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希望と絶望を繋ぐ月世界  作者: 黒丸
第二章 陰から影へ(日月編:真と夜を繋ぐ月)
10/22

第十話 プレゼントの相手

 お店を出たと同時に、足を止めたくなるような暑気が全身を襲った。


 流石に暑すぎると疑問に思い、空を見上げると。

 雲一つない青空の中、燦々と輝いている太陽が顔を出していた。


 少しでもいいので陰を作ってくれと願うも。

 思いは叶わず、容赦なく陽光が地面を照らして陽炎が発生している。


 きっと地面は高温になっているに違いない。

 多分、地面に牛肉を置いたら、ステーキが焼けると思う。

 

 そんな地獄の暑さの中を歩いている多種多様な人たち。

 そして、深くフードを被り、下を向いて歩く一人の子供が居た。


 そう。それが僕です。

 両手で大きな箱を抱え、母親に書いてもらった紙を親指で押さえていた。


 フードを被る理由は二つ。


 一つは、少しでも暑さを防ぐため。

 もう一つは、他人の目線を感じたくないため。ここ重要。


 ――だが、無理だった。


 フードでも緩和されないほどの陽光に照らされ続けている。


 更に、両手に大きな箱を抱えているため。

 強制的に周りの視線を集めてしまっていた。

 しかも、箱は白色の包装には大きな青色のリボンが付いている。


 確かに、これは目を引くよね……。

 多分、僕が周りの人だったら、二度見した後、ガン見すると思う。


 てか、今疑問に思ったんだが、なんでこんな目立つ包装なの……?

 プレゼントとは聞いたけどさ。なぜか、めっちゃ大きいし。


 恐らく周りの人たちは、多分こう思っているであろう。

 小さな子供が、想いを寄せる相手にプレゼントを渡すのだと……。


 だって、さっきから周りの人たちがニヤニヤしてこっちを見てるんだよ?

