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希望と絶望を繋ぐ月世界  作者: 黒丸
第二章 陰から影へ(日月編:真と夜を繋ぐ月)
19/22

第十九話 真と夜の恩返し①

 陰歴二一〇二年十月十日。


 依真と出会ってから、約一ヶ月が経過した。

 それからというもの、僕は毎日のように依真と遊ぶようになった。


 最近の基本的な一日のルーティンを説明しよう。

 まず午前中は、能力訓練と剣術の鍛錬を裏庭で黙々と行っている。


 依真と遊ぶことが多くなったから。

 今まで避けてきた陽光を克服するのが必須になった。


 なので、最近は積極的に陽光を浴びながら。

 影の能力を使って、強度や威力などを極め中です。


 剣術については、鉄刀を振るだけだが。

 割と重みがあるので、それだけでも鍛錬になるはず。


 午後は、依真と一緒に安全地帯で遊ぶ。

 主に、無害魔獣と戯れたり、影の能力を披露している。


 依真は、なぜか影の能力について興味を抱いているらしく。

 よく影の能力を見せてほしいと笑顔でお願いしてくる。


 お陰で、より能力訓練に身が入っています。


 そういえば、回連さんは『風』の適性能力者らしい。

 使っているところは見たことないけど、依真からそう聞いた。


 それと、依真と出会えたからか。

 あれから一度もあの夢を見なくなった。


 なぜなのか、明確にはわからないけど。

 多分、依真と出会えたことで、第一関門を突破したってことだと思う。


 しかも、生まれて此の方、極度のコミュ障と人見知りだったのだが。

 依真と出会ってからというもの、徐々に克服できている気がする。


 前までは、お店の手伝いをしている時。

 お客さんに話し掛けられても、言葉に詰まって全然話せなかった。

 けど、最近はきちんと受け答えができるようになった。


 これは間違いなく、新たな人生を歩んでいる証拠だ。

 そして、歩むことができているのは、依真が居てくれているから。


 だからこそ、僕は断言する。

 今度こそ、絶対に今の人生を歩み続けて行くと……。


 そんな感じで、楽しい日々を過ごしていき。

 今日もいつものように依真と安全地帯で遊んでいたんだけど……。


 なぜか、依真の様子が少し変だ。

 浮かない表情というか。思い詰めた顔をしている。


 いつものように軽虎(カルトラ)を撫でてはいるが。

 さっきから息をするようにため息を吐いているし。

 明らかに何か悩み事か、気がかりなことがあるに違いない。


 なので、思い切って聞いてみた。


「どうしたの、依真。今日、元気がないように見えるけど……。何か悩み事?」


「うん……。実は、今日パパの誕生日なの。だから、アクセサリーを作ってプレゼントしたいんだけどね。そのアクセサリーを作る工具が意外と重いから、どうやって持ち出そうか悩んでるの」


 依真は俯きながら、抱いていた思いを話してくれた。

 しかも、見た目だけではなく、発した声も全然元気がなかった。


「なるほど。今日が回連さんの……」


 そのことで悩んでたのか。

 確かに、依真のように日頃の感謝を込めてプレゼントを送る人も少なくない。


 依真はアクセサリーを作るのが趣味で、よく回連さんに教わりながら作っている。

 だから、プレゼントとしてアクセサリーを送るのは、依真らしくていい考えだ。


 でも、なんでアクセサリーを作る工具を持ち出す必要があるんだろう?

 普通に家で作った方が作業も捗りそうに感じるんだけど……。


「ねえ、浸夜。何かいい方法はないかな? 例えば……。パパに見つからずに工具を外に持ち出す能力とかさ」


「ん? あ〜。あるよ」


 一応あるのはある。

 まあ、あまり使ったことないけどね。


「だよね……。流石にそんな能力な……。え! あるの!? 本当に!?」


 すると、依真は耳を疑ったかのように、バッと顔を上げ。

 つぶらな瞳を向けつつ、いつものみたいにグイグイ近づいて来た。


「う、うん。影の中に物を仕舞い込める能力があるんだよ。その能力を使えば、どんなに大きな物でも簡単に外へ持ち運べれると思う」


 その能力とは、『収影(しゅうえい)』と『出影(しゅつえい)』。

 戦闘向きではないが、武器などの重い荷物を運ぶのに便利な能力だ。

 

