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転生したら息子も召喚って!?  作者: 十月猫熊
65/145

65エミリー

マリア付きのメイド、エミリー視点です。

「ご勤務中にお時間を取っていただいてありがとうございます」


私は立ちあがって頭を下げた。



お嬢様を若奥様のもとへ送り出したあと、私はすぐにメイド頭のところに午後半日休暇の申請をしにいった。


ふだん休暇をほとんど取らないことで叱られていた私は、すぐに快諾を得られて…メイドのお仕着せから外出着に着替え、大急ぎで城にやってきた。


時間的に、夕方の休憩の時間が近いはずで、急でもなんとかお時間を取って会ってもらえるのではないか、と思って来てみたのだ。


数か月前から、文通を経て、こっそりお付き合いしていた近衛兵のエドガーが、面会申請をしてからそんなに待つこともなく、面会室に現れた。


すぐに立ち上がって頭を下げ、礼をとる。


騎士様は貴族で、私は一介のメイドにすぎないのだ。


エドガーに面会してくれたお礼を言うと、人目のある面会室でもあり、表情を変えず、騎士らしく頷いて見せてくれた。



他にも人がいるここでは話がしづらいので、…と口にすると、庭を散策しながら話すことになった。


城に来た人間に解放されている庭を歩いて、慎重に他の人達との距離をはかる。


ちょうどいいことに、花のアーチのそばのベンチが空いていて、噴水も近く、水音のお陰で他人に話を聞かれる心配のない場所に落ち着くことができた。


そんなに長時間、彼の休憩時間はないはずだ。

私はすぐに本題を切り出した。


私のお嬢様が、きっと冒険者になりたいのだろうと思っていたけれど、そうじゃなく、勇者の仲間になりたかったこと。

若旦那様も若奥様も、そのことについては、多分本当はもうご存知で、許可される可能性が高いと予想していること。

最悪、お嬢様の言う通り、家出、になるかもしれないけれど、とにかく私はお嬢様の行くところならどこへでもついていく。そして、その旅立ちがいつなのか、わからない。

だから、いまのうちに、と、今日、こうしてお別れに来たこと…。


そんな話をしたら、やさしく私の手を握っていたエドガーが、目に見えて固まった。


「エド?しっかりして?」


どうやら息もしていなかったらしい。

私が揺さぶると、ひゅっと音を立てて息を吸い込んで、それから、両手で私の手を握りこんできた。


「…別れる?」


じっと目を見て言われ、私はうつむいた。


「君は平気なのか…?君の中での私は、その程度の存在なのか?君とは数日おきに城で遠目にだけど会うことができる。でもこうして、手を握り合ったりすることはできない。今日君がプライベートで会いに来てくれて、いつもは結い上げている髪もおろした、可愛らしい姿を見られて…さっきまでの私は嬉しさで背中に羽でも生えたかのような気分だった。でも今は……鉛の塊を飲み込まされた気分だよ」


この人は子爵家の末っ子で、兄姉たちからそうとう可愛がられてきたらしく、自分がそうされてきたように、他人にも自分の気持ちを素直に真っすぐに届けられる人だった。


思わず顔を上げると、明るい茶色の瞳でまたじっと見つめられて、耐えきれず、私の目に涙が浮かんでしまった。


「エドと会えなくなるのは辛いわ。でも、私は、私の人生は、私のお嬢様にお仕えすることに捧げる、と誓っているの。だからエドに何も言わずにいなくなったり、何年も待たせるのは不実だと思って、ちゃんとお別れをしようと思ったの…」


私達の関係は、お付き合いしているといっても、お互いの気持ちを伝えあったという意味程度でしかない。


相変わらず城の中で目が合うとお互いに微笑み合い、毎日のように手紙をやりとりし…こうして二人きりで会うのもまだ片手で収まる回数に過ぎず、それも短時間だった。


どこかへ一緒に出掛けたこともないし…手をつなぐより先にも進んでいない。


人によってはそれって本当に付き合っているの?と疑うレベルだ。


そんな私を、生きて帰れるかもわからないのに、待たせるなんて論外だと思った。


エドガーの指が優しく私の涙をぬぐう。


そして、ベンチの前に、す、っと跪いて私の手の甲にキスをした。


「エミリー、どうか私と結婚してください」


「え、ええっ!?」


「私では不足ですか」


「そんなわけない…」


また私の隣に座ったエドガーが、私を真摯な顔で見つめると。


「あなたがマリア嬢に一生お仕えすると誓っているように、私はあなたを守り、あなたの幸せを守る騎士となることを誓う」


そういうと、エドガーが私のあごに手をかけ…そっとやさしくキスをした。


エドガーの栗色の柔らかい髪が頬に当たる。


涙が止まらない。


そう、私はこの人が大好き。


お嬢様と比べることはできないけど、本当は二度と会えないと思っただけで胸がつぶれそうだった。


「私でいいの…?」


「あなたこそ私でいいのですか?」


「エド、あなたがいいに決まっているわ」


「私もです。エミリー、あなたがいい」


胸がいっぱいで先のことを考えられない。


エドガーの広い胸に抱きしめられて、ひとしきり泣いた後、顔を上げると…決意を固めた男の顔がそこにあった。


急な糖度マシマシ回でした。しかもお相手のエドガーはまだ二回目の登場(笑)

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