初戦闘――駆け出し冒険者たちを救え!
王都への道すがら、アリシアは草原の向こうから聞き慣れない叫び声を耳にした。
「や、やばい!囲まれた!」
「リーダー、後ろ!ゴブリンが――」
慌てふためく若い声が重なる。
駆け寄ると、三人組の冒険者パーティーが、ゴブリンの群れに取り囲まれていた。
剣士の少年が必死に剣を振るい、魔法使いの少女が震える手で杖を構えている。
もう一人の小柄な盗賊風の少年は、仲間をかばいながら後退していた。
「くそっ、もうダメかも……!」
ゴブリンたちは、鋭い牙を剥き、今にも襲いかかろうとしている。
アリシアは迷わず、背中の魔槍を抜いた。
「下がって!ここは私が引き受ける!」
突然現れた美女――しかも巨乳の鎧姿に、少年たちは一瞬ぽかんとしたが、すぐにその声の力強さに気づいた。
「だ、誰だよ!?」
「いいから下がって!」
アリシアは地面を蹴り、ゴブリンの群れへ一直線に突っ込む。
槍の穂先に魔力を込め、鮮やかな光が走る。
「ファイアランス!」
炎を纏った槍が、ゴブリンの一体を貫き、爆発的な火花を散らす。
驚いたゴブリンたちが一斉にアリシアへ向き直るが、彼女はひるまない。
次の瞬間、槍を大きく振るい、魔法陣を展開する。
「エア・バースト!」
風の魔法が巻き起こり、数体のゴブリンが吹き飛ばされる。
残った数体が、アリシアの巨躯――いや、豊かな胸元めがけて飛びかかってくる。
「させない!」
槍を回転させて防御し、すかさずカウンター。
「ライトニング・スラスト!」
雷光を纏った槍が、ゴブリンを一撃で貫く。
あっという間に群れは壊滅し、最後の一体が情けなく逃げ出した。
救われた冒険者たち
「す、すごい……」
「一瞬だった……」
少年たちは呆然と立ち尽くす。
アリシアは槍を収め、微笑みながら声をかけた。
「大丈夫?怪我はない?」
剣士の少年が我に返り、慌てて頭を下げる。
「は、はい!助けてくれてありがとうございます!」
「すごい魔法と槍さばき……あなた、もしかして有名な冒険者さんですか?」
魔法使いの少女が、尊敬のまなざしで見上げてくる。
アリシアは少し照れながら、苦笑した。
「私はアリシア・フェルンブレイド。旅の魔槍士よ。君たちは?」
「ぼ、僕はリュート!このパーティーのリーダーです!」
「私はミーナ。魔法使い見習いです」
「オレ、カイル。盗賊見習い……」
みんな十代半ばくらいだろうか。
まだ装備も心もとなく、経験も浅そうだ。
「ありがとう、アリシアさん。僕たち、初めての討伐クエストで……」
リュートが申し訳なさそうにうつむいた。
「誰だって最初は初心者よ。無事でよかった。
でも、魔物の群れに囲まれたら、まずは冷静に退路を確保すること。
魔法使いは後衛に、盗賊は周囲の警戒を――」
アリシアは自然と、ゲームで培った知識をもとにアドバイスを送る。
三人は真剣な表情で聞き入り、やがて顔を上げた。
「アリシアさん、もしよかったら……僕たちに、もっと冒険のことを教えてくれませんか?」
「え……?」
予想外の申し出に、アリシアは一瞬言葉を失った。
だが、かつて自分もゲームで仲間たちと助け合い、成長してきたことを思い出す。
「……いいわ。私でよければ、少しだけ付き合うわ」
三人の顔がぱっと明るくなる。