表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/13

7.ルピナス視点*花の小屋と鈴

 大きな黒い龍のような姿に変身したヴェルゼ。私はヴェルゼの背中にしがみつき乗った。相変わらず変身後はふわふわで、絨毯みたいな背中。空を飛んでいる。今まで見あげたことしかなくて、遠い存在だった大きな空。そこに今、私はいる。向かい風も気持ちがよい。世界はこんなに広かったの?


 少し経つと目的地に着いた。

 先に着いていたエアリーの手を取り背中から降りる。


「ありがとうございます」


 目の前に見えるのは、若干緑色のような霧がかかっている、何も無い場所。


「ここに、花の小屋を作るのはどうだ?」


 多分私の魔法を使ってということだろう。小さなものは作れるかもしれないけれど、相当頑張らないと花の小屋なんて……。


「我の魔力を使うがいい」


 再び魔力をくれた。私はイメージする。色は明るい色の花にしようか。屋根は柔らかい黄色、壁は白い花をイメージした。ドアは難しそう……ひとまず目隠しな役割をした暖簾のようなイメージで。色は桃色かな?


 ヴェルゼの魔力のお陰なのか、すんなりと小屋は出来上がった。花も固くなり、風が来ても雨が降っても多分簡単には壊れない。


「す、すごい」


 そう言いながら私は暖簾をくぐる。ヴェルゼとエアリーも中に入ってきた。


「い、いいぞ。いい小屋だ」

「ありがとうございます」


 お礼を言った瞬間、ヴェルゼはくしゃみをした。悪魔も風邪を引いたりするのか。


「なんと、ヴェルゼ様が、ルピナス様の考えた小屋をお褒めになっていらっしゃる……信じられない」

「黙れエアリー」

 ヴェルゼはエアリーをキッと睨む。

「申し訳ございません。あ、そういえば人間が食すお食事の準備はございません」

「でも、もう少しすれば帰りますし、家に食事が……」

「いいえ、今日からはここでお暮らしになるのです」

「お母様にはお伝えしていないから、心配させてしまいます」

「大丈夫でございます。お母様には、花嫁修業のためにしばらくルピナス様をお預かりいたしますと伝えてありますので。あと、これをお受け取りくださいませ」


 エアリーから黄色の鈴を受け取った。


「これは何です?」

「お母様のことをご心配になるお気持ちもあると思いまして。こちらはルピナス様とお母様がお持ちになる、ふたつセットの鈴で、身の危険がどちらかに迫るか、片方が強く振れば、もう片方の鈴が騒ぎ出します。例えばこのように」


 勝手に鈴が大きく揺れだし、シャンシャンと音も大きくなりだした。


「じゃあ、これが鳴らない限り大丈夫だってことですか?」

「そうだ。そなたの母親に危険が迫れば、我は一瞬でそなたの母親の元に行き、助けよう。まぁそんなことは決して起こらないよう、我が後でそなたの姉達に……」

 

 ヴェルゼはニヤリと含み笑いをした。


 多分、この悪魔達は嘘をつかないし、信用出来るだろう。


「ありがとうございます」

 お母様のよりも大きな黒い鈴をヴェルゼから受け取った。


「こっちの鈴は、我の魔力も封じ込めてある。そなたに何か危険が迫れば、その魔力がそなたの身を守る。そしてそなたが鈴を振れば我もすぐに駆けつける」

「ありがとうございます」

「では、我はそなたの食す夕食を調達してこようか。この辺りに結界を張っておくが、エアリー、何かあれば念で知らせてくれ」

「分かりました。ヴェルゼ様、きちんと人間が食すものを見分けられますか?」

「大丈夫だ。我はこの世界に来てから人界の料理を調べ、作れるようにもなったのだ」

「ヴェルゼ様はルピナス様のことを愛されているのですね」


 一瞬ヴェルゼと目が合ったけれど思い切りそらされた。ヴェルゼの尖った耳が赤くなっていた。


「では、行ってくる」


 ヴェルゼは花の小屋を出ていった。


「あの、エアリーさんにお聞きしたいことがあるのですが」


「はい、なんなりと」

「あの方は、時間が巻き戻る前、私に一体何をしたのでしょうか?」

「ヴェルゼ様は魔界にいる時は、最強であると同時に冷酷でした。冷酷というか、それはただ他の者に興味がないだけのように見受けられましたが。それはルピナス様に対しても……正直あまりにも酷くわたくしが直接ルピナス様にお伝えしてもよいものか。もし宜しければ、ヴェルゼ様の過去を直接見られますか?」

「お姉様達のようにですか?」

「そうですね、ただひとつ申し上げますと、ヴェルゼ様は他の者に冷たくされても、拒絶はされませんでした。けれどルピナス様に対してだけは時々拒絶反応を……だから私は違和感を……あ、いや、わたくしはどうも余計なことまで話しすぎてしまう傾向があるようです。申し訳ございません」


 エアリーが言うには、あまりにも醜いことをされたらしい。今一緒に行動を共にしているヴェルゼを見ていると、それが信じられない。でも、向き合う必要を感じた。


「お願い、いたします」

「分かりました。そうですね……目の前にご本人がいらっしゃらないと、能力は使えません。ですので、ヴェルゼ様が眠りについた頃、バレないように意識をルピナス様に送ります」

「分かりました」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