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婚約相手は最強悪魔~花魔法使いの令嬢は花粉症の悪魔と恋をする。  作者: 立坂雪花


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1.ルピナス視点*出逢い

 再びそなたに逢えた。

 そなたに対する過去の行い、全てに後悔した。


 花に包まれ、花のようにふわりとした雰囲気のそなたに抱かれる。

 何故だろうか、抱かれると全身も心もムズムズする。



 今回は、全力で愛する――。


***


 幼き日の記憶。


 太陽が登りきった時間、広い森の中で木の実を集めていた時だった。

 真っ黒で小さい犬のようなモフモフ動物が、強そうな獣達に囲まれていた。


「あの子が危ない――」


 手元に意識を集中させると私の手元が輝きだし、色とりどりの花達が出てくる。まだ量が足りない。


――お願い、花達よ。私に協力して。


 願うと花達は更に増えてきた。

 ありがとう。と心の中でお礼を言う。


 全集中して、花達をモフモフに向けて放った。


 睡眠成分が含む花達を放ったから野獣達は眠った。囲まれていたモフモフも。そのままモフモフを花で包み、浮き上がらせ、私の元へ来るよう花にお願いをする。


 シュルルと花達がモフモフを運んできてくれた。


 私はその子を優しく抱っこした。

 それから数日間、ご飯を食べさせたりしていた。けれども朝目覚めると、一緒に同じベッドで眠っていたモフモフは跡形もなく消えていた――。



 ***


 春は繰り返し訪れ、私も歳を重ねてゆく。もう十七の歳。この国の女達は十八で結婚をする。


 私のような裕福な家庭で育った者の結婚相手はあらかじめ決められていた。私の相手は好きな人ではなく、まして人界の者でもない。なんと悪魔だった。正直、憂鬱だった。


底辺の悪魔が人界を荒らしに来ないよう、上位の悪魔が見張る。その見返りとして魔界の環境に耐えられる程の魔力がある女が人界からひとり選ばれ、地位の高い悪魔の元へ嫁ぐことが決定された。


 私にとっては生贄のようなもの。生贄は我が家から選ばれることになった。ふたりのお姉様は断り、私が嫁ぐことになった。生贄に決定されてから、もう八年が経つ。


私には拒否する権利はない。何故なら私は、お父様の前妻が亡くなった後に、お母様とこの家に来て、お父様やお姉様達とは血が繋がっていないから。お母様と私は、肩身狭い思いをして暮らしていた。


 それにお姉様達は街に敵が現れた時に役立つ、攻撃系の魔法を使えていた。街を守るための魔法が使えない私のような者は、家の地位や魔力はあるけれど、弱者としてみられて生きていくことになる。花魔法も攻撃は出来なくはないけれど、そんなことで花を使いたくない。お姉様達には馬鹿にされる日々。


唯一花魔法を褒めてくれたのは、お母様だけ。でも私は別に、弱者のままでもいい。


 住んでいるこの家は、豪邸だと周りからは羨ましがられるけれど、私にとってはただの檻のようなもの。そんな檻の中で大きな溜息をつきながら、花魔法を使い、花を庭園いっぱいにしている時だった。


「そなたを迎えにきた」


 突然、声がした。

 声する方を向くと、キラキラと眩しく見える程の、凛とした美しい男が立っていた。黒い衣を身に纏うその男の身長は高く、漆黒の長い髪も美しい。顔立ちもひとつひとつのパーツが整っている。はっきりとした二重の目力も強く、その男の世界に引き込まれそうになる。


 一目見ただけでドキリと心臓が高鳴る。


 この彼に纏った空気を知っている。かつて出会ったことのあるような、どこか懐かしい香りがした。


 そして、確実に人間じゃない気配もした。地位の高い悪魔とは出会ったことはないけれど、彼らは美貌で人々を惑わすという。もしかして――。


「私が嫁ぐ予定の悪魔ですか?」

「……」


 聞き方が不味かっただろうか。目の前の男は何も返事をしない。嫁ぐまではあと一年だし。私が嫁ぐのは、別の悪魔だろうか。けれど今「君を迎えに来た」って……。

「そう、だ。我の名は悪魔ヴェルゼ。詳しくいうと、君を知りに来た」

「私を知りに?」

「どうか一年間、共にすごして欲しい。それから我と一生を共にするか判断して欲しい。我はそなたと共に一生を過ごしたい。だが、無理強いは、しない」

 真剣な眼差しでその悪魔は見つめてきた。

 どうせ、どう足掻いてもこの悪魔とは一緒になるしかない運命だし、でも――。


「花か、懐かしいな」


 言葉に詰まっているとヴェルゼは庭園を眺めながら言った。


「魔力を渡そう」


 ヴェルゼの手から青っぽい光が出てきて、それを私に向かって放った。


「花を、もう一度出してみるといい」


 魔力を本当に送ってくれたのか、力がみなぎる気がした。軽く魔法で花を出してみると、すごい勢いで手から花が沢山出てきて、辺り一面花だらけになる。はっとして、手の平をみた。


「ヴェルゼ様が、ルピナス様のために魔力を……」


 手の平を眺めていると、後ろから声がした。振り向くと白い衣を身に纏い、短く艶やかな白髪(はくはく)が似合っていて、これまたヴェルゼに負けない程に美しい男が立っていた。


「初めまして、わたくしは悪魔エアリーと申します。ヴェルゼ様の執事をしております。以後、お見知りおきを」

「わたくしは、ルピナスと申します」

 お互いに自らの手を胸に添え、自己紹介をし合う。


「ヴェルゼ様の魔力はまだ完全に復活したわけではないのに、それでもお渡しになるとは……やはりあの時から本当にヴェルゼ様のお心の中にはルピナス様が……」


 ヴェルゼの表情が尖る。


「おふたりはもっとお互いを知っていた方がよかったのです。あの時もお互いをもっと知っていれば……」

「だまれ……」


 ヴェルゼは手から何かを出そうとした。


「申し訳ございません、ヴェルゼ様」


 エアリーはヴェルゼにバレないように、私に向かって目配せをした。これは後で教えてくれるという合図だろうか。解読は難しい。



***


 






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