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希望と絶望を繋ぐ月世界  作者: 黒丸
第二章 陰から影へ(日月編:真と夜を繋ぐ月)
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第二十一話 真と夜の恩返し③

 どうしてこうなった……?


 えっと、色々と言いたいことはあるんだが。

 現在の状況を簡潔に説明すると、僕が依真に覆い被さっています。


 因みに、右手は依真の後頭部を支えており。

 左手は壁ドンならぬ、床ドンをしている状態です。


 互いの距離が今まで以上に接近しており。

 二人の頬が程よく赤く染まっていき、鼓動と共に吐息が大きくなっていた。


 一応、保健のために言っておくが、決して僕が依真を押し倒したわけではない。


 これは所謂、不可抗力というか……。

 正真正銘、事故によるものです。



 遡ること数分前――。


 僕たちは、家の中に入ってから直ぐに依真の部屋へ向かった。

 そして、依真の部屋に到着したら、依真に続いて一緒に中へと入った。


 入って真正面には、革製のアタッシュケースが置いてある机があり。

 右側には、ダブルベットとサイドテーブルがあった。


 左側には、壁半分程度のクローゼットがあり。

 右半分が開いていて、ハンガーパイプに様々な衣服が掛けられているのが見えた。


 とりあえず、依真の部屋のことを把握できたのだが……。

 依真が言っていたアクセサリーを作る工具が見当たらない。


 ということは、剥き出しの状態ではなく。

 何かのケースなどにしまっている可能性があるな。

 となれば、気になるのは机の上に置いてあるアタッシュケースだ。


 けど、クローゼットの中がハッキリ見えてはいないので。

 他にケースがあって、その中に工具が入っている可能性もある。


 だが、移動できないほど重いのであれば。

 直ぐに取り出せるように、作業がしやすい机の上に置いていた方がいいはず。


 でも、もし間違っていたら申し訳ないので……。


「もしかして、あのケース?」


 僕は右手人差し指でそのアタッシュケースを指し。

 念の為、依真に確認をとることにした。


「そう。このケースなんだけど……」


 依真がそう言いながらケースの方に足を踏み出すと。

 なぜか、その足元に一枚の紙が落ちており、スルリと足を滑らせてしまった。


 依真の両足が宙に浮き、体全体が右斜めに傾く。

 その姿を見ていた僕は目を点にし、瞬時に思考を働かせた。


 このままだと、確実に床へ倒れ込み。

 最悪の場合、怪我をする可能性がある。


 もし、依真が受け身を取れたら、避けられるかもしれないが。

 恐らく、今の依真は頭が真っ白になっているに違いない。


 そんな状態で、受け身を取れるとは考え難い。

 なら、今僕がやるべきなのはただ一つ……。


 依真が床に倒れないように支え、怪我をしないように助けることだ!


「依真!」


 僕は依真の名前を呼ぶと同時に。

 右手を前に突き出して、依真の左肩を掴むことに成功した。


 よし!