 こっちは恥ずかしさで、頬が林檎みたいに赤くなって爆発しそうなのにさ。

 本当に人見知りには厳しいって。更にいえば、僕は陰キャなんだぞ。


 確かに、僕は陰キャを脱したい。

 そう願ったことはあるし、今でもその気持ちはある。


 けど、今ほど日陰者で居たいと思ったことはない。

 それほどの視線を感じ、早歩きで進み続けた。


 そういえば、さっき多種多様な人たちと言ったが。

 この月世界(ムーンワールド)には、複数の種族が存在する。


 それぞれの種族名は……。

 練人種・剛人種・森人種・霊人種・天人種・龍人種・獣人種・鬼人種という。


 因みに、僕は練人種。

 母親と塞養さんも同じく練人種で、父親は龍人種だったらしい。


 胃種族同士が結ばれると、その子供は必ずどちらかの種族になる。

 けど、特に決まりなどはないので、どちらの種族になるのかはランダムで決まる。


 練人種・剛人種・森人種・霊人種・天人種は、普通の人間と大差ない姿だが。

 森人種・獣人種・龍人種・鬼人種は、少し見た目に違いがある。


 森人種は、長く尖った耳をしている。

 日世界(サンワールド)でいうところのエルフみたいな種族だ。


 獣人種は、耳の位置が頭の上辺りにあり、後ろに尻尾が生えているらしい。

 けど、実際に獣人種の人を見たことがないので、定かではない。


 龍人種は、手の甲に六角形の鱗みたいな模様が浮き出ている。

 触ったことはないけど、意外と硬いと聞いたことがある。


 鬼人種は、頭に光沢がある角が生えている。

 女性は白色で、男性は黒色の角と決まっており、光沢の色は人それぞれ異なる。


 この四種族は見た目だけで判別が可能ということ。

 だが、見た目以外でもなんの種族なのかを知る方法がある。


 種族毎に明確な違いがあるのは中身だ。

 各種族には、元々備わっている二つの能力が存在する。


 一つは、『固有能力』。

 通常なら使用できない特別な能力のこと。

 この能力は、自分が使いたいと思った時に使用可能。


 もう一つは、『人体能力』。

 どこかしらの身体機能が優れている能力のこと。

 この能力は、強制的に常時発動している。


 つまり、一人に適性能力・固有能力・人体能力。

 この三つの能力が備わっているということだ。


 違いを説明すると……。

 適性能力は、魔力を利用することで使用可能。

 魔力量にもよるが、使用していけば繊細な操作も可能になる。


 固有能力は、魔力を利用するわけではなく。

 使用すればするほど、持続時間や指定範囲が増えていく。


 人体能力は、固有能力と同じく魔力を利用せず使うことができる。

 でも、強化できるかどうかは種族によって異なる。


 練人種の固有能力は、『練眼(れんがん)』。

 人体能力は、『練度神速(れんどしんそく)』だ。


 練眼は、視力を自由調整することができる能力。

 近くの物、遠くの物を正確に認識できる為、近遠視とも呼ばれている。


 練度神速は、身体機能・体力・適性能力の熟練度が速くなる能力。

 けど、他の種族に備わってる人体能力以上の身体機能を身につけることは不可能。


 以上が、僕の知っている各種族のことだ。

 他の種族に備わっている固有能力・人体能力はわからない。


 そんな感じで各種族のことを説明しながら。

 早足で歩いていると、遂に目的地である空陰武具店に到着しました。


 外壁はざらついて、青色に塗装されている一階建ての建物。 

 出入り口の上に巨大な看板があり、『空陰武具店』と書いてあった。


 屋根は陶器瓦を使っており、和型で黒色のものみたい。

 屋根の上には、煙突が一つあり、黙々と煙が噴き出ていた。


 正直、無事に辿り着けるか心配だったが。

 卯月衣服店と同じく、看板に店名が書かれていたから直ぐにわかった。


 てか、外観だけで立派な感じが伝わってくる建物だ。

 恐らく、さぞ立派な武器や防具が売られているに違いない。


 だが、少し違和感があった。

 というのも、なぜか卯月衣服店とよく似ている。


 卯月衣服店の外観はというと。

 外壁はざらついて、白色に塗装されている一階建ての建物。

 屋根は陶器瓦を使っており、和型で赤色のものだ。

 煙突はないが、大きさや形は同じに見える。


 多分、偶然だと思うけど……。

 まるで、照らし合わせたかのようにそっくりだな。


 まあ、それは置いといて、早速お店の中に入ろう。

 そして、早くこのプレゼントを渡して家へ帰還しよう。


 僕は、母親に書いてもらった紙を右ポケットへしまい。

 プレゼントを左腕で抱え、不審者に間違われないようにフードを脱いだ。


 次に深呼吸を試みて、心の準備も完了した。

 では、入る準備を完全に整えたところで……。


 いざ!

 初めてのお使い先、空陰鍛冶屋へ!


