃる神殿へと向かいます。」


「はーい。」

お読みいただきありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