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4.ヴェルゼ視点*時間が巻き戻る前

 我はルピナスのあとをついていった。家族と食事をしている間、ルピナスはずっと震えていた。


 ルピナスを震えさせる人間の女達は我の目の前にいる。女達は毒の香りを微かに纏っている。そしてルピナスの母親の体内にも、同じ毒の気配を感じた。毒を仕込んだのは、このルピナスの姉と言われているふたりだろう。我の魔力は完全ではないが、ある程度戻っていて、人間など力を入れずとも粉々に出来るのだが、ルピナスのことを考え、我慢した。余計なことをしてルピナスに嫌われたくないからな。


 ルピナスは朝食を終えると、部屋に戻った。我もついていく。部屋に戻ると我は本来の姿に戻り、部屋に鍵をかけた。鍵をかけると部屋で待機していたモフモフ姿のエアリーも本来の姿に戻る。


「母親、体内に毒があったな……」

「毒ですか?」


 我が毒について言うと、ルピナスの顔は真っ青になってゆく。


「毒を盛ったのはそなたの姉達だろう」

「えっ、私のお姉様達がお母様に毒を?」

「あぁ、そうだ」

「うそ……」


 ルピナスは真っ青な顔のまま、口元を手で抑える。


「それでは、ルピナス様のお母様の身辺に起こった出来事を見てみましょうか」

「出来事とは……?」

「お母様がどのようにして、あぁなったのか、真実を確認してみるのです。なので、怪しいルピナス様のお姉様おふたりの様子を……」


 エアリーは過去を覗ける。覗けるだけで、もちろん過去に触れることは出来ないが。エアリーとはもう何百年も一緒にいるが、そんな能力があるなんて、つい最近まで全く知らなかった。エアリーにも過去にも、全く興味がなかったからだ。


それを知ったのは、ルピナスが魔界で亡くなってから。何故自ら命を絶ったのだろうと、ルピナスの亡骸の横で嘆いていたら、エアリーがその能力を使った。ルピナスの過去。つまり、ルピナスの目で見えていた過去の記憶が頭の中に流れる。


 エアリーが覗ける風景を他の者の脳内にも送ることも出来る。我の脳内にも流れてきた。その時に脳内で流れた映像はまず、ルピナスが花魔法で作ったと思われる小さな花の小屋を、我が一瞬で焼き尽くした場面。それから我は鼻先でせせら笑う。ルピナス視点ということは、それを見られてたということか。気が付かなかった。


 焼き尽くす行為は最低だったなと思い、深く反省する。


 それから次々と映像は流れ、我の元へ嫁いでからのルピナスは魔界でひとり苦しみ、泣いていた。そして魔界にいる命を奪う底辺の悪魔に依頼し、永遠に生きるためにかけられた術を解除された。ルピナスは深い森へ自ら迷い込み、そこに湖があり水の底へ……。


 映像はそこで終わった。我は魔法を使い、行方不明になったルピナスを見つけて、水に潜った。そして水の底でルピナスを抱きしめ、一緒に水から上がった。それからはずっとルピナスの亡骸と共に過ごしてた。


 ルピナスを蔑ろにしたことに後悔した。

 魔界で共に暮らしたのは、十年程だろうか。我にとっては短いけれど、ルピナスにとっては長い十年だ。十年もの間ルピナスには冷たく接してしまっていたが、ルピナスはそれにめげずに我に対し優しく接してくれていた。


 いなくなって初めて、我はルピナスに溺愛していたのだと知ったのだ。


 思考は現在に戻る。エアリーはルピナスの姉達の元へ向かった。覗きたい対象が目の前にあるという条件で過去を覗けるらしい。少し経つと、頭の中に映像が送られてきた。


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