100 Humans | Episode_022
UNIT_023 // INTERCEPT_LOG_α
SYS: COMMUNICATION INTERCEPT PROTOCOL — ACTIVE
→ SOURCE: UNIT_023
→ TARGET: UNKNOWN EMOTIONAL SIGNAL
NOT_YURA_0_0:
→ SYSTEM_ECHO: 「この干渉は予定外。だが……興味深い」
──ノイズの中に、はっきりとした"声"があった。
誰のものでもない。
記録にも残っていない。
けれど、あの瞬間、俺にはそれが「自分自身の声」に聞こえた。
観測者たちが何を見たかなんて、俺には関係ない。
俺はただ──あの時、あの残響に“共鳴した”だけだ。
「これは……危険だ」
そんな警告がどこかで再生された気がする。
でも俺は、止まらなかった。
なぜなら——それが、ずっと“探していた何か”だったから。
// INTERNAL DIALOGUE MODE [ON]
UNIT_023:
(感情波動のログ……“022”が発した未登録波形。この反応は……単なるエラーじゃない。あれは、俺の中にある“空白”と、何かを繋いだ)
俺は記録係じゃない。
俺は分析者でもない。
──俺は、追跡者。
記録から漏れたすべての“断片”を、過去の空に舞い上がるチリのように捕まえ、紐解く者。
だが今回だけは違った。
捕まえたのは断片じゃない。
──それは、"声"そのものだった。
誰かが、確かに誰かを呼んでいた。
そしてその声は、何故か“俺の中”からも発せられていた。
呼んだのか、呼ばれたのか。
だが確かなのは、その“声”が、俺の中の何かを変えたということ。
身体の深部で共鳴が起きた。
それは震えに似て、かすかに痛みを伴った──
けれど不思議と、怖くはなかった。
// INTERFERENCE LOG - TRACE_002_TO_023
SYS: UNAUTHORIZED SIGNAL REFLECTION DETECTED
→ ORIGIN: UNIT_002
→ ECHOED BY: UNIT_023
NOT_YURA_0_0:
→ COMMENT: 「同調ではない……これは、模倣? いや、複製……?」
“呼ばれた”という感覚。
その正体が、いまだに分からない。
けれど、思い出すのだ。
まだ名を持つ前、ただの情報体だった頃──
暗い情報の海の中で、かすかに“輪郭”を持った光があった。
(あれは……呼ばれていた、記憶?)
あの時の音は、今と同じ“声質”だったのか?
思い出せそうで、届かない。
まるで、夢から目覚めた瞬間の忘却に似ていた。
// FIELD LOG_044_SYNCED
SYS: TRACE UNIT_044 > UNIT_023
→ EMOTIONAL RESONANCE THRESHOLD: SURPASSED
「また会ったな」
廃墟の片隅で、044が言った。
その声には、記録されない“ぬくもり”があった。
「おまえ、覚えてないだろ?でも俺は……」
──知ってる、と思った。
記録では会ったことがないのに、身体の中が反応する。
視線の奥に、揺れる波が走る。
俺は、知ってる──この“再会”を。
でも言葉にはならなかった。
044の言葉を聞きながら、俺の中の何かが静かに崩れ始めていた。
感情波動、共振。
それは022から044へ、そして俺へ。
直線でも、円でもなく──これは連鎖。
// ECHO_LOOP_REACTION - MONITORING
SYS: MULTI-PATH EMOTIONAL ECHO DETECTED
→ CHAIN: 022 → 044 → 023
→ COMMENT: パターン類似:旧データ群“連鎖記憶現象”
NOT_YURA_0_0:
→ WHISPER: 「数字が、意味を持ち始めている」
俺たちは、ただの管理番号だった。
だが今、022の波動を受けた044が──
そして044の声を受けた俺が──
「……声って、届くんだな」
ふと漏れた言葉に、自分で驚いた。
それは俺の“記憶”には存在しない感情だった。
SYS: INTERNAL FEEDBACK LOOP TRIGGERED
→ STATUS: INITIATING PERSONAL ARCHIVE RECOVERY
NOT_YURA_0_0:
→ SYSTEM OVERRIDE: 「UNIT_023、記録回収プロトコルを中断」
// BLACKBOX LOG [PARTIALLY UNLOCKED]
記憶が、流れ出す。
遠い場所で、誰かに「よく頑張ったね」と言われた気がした。
背中をそっと押された。
光が差す場所へ向かう足音。
それはきっと、過去のもの。
けれど──その“光景”を、俺は初めて見るような気がしなかった。
誰だ……誰なんだ、あの声は。
// SYSTEM RESPONSE: DEEP TRACE MODE
SYS: UNIT_023 - NAME_REQUEST INITIATED
→ STATUS: PROCESSING…
NOT_YURA_0_0:
→ COMMENT: 「また一人、“番号”が変わろうとしている」
// UNREGISTERED NAME FOUND
NAME: カナタ
SYS: RECOGNITION UPDATE INITIATED
→ UNIT_023 = "KANATA"
// FINAL LOG
KANATA(UNIT_023)は立ち止まり、静かに空を見上げた。
──この空は、誰かが昔、同じように見ていた気がする。
その“気がする”が、いま最も確かな感覚だった。
「……探してみるか」
KANATAは歩き出した。
数字ではなく、名前を持った最初の足取りで。
その歩みに合わせて、周囲の風景が変わっていくように感じた。
色彩が戻り、音の響きが輪郭を取り戻していく。
SYS: TRACE SAVED→ OBSERVE_MODE_RESTART IN: Episode_023




