第四話 出会いと希望の繋がり
陽暦二一〇二年十月十七日。
六歳の時にあった出来事。
その日は、両親と一緒に近所にあるペットショップに行った。
店名は、『エピテランサ・ミクロメリス』。
出入り口には、立派なサボテンがぞろぞろと並んでおり。
ぱっと見、植物を売っているのかと錯覚してしまうそうだ。
ペットショップに来た理由は……。
まあ、言うまでもないけど、ペットを飼う為です。
実は、僕は一人っ子で兄弟がいない。
僕自身はそのことを特に気にしてないし、特に両親に言ったこともない。
けど、なぜか両親は僕が兄弟を欲しがっていると誤解しているらしい。
そういう理由から、その兄弟を作る為にペットを飼うというわけです。
ペットショップには、蛇・兎・鼠。
他には、猫・梟・鷲・狐・鼬が居た。
特に鼠が多いらしく、ハムスター・ビーバー・デグー・グンディ・ヤマアラシ。
ハリネズミ・リス・ヤマネ・ジャービル・カピパラの全十種類存在している。
でも、種類は多いが、なぜか一匹ずつしか居ない。
恐らく、既に売れてしまったからだと思う。
その中で目を引いたのはハムスター。
灰色の毛並みに、赤色の瞳をしており、左目には黒色の眼帯がしていた。
眼帯でよく見えないけど、多分左目に怪我を負っている。つまり、隻眼だ。
何があったのかはわからない。
けれど、その姿はとても可哀想に見えた。
てか、犬が一匹も居ない。
もし飼うとしたら、犬と猫が定番だと思ってたが、そういうことなら仕方ないね。
それに、喧嘩防止かな?
動物毎に違うゲージに入れられていて、必ず別のエリアで分けられている。
うん。とりあえず、沢山の動物たちが居る。
居るんだけど……。正直、飼いたいと思う動物が一匹も居ない。
今の所、気になるのは、さっき見た隻眼のハムスターだが。
飼いたいかと問われると、そういうわけではない。
なんとなく、同情するような気持ちを抱いてしまっただけだ。
なので、一応候補として残しておき、他の動物も見てみよう。
別に急いで決めないといけないというわけじゃないし。
その結果、気になったのは兎が居るエリアだった。
白色の毛並みに、赤色の瞳した兎たち。まるで自分を見ているかのようだった。
いや、違うな。どちらかといえば父親だ。
その兎たちを見ていると、なぜか伝わってくる。
きっと、どんな難関な壁も一人だけで乗り越えていくんだろうなって……。
けど、僕は違う。
例え難関な壁が立ち塞がっても、きっと一人では乗り越えられない。
一応言っておくけど、別に弱音を吐いている訳じゃない。
ただ、この歳になると徐々にわかってきたことがある。
父親との差というやつを、身に染みて実感し始めた。
更にいえば、その差は絶望そのものだった。
それは、死を恐れない心。それが僕にはない。
僕は自分の命と誰かの命を天秤にかけることができない。
だから、絶対にその差は埋めることはできないだろう。
もちろん、僕は父親のようになりたい。
その目標は今でも変わってない。
けど、それは父親そっくりになりたいっていう訳じゃない。
僕は父親のように、沢山の人を守れるような人間になりたいんだ。
というのも、父親の職業は消防士。
主な仕事は、消化・救急・救助をしている。
いつも誰かの為に行動し、沢山の人を救う職業だ。
しかも、父親は死をも恐れず、いつも誰かを救うために行動している。
それは誰にでもできることじゃない。
だからこそ、それができる父親は立派なんだ。
それができるから、憧れるんだって思うようになった。
今の僕では、父親のように沢山の人を救うことはできない。
いや、恐らくこれからもそれは変えられないと思う。
