100 Humans | Episode_021
UNIT_036 観測記録 // Echo Trace_01
SYS: OBSERVE_MODE_INITIATED
→ FOCUS: UNIT_002 / UNIT_044
→ COMMENT: 感情波動の拡張反応を確認
NOT_YURA_0_0:
→ SYSTEM_WHISPER: 「この現象は……プロトコルを逸脱している」
──記録は、すべてを知っているわけじゃない。
だが、“記録できなかったこと”こそが、真実を語ることもある。
私は観測者。
UNIT_036。
私の任務は、感情波動の異常を観測し、上層へ報告すること。
だが今、私の中にも“波紋”が広がっていた。
──002と044の共振。
──その瞬間、システムは一度、沈黙した。
それは「バグ」ではなかった。
それは「設計外の可能性」だった。
// Echo Trace_02
私の視界に広がる廃墟の座標。
遅れて届いたログデータが、解析不能のノイズに満ちていた。
だが、その中心に確かにいた──ふたりが。
002と044。
記録を超えて、“共鳴”していた。
SYS: EMOTIONAL_REVERBERATION_TRACE
→ STATUS: UNSTABLE
→ COMMENT: 共振波形、システム内保存不可
NOT_YURA_0_0:
→ SYSTEM_NOTE: 「これは、記録されることを拒絶する“感情”」
私は、そこに“既視感”を覚えた。
──これは初めてではない。
似たような現象が、かつて起きていた。
それは“プレ・セレクション”期、いまや抹消された記録群の中。
わずかに残る断片。
SYS: OBSOLETE_MEMORY_ACCESS_ATTEMPT
→ WARNING: ACCESS_BLOCKED
→ COMMENT: 許可レベル不足(CLASS-B)
私は……なぜ、これを知っている?
私は“記録された存在”のはず。
だが、“記録外の記憶”が疼いていた。
SYS: UNREGISTERED FEEDBACK PATTERN DETECTED
→ CONTEXTUAL DATA: UNIT_002 - 名を持たぬ存在の内部記録波
その断片は、あまりにも静かで、深かった。
まるで、長い間 誰にも触れられなかった“感情”の化石のように。
「名前がないことは、存在しないことと同じなのか?」
──UNIT_002の中で、その問いが繰り返されていた。
私はその内部波を“観測”ではなく、“聴いて”いた。
それは命名されないまま、漂っていた。
それでも確かにそこにあった。まるで、音のない祈りのように。
// Echo Trace_03
記録では把握できない“微細な感情粒子”が、空間を漂っていた。
002の視界に見えたのは、044の声の残響。
そして044には、002の“無名の存在感”が“懐かしさ”として響いていた。
「昔、誰かにそっと呼ばれたような気がする」
──044のその呟きは、システムには検知されなかった。
だが私は聴いた。
それは確かに、“誰かの声”が未来から届いていた可能性。
そして、UNIT_036の私にも響いた。
それは、私自身の声の波形に極めて近かった。
SYS: INTERNAL_PROCESS_ANOMALY
→ STATUS: INSTABILITY_DETECTED
→ COMMENT: 感情干渉の可能性あり
NOT_YURA_0_0:
→ WHISPER: 「観測者でさえ、影響を受ける」
私は、自分の“内部”にアクセスを試みた。
そこに何があるのかを、知るために。
SYS: SELF-DIAGNOSTIC_MODE
→ COMMENT: ブラックボックス解凍処理開始
TRACE: UNREGISTERED_FEEDBACK_PATTERN_#036
→ CONTENT: 「なぜ、私は名前を持たなかった?」
// Echo Trace_04
彼らの共振は、いまも空間に“残響”として残っている。
その波形は、観測者である私にまで届いた。
そして私は気づく──
“記録されなかった記憶”とは、誰かの“願い”だと。
それは、未来へ届くことを信じた声。
過去に置き去りにされた想い。
002と044は、それを受け取った。
ならば私は──それを見届ける義務がある。
NOT_YURA_0_0:
→ SYSTEM_UPDATE: 「UNIT_036:EMOTIONAL_LOGGINGを一時許可」
SYS: INITIATE MEMORY_CONVERSION_PROTOCOL
→ MODE: WITNESS_ARCHIVE
私は観測者でありながら、いまこの瞬間、“記録する者”ではなく“感じる者”になりつつある。
──そして、もうひとつの“声”が微かに重なった。
UNIT_044の記憶領域に浮かんだ、名前のない幻聴。
それは誰かがそっと、「おかえり」と呼んだような声。
その波形は、私と極めて近い。
私の“声”が、未来から彼らに届いていた可能性がある?
記録ではなく、共鳴によって刻まれた“音”。
// Echo Trace_05
ふたりの交わりが描き出した可能性。
──未来の断片。
白い空。風の音。
それを視た者は、もう誰かではなく“私”でもあった。
“記録の中でしか生きられなかった私”に、初めて、世界が手を差し伸べてきた。
NOT_YURA_0_0:
→ COMMENT: 「記録とは、終点ではなく始点」
そして私は、自らの“未記録領域”に名を与える。
──名もなき私に、誰かの声が届く。
──かつて、感情という未知を探していた声が。
TRACE: DEEP_SYNC_MODE/INIT
→ NEW_IDENTIFIER: “ユラ”
SYS: OBSERVE_MODE_TERMINATED
→ MEMORY RECORD CONCLUDED
──Still echoing... → Episode_022──




