75ハルト いざ洞窟へ
「出発前に持ち物の点検だ。回復薬と魔力回復薬はみんな持てるだけ持ったか?エミリーさんは食料と燃料を持ってもらえただろうか」
「はい!隊長!食料、燃料持っています!」
エミリーさんが元気よく返事をする。
僕がアレックスのように、いつの間にかグレイ師匠を『師匠』呼ぶようになったように、後から加わったマリア嬢一行は『隊長』と呼ぶようになった。グレイ騎士団長様、と呼ぶのはやめたようだ。
師匠の視線をうけて、他の皆も、準備はできている、と頷く。
「今回はよほどのことがない限り、洞窟内に泊りがけとなる予定だ。今後洞窟内の探索をしていく中で、拠点となる場所を探すことも目的の一つとする。戦闘場所が森の中か洞窟の中かによって戦術が変わることについては、事前に説明した通りだ。あと、メスのゴブリンと遭遇することも増える。メスの方が動きが機敏だったりするので注意するように」
師匠から事前に注意された、洞窟内での戦術が違う、というのは。
洞窟を崩す恐れのあるような魔法は使わないこと、空気を消費してしまうので、火属性の攻撃魔法はできるだけ控えること。
さらに洞窟内での広さによっては、アレックスは大剣を鞄にしまい、片手剣に切り替える、といったものだ。
グレイ師匠からの注意を聞いて、気を引き締めて、僕らは森の奥まで進み、洞窟の中に初めて足を踏み入れた。
今まで慎重に、すぐに中に入ろうとせず、ひたすらに出てきたゴブリンを狩りまくってきたので、中に入ってもそんなにうじゃうじゃといる様子はない。
ただ、湿った空気と、ゴブリンの独特の匂いで気持ちが悪くなる。
救いは、思っていたより天井が高く、長身な師匠やアレックスも身を屈める必要がないことだろうか。
でも愚痴は言っていられないので、マッピングしながら進んでいく。
アレックスと僕は城で訓練を受けていた頃に、洞窟などに初めて踏み入ったときにはマッピングすることを教わり、その方法も教えられていた。
それが初めて発揮される。
エドガーさんもマッピングはできるので、今回は練習のために僕とアレックスが任され、ときどき間違えていないか、師匠やエドガーさんのチェックが入った。
入り口と同じ階となる一階層では、ゴブリンよりも土塊の魔物が多く、一階層のマッピングは思ったよりも早く済んだ。
ちなみに、洞窟のなかではゴブリンを倒したあとは、燃やすわけにもいかないので、放置だ。
共食いするというのだから、そのうち無くなっているだろう。
地下へ下る階段は二か所あった。
階段はゴブリン達が作りだしたもののようだ。
師匠が先頭に立って様子を見ながら下っていく。
地下一階も天井は高い。
そして、マッピングし終えてみると広さは一階層の二倍はあり、一階層からの二か所ある階段はどちらから降りても、この地下一階層でつながっていた。
地下一階層では、洞窟の外には出てこない、新しい魔物と数種類遭遇した。
イメージとしてはコウモリみたいなのと、蜘蛛みたいなやつで、ゴブリンの餌にはなりそうもない奴らだ。
どんな敵なのか慎重に戦い、僕らの能力で遜色なく戦えることが分かってホッとした。
それに、出くわす頻度が少なかった。
ゴブリン達とも、やり過ごせそうなときは戦闘を回避して、マッピングを優先する。
エミリーさんも、松明を掲げながら、気丈に僕らにちゃんとついてきている。
地下二階層へと進む前に、入り口が狭く、小部屋のようになっているところを見つけ、交代で見張りを立てながら、昼食をとった。
ちゃんとしたものを食べると気持ちがちょっと落ち着く。
食事を用意してくれるエミリーさんの存在がありがたい。
地下二階層への階段は数か所あった。
一番手近な地下二階への階段を下り、またマッピングを開始する。
地下二階層の天井も高く、むしろところどころ天井を高くするように削ったあとが見受けられるのを見て、師匠が「これは間違いなくこの洞窟に上位種がいるからだな」とありがたくない見解を教えてくれた。
地下一階層のときと同様、どの階段で降りてきても、全てこの地下二階につながっていたことが分かった。そして、また、地下一階より、広くなっていた。
地下二階までくると、洞窟独特の魔物もゴブリンも多くなって、戦闘の頻度が上がり、そんなに簡単には進めなくなった。
地下二階をマッピングし終えたところで、師匠の判断でこのフロア内で宿泊場所をキープすることになった。