 だが、威勢がいいのは頭の中でのみ。

 実際は、緊張で心臓が飛び出しそうなほどドキドキが止まらなかった。


 僕は緊張で震える右手をドアノブへ。

 扉を開いて入店すると同時に、一言……。


「す、すいません……」


 その声は自分でも驚くほど小さく。

 耳を澄まさなければ聞き取れないほどだった。


 けど、今の僕はそのことに気を回す余裕はなく。

 ブルブルと緊張で震えながら中に入り、周囲を見渡した。


 だが……。


「えっと……。って、誰も居ない……?」


 おいおい。お店なのに誰も居ないなんて、不用心すぎやしないか。

 そう不思議に思いつつも、心のどこかでホッと安堵している自分が居た。


 とりあえず、店の中を見て回ろう。

 誰か出てくるかもしれないし。


 ということで、お店の中を見渡すと。

 入って正面の壁側に、レジカウンターテーブルと椅子があり。

 そのテーブルの上には、レジスターとパソコンが設置されていた。


 その壁の右側には、暖簾が掛かった入り口がある。

 恐らく、その入り口から家の中に入れるんだと思う。


 右側には、壁に掛けられた様々な武器があり。

 片手剣・両手剣・短剣・双剣・槍・斧・鎌・刀・片手棍・弓・矢などがあった。


 左側には、木製の棚とアクリルケースがあり、丁度半分に分かれていた。

 棚に飾られている防具は、盾・兜・鎧・小手などだった。


 アクリルケースに並べられたアクセサリーは数が多く。

 ピアス・指輪・ブレスレット・カチューシャ・ブローチ。

 ネックレス・ループタイなどがあった。


「おお〜」


 それらを見て、自然と感動の言葉が漏れた。


 これは緊張から出た言葉ではない。

 というより、いつの間にか緊張が消えていた。


 多分、それ以上に唆る物たちを目の前にして、感情が変化したのだろう。

 だとしたら、初めてのお使いがこのお店で良かった気がするな。

 ここには、僕が一番興味を引く物が全て揃っているし。


 僕はそのまま武器や防具などを凝視しつつ。

 近くに立て掛けてある値段の札をチラ見した。


 その結果、高額すぎて言葉を発せないほど驚き。

 咄嗟に両手で顔を覆い、現実から目を逸らそうと試みた。


 てか、そもそも僕が持てそうな武器は見当たらなかった。

 少なくとも、九歳くらいにならないと使えないような武器や防具ばかり。


 なら、今は買うことは考えず、どんなものがあるのか。

 自分ならどの武器を使いたいのかということだけに重点を置き。

 金額のことは気にせずに、武器や防具を見て考えることにしよう。


 すると、どこからか草履か何かを引きずっているような音が響き渡り。

 その音が徐々に大きくなりつつ、こちらへ近づいていた。


 十中八九、このお店の人だと思うが……。

 なんと、僕は武器や防具に夢中で気付いてない。

 それほどの集中力を発揮していた。


「お、いらっしゃい」


 一人の男性が暖簾をくぐり、僕に近づきながら挨拶を口にしていた。

 僕はその声を聞いて、一瞬で我に返り、やっとその人物の存在に気づいた。


「ひゃっ!」


 全く気づいていなかったからだろう。

 驚きすぎて、今まで発したことがないような変な声が出た。


 やべ。はっず……。

 女の子みたいな声を出してしまった。


「あ、ごめんごめん。驚かせるつもりはなかったんだけど……。大丈夫?」


 その男性は僕の声に驚いたらしく、寸前で足を止め。

 右手を後頭部を当てて申し訳なさそうに謝罪していた。


「あ、はい。大丈夫です。あの、空陰武具店の方ですか?」


 僕は気を取り直し、念の為、その男性に確認を取ることにした。

 多分このお店の人だと思うけど、もし間違っていたら元も子もない。


「うん。そうだよ。俺は、ここの店長をしてる、輪陰回連(わかげかいれん)。といっても、従業員は俺だけなんだけどね。あはははっ」


「そうなんですね」


 その男性の名前は、輪陰回連。

 黒色の髪に、緑色の瞳をしたイケメン男性だった。


 頭に白色のタオルを巻いており。

 白色のノーカラーシャツの上に紺色の甚平を着て、草履を履いていた。


 ぱっと見た感じと、話し方から優しそうな印象を感じた。

 母親が言っていた優しい男性は、この人で間違いなさそうだ。


 となれば、本題に入るとしよう。


「あの、僕は月影浸夜っていいます。今日は母の月影璃映から、こちらにプレゼントを渡すように言付かっており、お届けに参りました」


 僕は丁寧に自己紹介をした後。

 今日ここに来た目的を説明し、持ってるプレゼントを差し出した。


 少々子供らしくない気がするけど、今は気にする余裕がない。

 徐々にではあるが、さっきの緊張が蘇りつつあるのだ。


 すると、輪陰さんは口を開けて、目を丸くしており。

 何かどんでもないものでも見たいような表情を浮かべていた。


 間違いなく驚いているみたいだな。

 なんでなのかはわからないけど……。


「月影……。そうか、君が……」


「ありがとう。きっと、あの子も喜ぶよ」


 先程の明るい声は消え、やや暗い声に変化した。

 と同時に、僕に両手を差し出し、プレゼントを受け取った。


 よく考えたら、驚くのも無理はないのかもしれない。

 プレゼントを送るくらいだから、母親との仲も良好のはず。

 となれば、僕が長い間覚醒しなかったことも知っていた可能性がある。


 ――ん?


