魔槍士アリシア、異世界に立つ
プロローグ――終わりと始まり
「やった……! ついに魔槍士で全ボスソロ撃破達成!」
夜更けのワンルーム。
俺――田中悠斗は、愛用のPCでMMORPG『アルカナ・レジェンド』をプレイしていた。
魔法と槍を自在に操る「スペルランサー」は、マイナー職だったが、俺はこの職業に惚れ込み、ひたすら極めてきた。
魔法で敵を翻弄し、槍で一撃を叩き込む――その爽快感は、他のどの職にもなかった。
何度も全滅し、何度もキャラを作り直し、ついにこの日、全ボスソロ撃破という偉業を成し遂げたのだ。
「これで思い残すことは……」
達成感と同時に、どこか寂しさも感じた。
大学生活も終わりが近い。ゲームに没頭できる日々も、もう長くはないだろう。
自分で作り上げた最強キャラ、アリシア・フェルンブレイド。
金髪碧眼、長身でスタイル抜群。特に豊かな胸元は、キャラクリエイト時にこだわったポイントだった。
最初はネタだったが、今ではこのキャラに強い愛着を抱いている。
「アリシア、お前と歩いたこの世界、最高だったよ」
そう呟き、画面越しに微笑む。
その瞬間――
突然、画面がフリーズし、ノイズが走る。
モニターが真っ白になり、耳鳴りのような音が響く。
「え、ちょ、なんだこれ……」
思わず目を覆う。
視界がぐにゃりと歪み、意識が闇に沈んでいく――
目覚め――新たな肉体、新たな世界
「……う、うぅん……」
目を覚ますと、そこは見知らぬ草原だった。
青空、そよぐ風、鳥のさえずり。
だが、それ以上に衝撃的だったのは――
「……なんだ、この……重い……?」
体を起こすと、胸元にずっしりとした重みを感じる。
見下ろすと、鎧の上からでも分かるほどの豊かな胸。
腰まで届く金髪が、さらさらと風に揺れている。
手を伸ばして自分の髪を掴む。柔らかくて、指の間をすり抜ける感触が新鮮だ。
「え、え、え……?」
慌てて自分の体を触る。
細くしなやかな手足、女性らしい曲線美、そして――
「……で、でかい……!」
自分の胸を両手で支え、呆然とする。
しかも、背中には見覚えのある魔槍「ルナティック・スピア」がしっかりと装備されている。
「ま、まさか……ゲームのキャラに転生した……?」
混乱しつつも、脳内で「ステータス」と唱えると、半透明のウィンドウが現れた。
【ステータス画面】
名前:アリシア・フェルンブレイド
職業:魔槍士
レベル:99
HP:8200
MP:12000
主なスキル:
魔槍術(魔力を纏わせた槍攻撃)
エレメントバースト(属性魔法の一斉発動)
フォースバリア(魔法障壁)
ルナティック・ドライブ(必殺技)