憧れのヒロイン
前世で何度も周回するほどに好きだった乙女ゲーム “マジフル” に転生している。
しかもヒロイン!
私は、この手のネット小説も好んで嗜んでいた。だが、流行りは悪役令嬢、またはモブキャラに転生してしまい、断罪フラグを折っていくために奮闘するものばかり。
それなのに私はヒロインに転生した。 つまり、攻略対象選び放題、シナリオ通りの行動をするだけで、生身の推しと結ばれることが出来るのだ。
なんて幸せなんだろう。 神様ありがとう。
混乱して、パニックに陥りかけていた頭は、今じゃそんなことどうでもいいくらい喜びでいっぱいだ。
紙に状況をまとめながら、一つ決意をする。
『絶対に王子ルートに進んで、ハッピーエンドを回収してみせる。』
このゲームには5人の攻略対象キャラが存在する。
その中でも私は大の王子ファンだった。 正直、他の四人は1周さらっと、エンド回収のためだけに流し見したようなものだ。
「王子様のお嫁さんになるぞーーー!」
興奮のあまりつい叫んでしまい、部屋の外にいたメイドが慌てたように、
「どうかなさいましたか、お嬢様!? やはりお医者様にもう一度見ていただくべきでは……」
などと言い始めたため、適当に誤魔化して部屋からまた追い出す。
ゲームの舞台は3年後の学園入学からだ。 それまでじっくりと、王子ルートを思い起こすこととしよう。
魔力と共に前世の知識を手に入れた私は、王子ルートに向かうことを決意し、夜の生誕パーティーを楽しんだ。
それから時は流れ3年後・・・
「ついにこの日がやってきたわね」
そう言ってアリアは、物語の舞台、王立魔法学院の門の前に立つのであった。