表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
希望と絶望を繋ぐ月世界  作者: 黒丸
第二章 陰から影へ(日月編:真と夜を繋ぐ月)
17/22

第十七話 真と夜の触れ合い①

 陰歴二一〇二年九月七日。


 今日はとても大事な日。

 なぜなら、昨日依真と約束した安全地帯に行くからだ。


 昨日は色々なことが一気にあったからか。

 魂が抜けたようにぐっすり眠ってしまった。


 けど、約十時間ぶっ通しで寝ることができた為。

 この上ない程、とても目覚めがいい朝を迎えることができた。


 故に、体調は万全な状態。

 尚且つ、天候はやや晴れ間が見え始めてはいるが。

 外出するには、ギリギリ大丈夫なくらいの暑さだった。


 つまり、今日は絶好の外出日和です。

 まるで天候までもが僕に味方しているかのように感じる。


 朝食を食べ終え、顔を洗って準備万端。

 今直ぐにでも外へ駆け出しそうなほどウキウキです。


 では、早速空陰武具店へ向かおう。

 女の子を待たせてしまっては申し訳ないからね。


 と、その前に……。


 一応、母親に許可を取ろう。

 万が一、許可が降りなければ泣き喚こう。


 僕は直ぐにリビングで寛いでいた母親の元へ向かった。


「母さん。今日、外に遊んで来てもいい?」


「ええ。いいわよ。依真ちゃんによろしくね」


「わかった」


 難なく許可が下りた。

 では、いざ依真のところへ……。


 あれ?