けど、同時に気がついた。
なんで、僕は一人で乗り越えようとしているのかということに……。
そう。別に難関な壁が立ち塞がっても。
一人で乗り越えようとする必要なんてない。
もしも一人で無理だったのなら、誰かを頼ったらいい。
僕一人では、父親との差を埋められない。
なら、誰かと支え合いながら、徐々に埋めていけばいい。
もちろん、誰かに頼るばかりなのはよくない。
だから、時と場合を判断して見極めていく必要はある。
でも、別に誰かを頼ることは悪いことじゃない。
それよりも、全てを一人で抱え込み、詰め込みすぎて爆発する方がよくない。
因みに、爆発っていうのは悲観的になるってことね。
悲観的になるということは、僕にとっての絶望そのもの。
だから、そうならないように、僕はもう一人で乗り越えることを辞めた。
これからは、同じ意志を持つ仲間たちと共に支え合い。
難関な壁を乗り越えて先に進んでいく。
そうしていくうちに、沢山の人を守っていきたい。
いつかそうなれるように、これから頑張ろうと心に誓った。
とりあえず、このエリアはなしだな。
見ているだけで、劣等感が襲ってくる気がする。
僕は兎のエリアを通り去ろうとした。
だが、途中で何者かによる視線を右側から感じ。
咄嗟にピタッと足を止め、ゆっくりと振り向くと……。
その先に居たのは、一匹の兎だった。
ただの兎じゃない。その兎は、黒色の毛並みに、紫色の瞳をしていた。
今まで見たことがない、とても珍しい兎だ。
しかも、同じような兎は居らず、その一匹だけしか居ない。
僕はその珍しい兎と見つめ合い、しばらくの間、そのまま固まっていた。
まるで、時間の流れが止まったかのように……。
◼️◻️◼️◻️
「お。ここに居たのか、陽」
突然、どこからか父親の声が聞こえ。
僕は反射的に声がした方向に振り向くと。
そこには、別行動をしていた父親と母親がおり。
テクテクと歩きながら、こちらへ向かって来ていた。
それはわかったんだけどね……。
「うん……」
僕は珍しい兎に夢中で上の空だったので。
直ぐに目線を戻し、掠れるような声で一応返事をした。
両親はこちらに辿り着くと、直ぐに僕の目線を追い。
呆然と見つめていた珍しい兎を瞳に写していた。
「この兎が気になるの?」
母親が中腰になって聞いてきた。
なぜだか、どことなく嬉しそうにしている。
「うん……」
もちろん、僕はまだ上の空なので。
さっきと同じように呟き、見てわかるように頷いた。
「兎か〜。うん、いいんじゃないか? この大きさなら室内で飼えそうだし」
なんと、父親は兎を飼うことに賛成らしい。
てっきり、自分と似ているから。
多少なりとも抵抗感があるのかと思っていたが。
どうやら、余計な心配だったみたいだな。
もしかしたら、この珍しい兎限定かもしれないけど……。
「その兎は、今生後一ヶ月ほどなので、飼うにはいいタイミングだと思いますよ?」
突如、どこからともなく現れた店員が会話に参加してきた。
当然のことで、僕は驚かずにはいられず。
瞬時にその店員へと目線を向け、疑念の眼差しで見つめた。
うわ、ビックリした!
ど、どこからやって来たんだ。
そこには、誰も居なかったはずだろ。
しかも、適切な説明をしている。
もしかして、どこかで僕たちの会話を聞いていたのか?
……。
定員って、凄いんだな……。
けど、ビックリするから、出来れば辞めて頂きたい。
「そうなんですか。じゃあ、つい最近生まれたんですね」
だが、どうやら驚いているのは僕だけみたいですね。
母親はその店員に疑問を感じておらず、そのまま店員と会話を始めていた。
え?
そのまま会話始めちゃうの?