 あとは体幹を利用しつつ、依真の体を支えるのみ。


 なのだが……。


 その時、既に体勢が悪かったからだろう。

 左足に力を入れた瞬間、スルリと足を滑らせてしまった。


 当然、依真の体を支えきれず。

 そのまま一緒に床へ向かって倒れ込んだ。


 結果、現在のような状況なってしまいました……。


 正直、かなりヤバイ状況です。

 というのも、僕は今までこういう状況になったことがない。

 つまり、この後どんな行動を起こすのが正解なのかわからないのだ。


 かといって、このままの状態を維持するのにも限界がある。

 簡潔に言うと、身が保たないからだ。


 今の状況を打破するにはどうすればいいか考えていると。

 ふと、母親が発した言葉が脳裏に浮かんだ。


『依真ちゃんに変なことしちゃ駄目よ』


 あの時はキッパリと否定したが。

 今の状況って、間違いなく変なことに該当するよな。


 ごめん、母さん。

 変なことをする気はこれっぽっちもなかったんだけど。

 結果的に変なことをするような状況になっちゃいました。


 いや、違うんです。

 正確には、僕は別に手を出したわけではない。

 だから、今はギリッギリのところで止まっている状態だと思う。


 なら、僕が次に取る行動は決まっている。

 僕は決意を固め、その行動を実行することにした。


「い……」


「ご、ごめん! 怪我してない!?」


 依真が何かを言いかけたが、僕が発した謝罪の言葉が遮った。

 と同時に、何もしないことを証明するべく、依真から離れて距離を取った。


 すると、依真は上体を起こし。

 右手をギュッと握って胸辺りに当てていた。

 気のせいか、更に頬が赤くなったように見える。


「う、うん……。大丈夫。ありがとう、浸夜」


「いや……。なんか、色々とごめん……」


 結果的に依真に怪我をさせずに済んだのは良かったけど。

 その挙げ句、押し倒す形になってしまったのは罪悪感しかないです。


 でも、ここは気を取り直して。

 汚名返上の意味も込め、本題の作業に移りましょう。


「じゃあ、早速運び出すね」


 僕は、両手を前に突き出した。


影纏(えいてい)


 そう言葉を発すると、周囲に存在する影が両腕に集まっていき。

 徐々に分厚い装甲になり、影を纏うことができた。


 更に、その状態で……。


収影(しゅうえい)