 待てよ……。


「あの子……?」


「ん、あれ? もしかして、あ母さんから何も聞いてないのかい?」


「はい、特には何も。そのプレゼントを空陰武具店に居る優しい男性に渡すように言われただけですね」


「はははっ! そうか、優しい男性か」


「まあ、悪い気はしないが……。そのプレゼントは、恐らく一人の女の子に向けて送ったものだと思うよ」


 輪陰さんは嬉しそうに笑った後、プレゼントの包装を丁寧に剥がし。

 白色の箱を開いて中身を確認していたので、僕も便乗して目を向けると。

 パーカー・スカート・シャツ・アウター・ズボンなどの衣服が入っていた。


 全て女性もので、子供用だった。

 その中で僕が目を引いたのは、白色のフード付きポンチョだった。

 気のせいか、このポンチョには見覚えがある気がする……。


 白色のフード付きポンチョ……。

 そういえば、夢で出会った美女も同じものを着ていたな。


 恐らく似ているだけだとは思うが。

 丁度、今日あの夢を見たからか、何かの予兆のようにも感じる。

 けど、とりあえず誰に向けてのプレゼントなのかはわかった。


「輪陰さんが言うように、女の子に向けての物みたいですね」


 母親から受けたお使いは無事に完了したし。

 いい感じにこの場を納めて、速攻で家に帰ろう。

 ポンチョのことは気になるが、後で考えればいいや。


「うん……。あ、そうだ。浸夜くん、この後って時間あるかな?」


「え? あ、はい。大丈夫です……」


 唐突に飛んできた輪陰さんからの問い掛け。

 それに対して少し戸惑いつつも、ちゃんと返答する僕。

 気のせいだろうか。なんか嫌な予感がするんだが……。


「そっか。じゃあ、次は俺からのお使いを頼まれてくれないかい?」


 嫌な予感が見事に的中したらしく、輪陰さんが新たなお使いを要求してきた。


「え。あー……」


 当然、僕は返答に困った。

 輪陰さんとは僕のことを知っているっぽいが。

 残念ながら、僕の中では今日初めて会った優しい男性という印象しかない。


 つまり、まだ僕は輪陰さんのことをよく知らないんだ。

 だから、輪陰さんには申し訳ないんだけど、まだ完全に信頼できていない。


 それに、もし僕が子供だからって理由で頼んでいるのなら。

 そんな簡単には引き受けられないし、僕のプライドが許さない。


 そして、今は一刻も早く帰りたい。

 あのポンチョのことも気になるし……。


 よし、答えは出た。

 輪陰さんには悪いけど、ここはきっぱりと断ろう。


「もちろん、報酬は弾むよ」


「わかりました。引き受けましょう」


 追加でご褒美の言葉を口にする輪陰さん。

 結果、即答して引き受けました。


 先程の決断は一体どこへ……?