 ちょっと待てよ。


「え、依真と遊ぶこと話したっけ?」


「ううん。でも、多分そうなんだろうな〜って思っただけよ」


「そ、そっか……」


 回答になってないと思うのは気のせいだろうか。

 てか、そもそも依真と友達になったこと話していないはずなんだが……。


 と、とりあえず、許可が下りたから良しとしようか。

 なぜか母親はニコニコして嬉しそうだし、ご機嫌なのは確かだ。


「じゃあ、行ってきます」


「うん。気を付けてね」


 ということで、僕はあまり深く考えず。

 依真が待っている空陰武具店へと向かった。



◼️◻️◼️◻️



 歩くこと約三十分――。


 第一目的地である空陰武具店が見えてくると。

 入り口付近に立っている依真の姿が目に入った。


「あ、浸夜〜! こんにちわ!」


「こ、こんにちわ」


 そのまま依真に近づいていくと。

 こちらに気づいたらしく、依真がハッとした顔で元気よく右手を振ってくれた。

 なので、僕も右手で振り返しながら、足早で依真の元に駆け寄った。


「ごめん。もしかして、ずっと外で待ってた?」


 最初に思ったことは、依真への心配だった。

 今日は快晴ではないが、暑いことに変わりはない。


 見た感じ、暑さにやられている様子はないが。

 もしも、ずっと外で待ってくれていたんだとしたら申し訳なさすぎる。


「ううん。ついさっき外に出たばかりだから、全然待ってないよ」


「そっか。なら良かったよ」


 依真は汗一つかいていない。

 なら、心配させないように嘘をついているわけじゃなさそうだな。


「じゃあ、行こっか」


「うん。レッツゴ〜」


 斯して、第一目的だった依真との合流を果たし。

 一緒に第二の目的地である安全地帯へと向かった。


 相も変わらず、依真の距離はとても近く。

 ドラムが叩けそうなほど、心臓の鼓動が大きくなっていった。



◼️◻️◼️◻️



 またまた歩くこと約二十分――。


 突如、前方に木々や緑草が生い茂っている野原が出現した。

 その広さは、僕の想像を遥かに超えるほどの広大な場所だった。


「よし、到着。ここが安全地帯だよ」


「お〜、凄い広いね」


 広大すぎて語彙力を失ってしまい、子供みたいな感想が口から飛び出た。


「でしょ〜。迷子になっちゃいそうなほど広いから気をつけようね」


「けど、肝心の無害魔獣が……、あ! 居た居た! 浸夜。あっちに行ってみようよ」


「う、うん」


 依真がキョロキョロと周囲を見渡した後。

 何かを発見したらしく、僕の右手を握って走り出した。


 昨日のことがあったからか。

 手を握られることを普通に感じ初め、徐々に慣れつつあった。


 当然、それでも恥ずかしいのは変わらないので。

 昨日と同じように頬が真っ赤に染まっていきました。


 少し先の場所まで移動すると。

 そこには動物みたいな生き物たちが無数に存在していた。


「ほら、浸夜。あそこに居るのが無害魔獣だよ」


 依真は右手人差し指で動物みたいな生き物たちが居る方向を指し示し。

 顔全体に無邪気さを剥き出しにしながら、こちらを見つめてきた。


「あ、本当だね。ど……。む、無害魔獣がいっぱいだ」


 依真の子供っぽい反応を目の当たりにし。

 その溢れ出ている可愛さにやられ、つい日世界サンワールドの言い方を口にしそうになった。


 あ、危なかったー。

 危うく、動物と言うところだったわ。


 そんなことを言ってもキョトンッとされるだけだ。

 というのも、この月世界(ムーンワールド)には動物という名前は存在しない。

 でも、限りなく動物に近しい生き物だということは確かだ。


 無害魔獣は全十六種類存在し。

 茶鼠(ケネズミ)早牛(ハヤウシ)軽虎(カルトラ)木兎(キウサギ)三辰(サンシン)重蛇(オモヘビ)寝馬(ネルウマ)草羊(クサヒツジ)堅猿(カタザル)麝鶏(ジャトリ)

