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「第十一話」最善の選択

 そんな調子で、私達は民衆の支持を獲得していった。

 最初こそ魔女だなんだのと言ってくる輩は当然いたが、村から村へ、村から町へ……「魔女はどんな病気でも直せる」という噂は、流行り病に冒されたこの王国では瞬く間に広がっていった。私とシエルは王国じゅうを駆け回り、古い魔女のイメージを覆していったのである。


 とまぁそんな訳なのだが、流石に日にちをまたいで乗り回されっぱなしのイルにも限界が見えてきたため、今日のところは私達も一緒に休むことにしたわけである。今はウィジャスの家で羽休めをしているところだ。


「つーかーれーたー」


 もちろん私も疲労困憊である。魔法を使うということは、髪の毛を抜くということ。女にとって髪の毛は命であり、守るべき宝……それを一日に何本も何十本も抜くとなれば、精神的疲労が溜まるのも無理はない。


「お疲れさまです、ロゼッタ」

「薄毛になったりしてないかなぁ、こんな年でつるつるになるなんていやだよぅ」


 シエルはそれを聞いて、少し沈んだ顔をしていた。冗談で言ったつもりなのだが、どうにも彼女には責任感というものが強いらしい。おおかた、「ロゼッタばかりに負担をかけてしまっている」的なことでも考えているのだろう。


(寝てないのは、お互い様なのにさ)


 むしろ命を救ってもらったのだ、これぐらい出来なくて、何が魔法だ。


「大丈夫だよ、私こう見えて毛根強いから! すぐ生えてくるし、気にしないで」

「……はい。お気遣い、ありがとうございます……」

「おっと」


 そのままシエルは私に倒れ込んできた。やっぱり相当疲れていたのだろう、彼女はか細い吐息を可愛らしく吐きながら、全体重を警戒せずに預けてきた。警戒とか無いのだろうかと心配にもなるが、ここまで信用してくれていることに嬉しさを感じるのもまた事実であった。


「……」


 全く、タイミングがいいのか悪いのか。私はため息をつきながら、シエルをそっと布団の上に寝かせた。服の袖を掴んできた時は、それはそれは迷った。……だが、私はそれを振りほどいた。優しく、彼女の眠りを覚まさないように。


「……わざわざウィジャスがいない時を狙うとか、どういうつもり?」

「ええ、あの方がいると少々手こずるお話でして……」


 目の前にいるのは、二人の人間。一人はこの前ズタボロにした魔術師のハルファス、そしてそれを従えているということは……この悪趣味な真っ赤なドレスを着た女は、おそらくイザベラ第一王女、御本人だろう。



「交渉をしに来たのですよ、野蛮な戦いをしに来たわけではありません」

「デメリットとメリットを教えて、それで決める」

「話が早くて助かりますわ」


 その王女はニヤリと笑って見せて、まるで私を人間として見てなかった。


「あの平民女を王にしてあげましょう。その代わり私は貴方の首を、罪たる魔女の首が欲しいわ」

「……」


 これが最善の手段なのだろう。そう自分に言い聞かせながら、私は握手を交わした。


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