父親を見ても、母親と同じで別に驚いている様子はない。
僕は両親の反応を見て、これが普通なのかと思い始めたのだが。
それでも納得できなかったので、僕は店員と両親に疑問です感を提示した。
「はい。この子は九月九日が誕生日で、とてもいい日に生まれたんです」
僕にはお構いなしに、そのまま質問に答える店員。
「いい日、ですか? 九月九日って、何か特別な日でしたっけ?」
違う疑問を提示している母親。
「多分救急の日だから、じゃないかな? 一応、正式に定められてるしさ」
母親の疑問に返答する父親。
結果、誰も僕の疑問には気づいてくれませんでした。
……もういいや。
これが普通だということにしておこう。
それによく考えたら、この人は店員で僕たちは客だ。
なら、僕たちに買って貰うために、耳を澄ませていても不思議はない。
うん。
不思議はない……はずだ。
てか、この店員の話を聞いていると。
さっきから受け答えしてるだけみたいだし。
とりあえず、話だけ聞いてみよう。
「はい、その通りです。なので、きっとこの兎が居れば、例え急場を迎えても、救ってくれるんじゃないでしょうか?」
と思いきや、いきなり突拍子もないことを言い出す店員。
流石にそれは無理があるって。
幸運の兎じゃあるまいし。
「あ〜、なるほど。確かに、それはいい日ですね」
流石の母親も苦笑いを浮かべ、先程店員が言った例えは見事にスルーしていた。
「はい。それに、この子なら室内でも飼うことができますし、いかがでしょうか?」
だが、この客はいけると思ったのだろう。
急にやたらとグイグイくる店員。
「う〜ん……。陽、どうする? この兎にする?」
母親は店員の圧に負けたらしく、一応僕に確認することにしたみたい。
念の為か、目線を一切店員に向けないようにしている。
「うん……」
僕は少し考えることにした。
とりあえず、この珍しい兎を飼うことに対して、両親は賛成している。
更に言えば、僕自身も飼いたいと思っている。
その理由は、ただ珍しいからではない。
なんというか、何かの縁を感じるからだ。
心の中にある糸のようなものが繋がったような感じた。
例え切り離しても直ぐに再び繋がってしまう程、強く結ばれた縁を……。
はい、自問自答タイムスタート。
『なぜ?』
(それは、この珍しい兎と僕が、重なって見えるから)
他の兎は、全て白色の毛並みに、赤色の瞳。
ということは、恐らくこの珍しい兎の両親も同様。
他と同じで白色の毛並みに、赤色の瞳をした兎の可能性が高い。
それに、周りには空になっているゲージがいくつかある。
そのゲージには、『生後一ヶ月程度』と書いてある一枚の紙が貼られていた。
その珍しい兎以外の兎がいるゲージには。
『生後一年程度経過している』と書いてある。
つまり、生後一ヶ月程度なのは、もうその珍しい兎だけしか残っておらず。
他の兎は、もうある程度成長しているってことになる。
どうやら、生まれて間もない状態の兎が人気らしい。
確かに飼うとしたら、そっちの方が育てがいはあるが……。
『なら、なんでその珍しい兎だけがまだ残っているんだ?』
(それは、きっとその兎だけが他の兎と違う容姿だから)
(だから、選んでもらえない)
多分、今その兎の前には、とても大きな難関な壁が立ち塞がっている状態。
そのゲージから出るのを阻む、何をやっても乗り越えなれないほどの強大な壁だ。
でも、その壁を乗り越えないと一歩も先に進めない。
なのに、同じ年に生まれた他の兎たちは全員。
一人で軽々と乗り越えて先に進んで行ってしまった。
その兎は、他の兎と違う部分があるから。
まだ自分一人では乗り越えられないでいるんだ。
僕と同じだ……。
僕も他の人とは違う部分がある。
だからこそ、父親みたいに一人だけでは乗り越えられないって思った。
だから、僕は決めたんだ。
僕一人だけじゃなく、誰かと共に支え合ってでも乗り越えて行こうって……。
じゃあ、その兎も自分だけじゃ駄目だってわかっているから。
誰かに、その壁を乗り越える為の救いを求めてるんじゃないか?
