2 訪問者は突然に
「リリアナ、ソフィア!大変よ〜!!早く来て頂戴」
お母様の焦った声が2階まで鳴り響く。
「どうしたのかしら、お母様……?」
「落ち着きなさそうね、少し状況を見に行きましょう」
リリアナに続いて私が階段を駆け降りる。
「遠路はるばるようこそおいでくださいました、私の名前は――」
リリアナが、突然の来客の姿を確認すると、震えながら社交辞令を述べる――しばし見つめ合う二人。
美男美女。
実に絵になる。
「今日は、貴女に会いに来ました――ソフィア嬢、どうか僕の手を取って王城へ来ていただけませんか?」
「は……はいぃっ!?」
ヒロインの姉という立場の脇役ポジションに主役が声かけているって――どういうことですか!?
いやいやいや、貴方、手を取る相手間違えてます!
眩いばかりの銀糸の髪に、アイスブルーの瞳に射抜かれて普段は、氷の王子と恐れられている雲の上の存在。
この国の第二王子・クオード様。
絵姿を出せば飛ぶように売れる。
社交界の高嶺の花的存在。
対する私は平凡な脇役少女。
「クオード様、私達……初対面ですよね?」
「いいえ、僕は確かに以前、君と会ったことがあります。愛しています、ソフィア様――僕と結婚を前提にお付き合いしてください」
王族特有の煌びやかなオーラを纏いながら、情熱的に告白されて赤面しない令嬢は存在するのでしょうか?
――否、少なくとも私には無理な訳で。
「――距離が近いですっ」
か細い声で抵抗するのが精一杯でした。