 と言葉を発し、自分の影が円形状に変化した。

 これで、影の中へものを収納することが可能になった。


 準備が整ったところで、僕は机の上にあるケースを両手で掴み。

 影の中へゆっくりと落とすと、吸い込まれるように沈んでいった。

 その後、数秒で完全に姿が見えなくなり、外へ持ち出せる状態になりました。


 僕は『影纏(えいてい)』と『収影(しゅうえい)』を解除するイメージをし。

 両腕の影が消えていき、影の形が普通の形に戻っていった。


「凄いね! 流れるように華麗な作業だっだよ!」


 依真はそれらの能力と手際のいい作業に歓喜したらしく。

 即座に立ち上がって、声援と共に憧れるような眼差しを向けていた。


 よく見ると、先程まで赤らめていた頬は元の乳白色に戻っており。

 僕への接し方もいつも通りで、容赦なくグイグイと距離を詰めて来た。


「あ、ありがとう。とりあえず、これでアクセサリーを作る道具を持ち出す準備は整ったね」


「だね。じゃあ、また安全地帯に向かおっか」


「うん。でも、まだ回連さんが居る可能性もあるから、静かに移動しよう」


「了解で〜す」


 さっきは色々とやらかして、気まづい空気になってしまったが。

 さっきの行動で、なんとか汚名返上は成し遂げられたっぽいな。


 一時はどうなることかと思ったが……。

 何はともあれ、いつも通りになって本当に良かった。



◼️◻️◼️◻️



 その後、僕たちは依真の部屋から出て玄関に移動した。


 現在、依真が暖簾からひょこっと顔を出し。

 キョロキョロと周囲を見渡して回連さんが居ないか確認中です。


 すると……。


「大丈夫。パパの姿が見えないから、多分鍛冶場に居ると思う」


 そっと顔を引っ込めて、僕の左耳元で表の状況を囁いた。


「よし。じゃあ、今のうちに安全地帯に向かおう」


 僕がそう呟くと、依真がコクリと頷き。

 そろりそろりと忍足で出入り口に向かって歩き出した。


 順調に進み、出入り口を間近に迫っていた時。

 突如、右側から照明の光が反射し、僕の目を刺激した。


 反射的にその光の方向へ目線を向けると。

 その先には、一つのブレスレットがあった。


 そのブレスレットは、鋼のチェーンになっており。

 中心部には、黒色に煌めく宝石が組み込んであった。


 その宝石のあまりの美しさに目を奪われ、僕は咄嗟に足を止めてしまった。


「ん? どうかした……?」


 すると、依真が僕の異変に気付き。

 同じく足を止めて、こちらに振り向いて問い掛けてきた。


「ごめん、依真。先に行っててもらってもいい? 直ぐに追いつくからさ」


「わ、わかった。じゃあ、先に行ってるね」


「うん……」


 僕が発した言葉に多少なり疑問を抱きつつも。

 なんとか依真は了承してくれたらしく、一人で外へ出て行った。


 依真が出て行ったのを確認し、僕はそのブレスレットに近づいた。


 依真に先に言ってもらった理由は唯一つ。

 このブレスレットを、依真にプレゼントしようと思ったから。


 さっきも言ったが、僕は依真に何かプレゼントを贈りたい。

 ずっとそのことを考えていたからこそ、このブレスレットが適していると思った。


 なぜなら、このブレスレットを見た時の反応。

 それは、依真と初めて出会った時と全く同じだった。


 正直、これ以外は考えられない。

 なので、サプライズとして依真には内緒で購入したい。


 そのブレスレットの左側には、同じものが置けるくらいのスペースが空いていた。

 恐らく、元々同じ形のブレスレットがあったが、売れてしまったんだろう。


 売れてからどのくらい期間が空いているのかはわからないけど。

 まだ補充されていないってことは、もうこの一点しか残っていない可能性が高い。


 ブレスレットの前に置いてある値札を確認すると。

 金貨一枚と銀貨一枚(他:鉄貨千百枚・銅貨百十枚・銀貨十一枚)と書いてある。


 僕の所持金は銀貨十一枚。

 まるで合わせたかのように、ピッタリの金額を持っている。

 なら、このブレスレットが売れる前に、今ここで買うべきだろう。


 よし、決めた。

 直ぐに回連さんを呼んで来て、このブレスレットを買おう。


 そして、速攻で依真に追いつき、アクセサリーを作り終えた後。

 別れ際に、このブレスレットをプレゼントしてビックリさせよう。


 うん。完璧だ。

 これぞ、依真が言っていたサプライズってやつだ。


 そう考えながら、一人でに頷いていると。

 いきなり入り口の扉が開き、一人の鎧を身に纏った男性が入って来た。


 僕はその鎧男に目を取られてしまい、馬鹿みたいに口を開けて見つめた。


 で、でっけー……。 


 何センチ?

 いや、何メートルあるんだ?


 僕の顔がほぼ真上に向かないと見えないほどの大きさ。

 因みに、僕の身長は百十六センチ程度だ。


 恐らく、その三倍程度はあると思う。

 つまり、二メートルか三メートルだ。


 鎧は全体的に紅葉色に塗装されており。

 鎧の隙間から、黒色の革製をした衣服が見える。


 着ている鎧も分厚そうだが、そもそも手足自体が太い。

 僕の胴体が余裕で入る程度の大きさをしている。


 しかも、胴体部分は更に大きい。

 見た感じ、大人一人が入れる程度の大きさだ。


 肩甲は、蛙の手のようにな形になっており。

 肩幅が倍以上になるほどの大きさを誇っている。


 膝甲にも同じように蛙の手みたいなのが付いており。

 肩甲ほどではないが、まあまあの大きさに見える。


 顔は……、兜が邪魔でよく見えないが。

 赤色をした一つの丸い光がこちらを向いているのがわかった。


 人間の目というよりも、人工的な光のように見える。

 もっと正確にいうと、機械のようなものでできている気がする。


 僕が鎧男を観察していると。

 ガシャッガシャッと鎧同士がぶつかり合う独特な音を立てつつ。

 こちらに近づいて来たと思ったら、片膝を立ててスッとしゃがんだ。


 しゃがんでいても遥かに大きい。

 てか、なんで僕の前でしゃがんだんだ?

