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3.ルピナス視点*共同生活

 ヴェルゼは地に手と頭をつけ、私に許しを乞うた。


「ヴェルゼ様がそんな格好を……」


 驚きを隠せない様子のエアリー。


 ヴェルゼは自ら強い魔力を捨てた。私のために?

 信じられなかった。


 何故なら〝悪魔ヴェルゼ〟は誰にも媚びることがなく、神に次ぐ強い悪魔。怒らせたら三界を破滅もさせることが出来るとの噂が、人界の間では常識だったからだ。


 想像していたような悪魔とは違った。

 そしてどうせ私には、選択肢はない。


「一緒に暮らす件、承知いたしました」

「いいのか?」

「はい、時間が戻る前のことは何も分かりませんが……私たちは一緒になる運命ですし」


 そうして今日から、未来の旦那となる悪魔ヴェルゼとの共同生活が人界で始まった。


まずはヴェルゼの存在を私たち以外にバレないようにしなければならなかった。本来嫁ぐ際には、私はすぐに悪魔の住処へ行かなければならない。つまり魔界へ。何故なら人界の者達にとって、悪魔の存在は恐ろしいものであったから。ここで少しの期間でも暮らすとなると、知られるだけで大問題になる。


 それならと、ヴェルゼは普段はこのような姿でいれば警戒など抱かれないだろうと変身した。変身した姿は明らかに見覚えのある姿だった。昔はもっと小さな姿だった記憶だが、幼き頃、会ったことのある。


「モフモフ? もしかして私が助けたのって、この姿の時のあなたでしょうか?」


 モフモフの姿になったヴェルゼは頷いた。ヴェルゼと私は、幼き頃に出会っていた――。


***


 ヴェルゼとエアリーがここで暮らし始めて、ひと月が経った時だった。


「ルピナス様、大変です。奥様が……」


 朝目覚めてベッドから立ち上がったばかりの時、メイドが私の部屋に来て叫んだ。ただ事じゃない。床でモフモフに変身して眠っていたヴェルゼとエアリーも起き上がる。


「どうしたの?」

「奥様が倒れて……今医者がこちらに向かってきているところです」

「お母様が?」

「はい、今お部屋で横になっております」


 昨日まで普通に話をして元気だったのに。私は寝間着のままお母様の部屋へ飛びこんだ。

「お母様、どうしたの?」

「ルピナス、慌てなくても大丈夫よ」


 お母様はベッドの上にいた。そして口角を上げ微笑んだ。力のない微笑みを。


 医者の診断によれば、恐らく疲れが原因らしいとのこと。だけどなんだかいつもと違い、違和感が拭えなかった。


 しばらくするとお母様の顔色は落ち着いてきた。部屋に戻り、着替えてリビングの入口前に行くと、こそこそとテーブルの前でお姉様達が話をしていた。私の存在には気がついていない。


「中途半端な量だから失敗したのよ」

「じゃあお姉様がやってよ」

「嫌よ、私は人殺しにはなりたくないもの」

「私だって嫌よ」


 どういうこと?


 動揺しながらふたりの様子を見ていると、モフモフな状態のヴェルゼに足をコツンとされた。私は心を落ち着かせ、何事もなかったかのように、中に入っていった。





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