 針猪(ハリイノシシ)祭犬(マツリイヌ)化狸(バケダヌキ)祈熊(イノリクマ)隠鷹(カクレタカ)屯豚(トントン)、と言う名前だ。


 各無害魔獣の名前を知った時から薄々感じていたが。

 見た目は、日世界(サンワールド)で言う動物そのものだった。


 無害魔獣は、ほとんどが食用という扱いになっているから。

 恐らく、無害魔獣=動物っていう考え方で合っているとは思う。


 けど、三辰(サンシン)化狸(バケダヌキ)隠鷹(カクレタカ)は、討伐すること自体禁止されており。

 軽虎(カルトラ)重蛇(オモヘビ)堅猿(カタザル)は、非常時のみ食用にすることを許可されているらしい。


 ということで、各無害魔獣の特徴を説明しよう。


 芥鼠(ケネズミ)は、灰色の毛並みをした子鼠。

 僕の両手にスッポリ収まりそうなほど小さい。


 早牛(ハヤウシ)は、模様が川のようになっている牛。

 落ち着きがないのか、常に走っている。


 軽虎(カルトラ)は、黄色と黒色のしましま模様をした虎。

 鼻が花になっていて、身軽そうにスタスタと歩いている。


 木兎(キウサギ)は、白色の毛並みに赤色の瞳をした兎。

 ほとんどの木兎(キウサギ)が木の天辺まで登り、空を見上げている。


 三辰(サンシン)は、尾が合体している三匹の龍。

 右の龍は白色で赤色の瞳で、真ん中の龍は黒色で紫色の瞳。

 左の龍は灰色で赤色の瞳だが、右目を常に瞑っているから分からない。


 常に空中に浮いており、泳ぐように飛び回っている。

 他の無害魔獣は複数存在しているが、三辰(サンシン)は一匹しか存在しないみたいだ。


 重蛇(オモヘビ)は、緑色をした蛇。

 尾の先に花が咲いており、のそのそと動いている。


 寝馬(ネルウマ)は、白色の毛並みをした馬。

 日陰でぐっすり寝ていて、起きている寝馬(ネルウマ)は見当たらない。


 草羊(クサヒツジ)は、白色の毛並みをした羊。

 常に草だけを食べており、他の無害動物とも戯れている。


 堅猿(カタザル)は、茶色の毛並みをした猿。

 体が堅いのか、角張った動きをしている。


 麝鶏(ジャトリ)は、白色か黒色の羽をした鶏。

 蝶のように飛翔して、少しの時間だけ空中に浮いている。


 針猪(ハリイノシシ)は、茶色の毛並みをした猪。

 体から無数の針が生えており、ハリネズミ+猪みたいな見た目をしている。


 祭犬(マツリイヌ)は、黒色の毛並みをした犬。

 二足歩行でも歩けるらしく、たまに阿波踊りを踊っている。


 化狸(バケダヌキ)は、茶色と黒色の毛並みをした狸。

 常に他の無害魔獣に化けているらしく、狸の姿をしている時はほぼない。


 主に、針猪(ハリイノシシ)祭犬(マツリイヌ)に化けているが。

 必ず尻尾が丸見えなので、一目で見分けられる。


 祈熊(イノリクマ)は、黒色か白色の毛並みをした熊。

 胡座をかき、両手を合わせて何かに祈っているポーズをしている。

 因みに、黒色がオスで、白色がメスらしい。


 隠鷹(カクレタカ)は、茶色と黒色の毛並みをした鷹。

 猫のように爪を指の内側に隠し、常に飛び回っている。


 屯豚(トントン)は、桃色の豚。

 必ず、二〜九体で固まって行動している。


 以上が、今まで知っていた内容と今見た情報だ。


 見た目は動物だが、行動は少し異なっているように見える。

 そこら辺は、魔獣という方が正しいのかもしれないな。


 けど、油断して動物と口にしてしまうかもしれない。

 念の為、頭の中で動物を無害魔獣に変換しておこう。


 そんな感じで無害魔獣の分析をしていると……。

 気付かないうちに依真に引っ張られて、日陰ができた木の下へ移動していた。


 その木には、一匹の木兎(キウサギ)がしがみついていた。

 その木兎(キウサギ)を依真がそっと抱き抱え、右手で頭を優しく撫でながら座った。


 依真の手慣れた手つきの効果は絶大らしく。

 木兎(キウサギ)は、気持ち良さそうに両目を瞑り、幸せそうな表情を浮かべていた。


 僕も便乗して依真の右隣に座り、気持ちよさそうな木兎(キウサギ)を見つめた。

 そうしていると、急にたわいもない疑問が脳裏に浮かび上がってきた。


木兎(キウサギ)、好きなの……?」


「うん。昔は、あまり好きじゃなかったんだけどね。ある日を境に、すっごく好きになったの」


「そっか……」


 なぜそんなことを聞いたのかというと。

 依真が、どことなく懐かしそうな表情を浮かべていたから。


 昔というのがいつのことを指しているのかはわからないが。

 とりあえず、今は木兎(キウサギ)のことが好きだということだな。


 そう思うと、なぜか自分のことのように嬉しかった。

 そのまま依真の右手に目を向けると、僕はあることに気がついた。


「あのさ。今気づいたんだけど……。依真って、もしかして龍人種?」


 依真の右手の甲には、龍人種の特徴の一つである。

 六角形の鱗みたいな模様が浮き出ていた。


「そうだよ。お……。パパは、練人種らしいんだけど、お母さんは龍人種だったらしくてね。パパ曰く、私は、お母さんの血を色濃く受け継いでいるらしいの」


 なるほど。

 回連さんは練人種なのか。

 そして、お母さんが龍人種ね。


 ていうか、多分『お父さん』って言おうとしたんだろうけど。

 瞬時に『パパ』って言い換えていた。


 それは別に不思議ではないんだけど。

 父親である回連さんのことは、『パパ』って呼ぶのに。

 母親のことは、『お母さん』って呼ぶのはなんでなんだろう……。


 それに、依真の家に入った時に疑問を抱いたんだけど。

 僕は一度も依真のお母さんの姿を見なかった。


 更に、さっき言った言葉。


『お母さんは龍人種だったらしくてね』


 なぜか過去形だった。

 まるで、本人じゃない他の誰かから聞いたような言い方だ。


 もしかして、依真のお母さんって……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