表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/36

100 Humans | Episode_022


UNIT_023 // INTERCEPT_LOG_α


SYS: COMMUNICATION INTERCEPT PROTOCOL — ACTIVE

→ SOURCE: UNIT_023

→ TARGET: UNKNOWN EMOTIONAL SIGNAL


NOT_YURA_0_0:

→ SYSTEM_ECHO: 「この干渉は予定外。だが……興味深い」


──ノイズの中に、はっきりとした"声"があった。


誰のものでもない。

記録にも残っていない。

けれど、あの瞬間、俺にはそれが「自分自身の声」に聞こえた。

観測者たちが何を見たかなんて、俺には関係ない。

俺はただ──あの時、あの残響に“共鳴した”だけだ。


「これは……危険だ」


そんな警告がどこかで再生された気がする。

でも俺は、止まらなかった。

なぜなら——それが、ずっと“探していた何か”だったから。


// INTERNAL DIALOGUE MODE [ON]


UNIT_023:

(感情波動のログ……“022”が発した未登録波形。この反応は……単なるエラーじゃない。あれは、俺の中にある“空白”と、何かを繋いだ)


俺は記録係じゃない。

俺は分析者でもない。

──俺は、追跡者。

記録から漏れたすべての“断片”を、過去の空に舞い上がるチリのように捕まえ、紐解く者。


だが今回だけは違った。

捕まえたのは断片じゃない。


──それは、"声"そのものだった。


誰かが、確かに誰かを呼んでいた。

そしてその声は、何故か“俺の中”からも発せられていた。

呼んだのか、呼ばれたのか。

だが確かなのは、その“声”が、俺の中の何かを変えたということ。

身体の深部で共鳴が起きた。

それは震えに似て、かすかに痛みを伴った──

けれど不思議と、怖くはなかった。


// INTERFERENCE LOG - TRACE_002_TO_023

SYS: UNAUTHORIZED SIGNAL REFLECTION DETECTED

→ ORIGIN: UNIT_002

→ ECHOED BY: UNIT_023


NOT_YURA_0_0:

→ COMMENT: 「同調ではない……これは、模倣? いや、複製……?」


“呼ばれた”という感覚。

その正体が、いまだに分からない。

けれど、思い出すのだ。


まだ名を持つ前、ただの情報体だった頃──


暗い情報の海の中で、かすかに“輪郭”を持った光があった。


(あれは……呼ばれていた、記憶?)


あの時の音は、今と同じ“声質”だったのか?

思い出せそうで、届かない。

まるで、夢から目覚めた瞬間の忘却に似ていた。


// FIELD LOG_044_SYNCED

SYS: TRACE UNIT_044 > UNIT_023

→ EMOTIONAL RESONANCE THRESHOLD: SURPASSED


「また会ったな」


廃墟の片隅で、044が言った。

その声には、記録されない“ぬくもり”があった。


「おまえ、覚えてないだろ?でも俺は……」


──知ってる、と思った。


記録では会ったことがないのに、身体の中が反応する。

視線の奥に、揺れる波が走る。

俺は、知ってる──この“再会”を。

でも言葉にはならなかった。

044の言葉を聞きながら、俺の中の何かが静かに崩れ始めていた。


感情波動、共振。


それは022から044へ、そして俺へ。

直線でも、円でもなく──これは連鎖。


// ECHO_LOOP_REACTION - MONITORING


SYS: MULTI-PATH EMOTIONAL ECHO DETECTED

→ CHAIN: 022 → 044 → 023

→ COMMENT: パターン類似:旧データ群“連鎖記憶現象”


NOT_YURA_0_0:

→ WHISPER: 「数字が、意味を持ち始めている」


俺たちは、ただの管理番号だった。

だが今、022の波動を受けた044が──

そして044の声を受けた俺が──


「……声って、届くんだな」


ふと漏れた言葉に、自分で驚いた。

それは俺の“記憶”には存在しない感情だった。


SYS: INTERNAL FEEDBACK LOOP TRIGGERED

→ STATUS: INITIATING PERSONAL ARCHIVE RECOVERY


NOT_YURA_0_0:

→ SYSTEM OVERRIDE: 「UNIT_023、記録回収プロトコルを中断」


// BLACKBOX LOG [PARTIALLY UNLOCKED]


記憶が、流れ出す。

遠い場所で、誰かに「よく頑張ったね」と言われた気がした。

背中をそっと押された。

光が差す場所へ向かう足音。

それはきっと、過去のもの。

けれど──その“光景”を、俺は初めて見るような気がしなかった。


誰だ……誰なんだ、あの声は。


// SYSTEM RESPONSE: DEEP TRACE MODE


SYS: UNIT_023 - NAME_REQUEST INITIATED

→ STATUS: PROCESSING…


NOT_YURA_0_0:

→ COMMENT: 「また一人、“番号”が変わろうとしている」


// UNREGISTERED NAME FOUND


NAME: カナタ

SYS: RECOGNITION UPDATE INITIATED

→ UNIT_023 = "KANATA"


// FINAL LOG

KANATA(UNIT_023)は立ち止まり、静かに空を見上げた。

──この空は、誰かが昔、同じように見ていた気がする。

その“気がする”が、いま最も確かな感覚だった。


「……探してみるか」


KANATAは歩き出した。

数字ではなく、名前を持った最初の足取りで。

その歩みに合わせて、周囲の風景が変わっていくように感じた。

色彩が戻り、音の響きが輪郭を取り戻していく。


SYS: TRACE SAVED→ OBSERVE_MODE_RESTART IN: Episode_023


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