 もしかして、僕がまじまじと見すぎたせいだろうか……。


「えっと……。もしかして、回連さんの息子さん?」


 鎧男が発した言葉を聞いた途端。

 青ざめつつあった顔に再び血の気が戻った。


 あ〜、なるほど。

 つまり、僕を回連さんの息子さんだと思い。

 現在、このお店の手伝いをしていると勘違いしているってわけね。


 確かに、普通なら表に誰も居ないお店はないだろう。

 となれば、子供の僕が店番をしていると思うのは妥当な考えだ。


 けど、残念ながら違うので、普通に否定しておこう。


「いえ、違います。僕は、ごく普通のお客さん一号です」


 もちろん、お客さん番号なんて存在しません。

 僕が適当に言っただけです。


「お〜、そうか。では、僕はお客さん二号ということだね」


 納得してくれた上に、僕が適当に言ったお客さん番号に乗ってくれた。

 第一印象は怖い人だと思っていたけど、どうやらいい人みたいだな。


「あの。もしかして、回連さんに用があるんですか?」


「そうだよ。前に、武器のメンテナンスを依頼しててね。今日はその武器を受け取りに来たってわけ」


「そうなんですね」


 武器のメンテナンスを依頼しているのなら。

 頻繁に武器を使う職業に就いている可能性がある。


 考えられるのは、冒険者と警備隊のどちらかだが。

 警備隊の人なら、必ず軍服を着用しているはずだ。


 つまり、消去法で鎧男さんは恐らく冒険者だろう。

 てか、逆に冒険者以外でこんな鎧に身を包んでいる人が居るはずがない。


 まあ、それはいいとして……。


「もし良かったら、呼んできましょうか? 僕、回連さんと知り合いなので、家の中に入っても怪しまれませんし」


 十中八九、回連さんは鍛冶場に居ると思うけど。

 見た感じ、鎧男さんは体が大きすぎて家の中へは入れなさそうだ。


 なら、ここは回連さんと面識がある僕が適任だろう。

 それに、僕も回連さんを呼びに行こうと思っていたから丁度いいし。


「おお。じゃあ、お願いしようかな」


「と、その前に……。自己紹介がまだだったね。僕は、本胴硬楪(ほんどうこうよう)って言います。よろしく」


「あ、はい。僕は、月影浸夜って言います。よろしくお願いします。では、直ぐに呼んできますので、少し待っていて……」


 お互いの名前を認識できたところで。

 早速、回連さんを呼びに行こうと、暖簾側に右足を踏み出したのだが……。


「お、いらっしゃい。鎧の音がしたと思ったら、やはり本胴さんでしたか」


 タイミングよく暖簾を潜って回連さんが登場した。

 ということで、呼びに行く必要がなくなりました……。


 回連さんは何やら長い棒を左肩に担いでおり。

 その棒の先端には、分厚そうな布が巻かれていた。


「あ。どうも、回連さん。お邪魔してます。先月、メンテナンスに出していた武器を受け取りに参りました」


「そうだと思って、ちゃんと持って来ましたよ。依頼されていた研ぎ直しと刃こぼれの修繕はバッチリできてます。使ってみて何か違和感がありましたら、またこちらにお越し下さい。直ぐに調整しますので」


