記憶が戻る
12歳の誕生日
私の身体には、人生で初めて感じる “魔力“ が確かに流れていた。
不思議と体が勝手に動く。 それに身を任せ手をかざすと、眩い光が溢れた。 直後に唐突な目眩と共に見たこともない世界の景色が一気に押し寄せてきた。
そのまま私は気を失った。
「……さま! ……う様! お嬢様! あぁ、誰か旦那様方を、アリアお嬢様がお気づきになられました!」
ぼやけた視界が鮮明になってくる。
見慣れたメイド長に何度か呼び掛けられ、意識がはっきりとした。
「私は……ここは現実……?」
「あぁ、お嬢様、まだ意識が混濁されているのですね……。 今旦那様と奥様が来られますので、もうしばらくお待ちになられてください」
その後すぐに、父と母が駆けつけ、私の無事を安心してくれた。
ようやく周りが落ち着き、「今夜の生誕パーティーまで少し休んでいなさい」という父からの言葉のおかげで、私は一人の時間を得ることができた。
混乱する頭を整理するために、一つずつ紙に書き留めてみる。
この国では12歳の誕生日を迎えると、魔力が発現する。
基本的な魔法は修練することで、誰でも習得することが出来るが、その中でも何を得意とするかは個人で異なる。
これは単純な得手不得手という問題ではなく、その人が持つ瞳の色で決まるものである。
そのため、生まれた時から自分が何の魔法をメインに使っていくかの想像ができる。
これにより我が国では、魔力が発現する12歳までの間、それぞれの瞳の色ごとに合わせた座学を学ぶこととなっている。
私はこの設定に覚えがあった。
いや、これを設定と認識している時点でおかしいのだ。
どうやらここは、私が前世でハマっていた乙女ゲーム、「マジカルワンダフルスクール〜ドキドキ!王子と過ごす3年間〜」、通称 “マジフル”、 の世界のようだ。
急展開についていこうと必死な自分の頭を奮い立たせ、ここが “マジフル” の世界である決定打を得るために鏡を手に取る。
やはりそうだ、私は “マジフル” のヒロイン、 アリア・スカラ として転生している……!