僕に、救いを求めてるんじゃないか?
なら、僕はこの兎を救いたい。
今後も立ち塞がる難関な壁を互いに支え合い、一緒に乗り越えて行きたい。
これが、僕の答え。
いや、僕の決意だ。
「いや……。でも、確か他にもあったような……」
僕が考え込んでいる間、父親が何やら一人でぶつぶつ呟いていたが。
僕は完全に自分の世界に入っており、外部の音が全く聞こえていなかった。
「ん? あなた、どうしたの?」
「うーん……。あ! そうだ。その日は……」
すると、父親は考えていた何かを思い出したらしく。
そのことを言い出そうと言葉を発していたみたいなんですが……。
「この兎がいい……。この兎を飼いたい」
そんな父親をお構いなしに、僕の言葉が遮る。
あ。決してわざとじゃないよ?
考え込んでたから、父親の言葉が聞こえなかっただけです。
「ちょ、あー……」
結果、父親は途中で口をつぐみ。
今まで聞いたことがないような、変な声を出していた。
「そっか。じゃあ、この兎にしましょうね」
しかも、母親も父親をスルー。
「ありがとうございます!」
最後に満面の笑みを浮かべる店員。
そして、どことなく落ち込んでいる父親。
◼️◻️◼️◻️
それから数分後――。
僕たちはその珍しい兎を買った後、家に向かって歩いていた。
ここで、各自の手荷物チェック。
父親は、兎を飼う為に必要な餌やゲージなどを両手で抱え。
母親は、兎を入れていた段ボールを左手で持っており。
僕は、兎を両手のひらで運んでいます。
兎の手荷物はもちろんありません。
兎は僕の両手にすっぽり収まるくらいの大きさ。
しかも、毛が枕みたいにもふもふで両手が幸せです。
本当は家に帰ってから触ろうと思っていたんだけど。
新しい家族が出来たことが嬉しくて、待ちきれませんでした。
それに、この兎はずっとゲージの中に居ただろうから。
外の世界がどんな感じなのかを見せてあげたかったんだ。
最初は怖がらないかと心配していたが。
どうやら、僕の選択は正しかったみたいだ。
兎を段ボールから出してあげた途端、クリクリした瞳を輝かせ。
左右を見渡し始め、今まで見たことがない世界に驚いているように見えた。
そんな兎の嬉しそうな姿を目の当たりにし、動物特有の可愛さを肌身で感じた。
「陽。兎、段ボールに入れなくていいのか? 落としたら危ないよ?」
すると、父親が心配そうに話しかけてきた。
確かに、もし落として怪我でもさせたら可哀想。
だが、こんなにも可愛い兎を段ボールに閉じ込めるのはもっと可哀想だ。
なので……。
「うん。大丈夫」
父親の忠告は有り難く思いつつも、キッパリと拒否した。
「そ、そうか?」
でも、父親はそれでも心配らしい。
その気持ちは素直に嬉しいけど、少しは僕のことを信用してほしい。
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。それに、陽が『兎を手で持って帰りたい』って言った時、OKを出したのはあなたじゃない」
ここで見兼ねた母親が会話に参加し。
心配性な父親を説得しようと試みていた。
母親が味方についてくれたら、もうこっちのもんだ。
なぜなら、立派な父親でも、唯一母親にだけは頭が上がらない。
後は、父親が降参するのをじっと待っているだけで事態は収束するはず。
「いや、まあそうなんだけどさ。よく考えたら、兎は飛ぶし、もし車道にでも出たら……」
「……あなた」
おっと?