 『収影』は、影の中に物などを収納することができ。

 『出影』は、影の中にある物などを取り出すことができる能力。

 この二つの能力は、二つで一つ的な感じで使う。


 というのも、『収影』で影の中に物などを収納し。

 再度『収影』を使って、影の中にある物を取り出すことも可能だが。

 それだと対象の物を取り出すのに少々手間が掛かってしまう。


 対して、『出影』は取り出したい対象の物を頭の中で思い浮かべれば。

 強制的に影から出てくるので、時間的にも凄く効率がいい。


 そういう理由から、『収影』と『出影』は両方ないと成り立たないのだ。


 とりあえず、アクセサリーを作る工具の大きさはわからないが。

 この二つの能力を使えば、回連さんに見つからずに外へ持ち出すことができる。


「そんな便利な能力が使えるなんて……。浸夜って凄いんだね」


 余程嬉しいのか、依真の表情にはいつも通りの可愛い笑顔が浮かんでいた。


「まあ、影の能力は汎用性が高いからね。他の能力だとできないことも、色々できたりするんだよ」


 恐らく、影の能力以外に『収影(しゅうえい)』や『出影(しゅつえい)』みたいな能力は存在しない。

 少なくとも、癒と風の能力にはそんな能力はないらしい。

 つまり、これも『補影(ほえい)』と同様に影の能力限定みたいです。


 ではでは……。


「ということで、一旦空陰鍛冶屋に戻ろう」


「そうだね。この時間帯なら、パパはいつも鍛冶場に居るはずだから、早く戻って持ち出そう」


 二人同時に立ち上がり、空陰鍛冶屋に向かって歩き出した。

 依真はいつものように僕の右側を歩き、ギュッと手を繋いでくれています。


「ていうか、なんで回連さんに見つかっちゃ駄目なの? 事前に伝えておいた方が何かと都合が良かったんじゃない?」


「それはね……。できれば、サプライズで驚かせたいからだよ。パパはどっちの方が嬉しいのかわからないけど、私はそっちの方が嬉しいって思うの」


「そうなんだ」


 なるほどね〜。

 そういうことなら、家で作るのはリスクが高いな。

 作る音などで回連さんに見つかるかもしれないし。


 だから回連さんに見つからないように外へ持ち出したかったのか。

 確かに、僕も依真と同じでサプライズの方が嬉しいって思う。


 ……。

 

 そういえば、昔そんな童話があったな……。

 誰にも見つからないように、誰かに向けて何かを作る話。


 そうだ。

 これは……。


「まるで、鶴の恩返しだね」


「……うん。そうだね」


 僕がそう言うと、依真は口を開けて一時停止し。

 直ぐにニッコリと笑みを浮かべて返答してくれた。


「あ、そうだ。お礼と言ってはなんだけど、浸夜も一緒に作らない?」


「え? 僕も? いいの?」


「もちろん。例え誕生日じゃなくても、日頃の感謝を伝えるっていう目的で贈るのもいいと思うよ」


 日頃の感謝か……。

 そういえば、今まで誰にも贈り物とかしたことなかったな。


 となれば、真っ先に思い浮かぶのは、母親だ。

 母親には、いつも感謝しても仕切れないほどの恩を感じている。


 なら、依真が言うように今までの恩を返そう。

 それに、せっかくの依真からの誘いを断るのは申し訳ない。


「じゃあ、お言葉に甘えて……。僕も作ってみるよ。ありがとう、依真」


「こちらこそだよ。浸夜には、いつも助けてもらってばかりで、私は何も返せなかったから……」


「そんなことないよ。僕が今ここに居るのは、依真に救ってもらったからなんだ……。だから、何も返せないなんて思わなくていいんだよ……」


 あの日、依真と初めて出会った時。

 依真が手を差し伸べてくれたから……。

 救ってもらったから、僕は今ここに居る。


 だから、いつか依真にも恩返しをしたいな。

 もちろん、サプライズでね。


 僕がそう考えていると……。


「救ってもらったのは、私の方だよ……」


 聞こえないほど小さな声で依真がボソッと呟いていた。

 けど、考え事をしていたこともあり、よく聞こえなかった。


「ん? 何か言った?」


「ううん。なんでもな〜い」


「そ、そう? じゃあ、急いで戻ろっか」


「だね。ダッシュで戻ろう」


「え? 走るの? そこまでしなくても……」


 確かに急いで戻ろうとは言ったが。

 できれば能力を使うためにも、極力体力を消耗したくないんだよな。


「よし。行くよ〜」


 けど、残念ながら依真は走る気満々らしい。

 てか、反応的に僕の言葉が聞こえてないみたいですね。


「あ、はい。でも、しんどくなったら言ってね。直ぐに止まるから」


「了解〜」


 ということで、二人揃って走り出した。

 因みに、危ないので手は離した状態です。

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