 回連さんは担いでいた棒を目の前で掲げながら。

 依頼内容を事細かく説明し、本胴さんに手渡していた。


「わかりました。ありがとうございます。では、これで失礼します」


「はい。お気を付けて」


 本胴さんは受け取ったその棒を右肩に担ぎ。

 回連さんに深々とお辞儀した後、そっとこちらに目線を向けた。


「では……。また会おう。月影浸夜くん」


「あ、はい……」


 そして、本胴さんはそう言ったのだが。

 僕はその言葉に少し違和感を感じつつ、一応返事をした。


 その後、本胴さんは颯爽と外へ出て行った。


 さっき本胴さんが口にした言葉。


『また会おう』


 この言葉から察するに、いずれまた会う機会が訪れるということを示唆している。


 普通に考えるなら、僕が回連さんと知り合いだとわかり。

 また会う機会があるだろうと思っての言葉だと受け取るのが妥当だが……。


 僕の考えすぎなのかもしれないけど、なぜか妙に嫌な予感がした。


「それで、浸夜くんはどうしたの? 依真の姿が見えないみたいだけど、一緒じゃないのかい?」


 僕が考え込んでいると、回連さんが不思議そうに聞いてきた。

 その途端、僕は瞬時に我に返ることができ、本来の目的を思い出した。


「あ、はい。少し気になったものがあったので、依真には先に戻ってもらいました」


「そういうことか。それで、何が気になるんだい?」


「あのブレスレットなんですけど……」


 僕は右手人差し指でブレスレットを差した。

 すると、回連さんは何かを察したかのように、目を見開き。

 パッと口を開けた後、口元を緩ませて、喜びを頬に浮かべていた。


「そうか……。もしかして、依真へのプレゼントかい?」


「そうですけど……。なんでわかったんですか?」


 いきなり飛んできた回連さんからの問いに驚き。

 考える間もなく、反射的に聞き返してしまった。


 まず、僕は一言もプレゼント用だと言っていないし。

 依真に何かをプレゼントしたいと思っていることは誰にも言ってない。

 それなのに、なんで回連さんは依真へのプレゼントだとわかったんだろう。


「いや、すまない。単純にそう思っただけだよ。直ぐに包んであげるから、少し待ってて」


「あ、はい」


 てことは、感でわかったということか。

 前に母親から、回連さんは鈍感だと聞いたことがあるが……。


 果たして、一体どこら辺が鈍感なのでしょうか。

 鈍感どころか、鋭感すぎる気がするんだけど。


 僕が事前に聞いていた情報と現実との矛盾に戸惑っていると。

 回連さんがアクリルケースを開け、中からブレスレットを取り出し。

 直ぐにレジカウンターテーブルへと移動し、そっと上に置いていた。


「じゃあ、金貨一枚と銀貨一枚になります」


「わかりました」


 僕はズボンの右ポケットから財布を取り出し。

 その財布の中から、銀貨十枚を掴んで回連さんに手渡した。


「銀貨十枚……。丁度頂きます」


 そして、回連さんは受け取った硬貨を確認し。

 早速、ブレスレットを木箱に入れて、黒色の包装紙で包んでくれていた。


「はい。落とさないようにね」


 回連さんは包装し終えると、両手で優しく掴んで差し出してくれた。


「ありがとうございます」


 僕はお礼を言いながら両手で受け取り。

 パーカーの右側にある内ポケットにしまった。


 よし。ブレスレットを買えたところで、急いで依真に追いつこう。

 本胴さんと話したりして、予想以上に時間が過ぎているみたいだし。


 ということで……。


「では、僕はこれで失礼します」


 僕は回連さんに一礼した後、足早に出入り口の扉へと向かった。


「うん……。浸夜くん」


「はい?」


 だが、なぜか回連さんに呼びかけられ。

 直ぐに足を止めて、そちらに振り振り向くと。

 そこには、悲しそうな瞳をこちらへ向けている回連さんの姿が目に映った。


「依真を、お願い……」


 回連さんは、何かを訴えているような表情をしており。

 呟いたその言葉は、今まで聞いたことがないほど重苦しい声だった。


 その表情と言葉から、唯ならぬ思いだということはすぐにわかったが。

 なんでそんなことを言うのかがよくわからず、僕は放心状態になっていた。


 けど、恐らく依真を無事に送り届けてくれということだろう。

 そう解釈した僕は、直ぐに自信に満ち溢れた若々しい笑顔を浮かべた。


「はい。任せて下さい」


 必ず、依真を無事に送り届けますので……。


 すると、僕の笑顔を見てホッとしたのか。

 回連さんは悲しそうな瞳を残しつつも、安心した笑みを浮かべていた。


 そんな回連さんの姿を最後に、僕は安全地帯へと向かった。

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