これはヤバイかもしれん。
母親は笑顔だ。
しかも、満面の笑みを浮かべている。
けど、僕は知っている。
この顔は、母親が怒ってる時の予兆。
母親が怒る時の笑顔はとてつもなく怖く。
いつも禍々しいオーラを醸し出しているんだが。
今まさに、その恐ろしい笑顔とオーラを纏い始めていた。
「え?」
父親も母親の異変を察知したっぽいが、もう遅い……。
「陽が『大丈夫』って言ってるでしょ? それに、陽は今喜んでるでしょ? だから、そんな悲観的な想像しないで? ね? わかった?」
「あ、はい……。わかりました……。すいません……」
母親の必殺技、怒りの笑みが父親を直撃。
結果、父親は恐怖で足が竦み、即謝罪を実行していた。
やはり、立派な父親でも怒った時の母親には勝てないらしい。
「そんなことよりも、その兎に名前付けてあげないとね」
やっと心配性の父親が大人しくなったのを確認し。
瞬時に笑みが普通に戻り、禍々しいオーラも完全に消え去った後。
母親はこちらへ目線を向け、いつも通りの優しい口調で、僕に話しかけてきた。
切り替えの速さが凄すぎるのも母親の凄いところです。
「うん。名前か……」
確かに名前は考えないとな。
ずっと兎のままじゃ可哀想だし。
なんて呼ぼうかな……。
「け、けどさ……」
「まだ何かあるの?」
若干ビクしつつ、再び会話に参加しようとする父親。
そして、恐ろしい笑みを浮かべて圧をかけている母親。
気のせいか、さっきよりも威力が増してるように見える。
「いや、この兎ずっと車道の方を見てるからさ。もしかして、車道が気になるのかなって思ったんだよ」
「ん、あら。確かにそうね」
父親が言うように、車のヘッドライトが気になるのか。
兎はじっと車道の方を見つめており、今にも飛び出しそうだった。
先程まで怒っていた母親も素に戻り、父親の言い分に納得しているみたい。
ということは、きっとこの兎は車道が好きなんだろうな。
……。
よし、決めた!
この兎の名前は……。
「シャドウ……」
「「ん?」」
ぼそっと呟いたからか、両親が不思議そうに聞き返してきた。
「この子は車道が好き……。だから、この兎の名前はシャドウにするよ」
なので、今回はビシッとやや大きめの声で答えた。
少し安直すぎる気もするが、まず覚えやすいし。
発音も、滑舌が悪い僕がきちんと呼べる点はいいと思う。
さてさて、二人の反応は如何に。
「そうか。うん、いい名前だな。なあ、しゅ……。か、母さん?」
よし。父親からはOKが出ました。
でも、なぜか母親のことを間違えて名前で呼びかけたのが気になる。
しかも、気のせいかもしれないけど、少し戸惑っているように見えるんだが……。
「ええ。母さんも、とてもいい名前だと思うわ。大切に育ててあげるのよ?」
なんと、母親からもOKが出たぞ。
二人が納得してくれたのなら大丈夫そうだな。
なぜか、『も』を強調しているように感じたけど……。
まあ、いっか。
「うん。大切に育てる」
斯して、シャドウという名の新たな家族が増えた。
シャドウは僕にとって掛け替えのない存在になった。
大切な家族で、心の支えのような存在。
所謂、シャドウは僕の中での一つの希望だった。
両親の目的通り、僕は弟のように可愛がって大切に育てた。
因みに、シャドウはオスだった。
それがわかった理由は……。
いや、やめておこう。
皆さんのご想像にお任せしますね。
◼️◻️◼️◻️
それからの僕は少し変わった。
前に比べて、積極的に話せるようになった。
……気でいた。
けど、無理だった。
やはり人間の本質というのは、そう簡単には変えられない。
一応努力はしたつもりだ。
クラスの人が盛り上がりそうな話題を模索したり。
誰かに便乗して、会話に参加しようとしたりと……。
まあ、こんな感じのことを試みたが。
残念ながらその努力は一つも実らなかった。
僕が出来たのはクラスの人と挨拶を交わす程度。
それが当時の僕が出来る精一杯のことだった。
案の定、彼女は愚か、友達の一人すら作ることができず。
ある日を境に、僕は陽キャを目指すことを完全に諦めてしまった。