 そう疑問に思うほど、子供というのは正直な生き物だ。


 できれば帰りたかったけど、致し方ない。

 報酬を貰えるのなら、喜んで引き受けましょう。


「そ、即答だね……」


「うん、素直でいいよ。子供はそうでなくっちゃ」


 輪陰さんは、少し動揺していたが。

 最終的に子供らしさを褒めてくれた。


「はい。それで、どこに行ったらいいですか?」


「ここから徒歩二十分くらいの場所にある、『鷹爪(たかつめ)宝魔晶店』っていうお店に行ってほしいんだ」


「それで、そのお店……。または、近くにいる女の子を手伝って、ここまで戻って来てほしい。お願いできるかな?」


「わかりました」


 意外と簡単なお使いみたいだな。

 母親のお使いの後だからか、余計にそう思ってしまう。



◼️◻️◼️◻️



 一方その頃――。


 卯月衣服屋に居る母親と塞養さんはというと……。


「はっくしゅん!」


 母親は鼻がムズムズしたのか。

 突然くしゃみをし、咄嗟に両手で鼻と口を塞いだ。


「大丈夫ですか、璃映さん。風邪ですか?」


「う〜ん。そんな感じはしないのよね。誰かが噂でもしてるのかしら……」


「あははっ。そんなのただの迷信ですよ」


 こんな会話をしていた。



◼️◻️◼️◻️



「因みに、その女の子の特徴ってありますか?」


「もちろん、あるよ。きっと、浸夜くんなら直ぐに見つけられるはずだ」


 僕なら見つけられる……?

 どういう意味かと疑問に思っていると。

 輪陰さんが右手人差し指であるものを指差した。


 それは、僕が左側に付けているモノクルだった。

 そのことがわかった瞬間、自然と右手でモノクルを触った。


「こ、これですか……?」


「うん。君と同じモノクルを右側に掛けてるから、一目でわかると思うよ」


「そう……ですか……」


 輪陰さんが発した返答が鼓膜を通して脳裏に刻まれ。

 徐々に心臓の鼓動が速くなり、鼻息が荒くなっていた。

 

 モノクルを右側に掛けてる女の子。

 しかも、僕と同じ形のものだと……。


 まさか……。


「その女の子って! もしかして、黒髪で青色の瞳をしてますか!?」


「う、うん。そうだよ。更に言うなら、その髪を三つ編みで二つ結びにして肩の前に垂らしてるよ」


「そ、そうですか……」


 髪と瞳の色と髪型。極め付けが、右側に掛けてるモノクル。

 全て夢で出会った美女の特徴と一致している。


 髪と瞳の色や髪型だけならともかく。

 モノクルを掛けている女の子は早々いるわけがない。


 なら間違いなく、その女の子が夢で出会った美女だ。

 まさか、こんなところで出会うきっかけが生まれるとは……。


 お使いを頼んでくれた母親。

 そして、更に新たなお使いを頼んでくれた輪陰さん。

 お二人ともありがとうございます。


 更に、断らずに引き受けた僕、グッジョブです。

 どっちも最初は断ろうとしたけど、何はともあれ、本当に良かった。


 このチャンスを掴み取るように、僕は目の前で右手をギュッと握った。

 全然気づかなかったが、その時に輪陰さんが不思議そうに見つめていた。


「もしかして、会ったことがあるのかい?」


「い、いえ。そうなのかと思っただけです」


 実は、夢で会ったことがあるんです! なんて口が裂けても言えん。

 ここは上手く誤魔化そう。本当のことを言っても信じてもらえないだろうし。


「そ、そうなんだ。ちょっと待ってね」


 一応納得してもらえたらしく、輪陰さんはレジカウンターテーブルに移動し。

 置いてあったボールペンを右手で取り、すらすらと紙に何かを書き始めた。


 書き終えたのか、ボールペンをそっと置き。

 一枚の紙を右手で掴んで、こちらに戻って来た。


「はい。これに鷹爪宝魔晶店の行き先を書いておいたから、それを見ながら気をつけて行っておいで」


「ありがとうございます。任せて下さい」


 その紙を両手で受け取り、直ぐに目を通すと。

 建物の外観や近くの建物のことがとても鮮明に書いてあった。


 流石は優しい男性と定評のある輪陰さんだ。

 多分、言ってるの母親と僕だけだと思うけど。


 では、行こう。

 そして……。


「必ず、無事に連れて帰って来ます」


「う、うん。そんな気を張らなくても大丈夫だよ」


「でも……。ありがとう」


「いえ。では、行ってきます」


「うん。よろしくね」


 斯して、僕は空陰武具店を出た後。

 新たなお使い先である、鷹爪宝魔晶店へと向かった。

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