61ハルト 師匠呼び
短めです。すみません。
次の日、ひたすら村と森の間にいる魔物を倒し続け、森の入り口辺りの魔物をかなり減らした。
村で、穴を掘る道具も買っておいたので、ゴブリンを倒すたびに、穴掘りというかなりの肉体労働がおまけについてきて、すごく疲れた。
暗くなるころ、宿に戻って食事をとると、もう、すぐに死んだように眠った。
次の日も、ひたすらに同じことを繰り返した。
ゴブリンたちも、食糧確保のために出てきているのだ、倒しても倒しても、どんどん出てくる…。
夕方、疲れ切った体に鞭打って、ゴブリンを埋める穴を掘っていたら「やっと見つけました!」という朗らかな声がした。
のろのろと顔を上げたら、顔見知りの近衛兵さんだった。
王都近くの森での魔物狩りに付き合ってもらったこともあったし、お茶会のときに護衛についてくれていたこともある。
近衛の装備ではなかったけど、森に入るには充分な装備を身につけていた。
「エドガー!?どうしたんだ?なんでこんな所に?」
近くで同じく穴を掘っていたグレイ師匠が驚いた声を上げた。
僕は疲れすぎて麻痺しているのか、驚くことができなかった。
そうか、この騎士さん、エドガーさんっていうんだ…そんなことしか頭をよぎらない。
「一人なのか?」
こんな魔物の多いところを一人で歩くとは、という非難をこめた険しい顔で睨まれ、エドガーさんが思わず肩をすくめる。
「あ、いえ、一応連れがいます、わかりにくいだけで…」
どこにその連れがいるんだろう…きょろきょろしてみたけど、一人にしか見えない。
「こんなところまで、一体どんな仕事を押し付けられたんだ?」
ちょっと離れたところにゴブリンを埋め終わったアレックスが、僕らのところにきて、地面に突き立てたシャベルにもたれながら疲れた笑みを見せた。
こんな時でも微笑めるのはさすが王族…。
「かなり説明が長くなりますので、大丈夫であるなら、一度宿に戻っていただけませんか。その方が説明も楽になりますので…」
鬼の師匠は、僕らの様子を見て、「ま、ちょっとくらい早く上がってもいいか」と言ってくれた。
ちなみにこの数日の命がけの戦闘の中で、アレックスだけじゃなく僕も、グレイのことは、師匠、と呼ぶようになっていた。
戦闘中にとっさに次の手を考えつけなかったとき、鋭く素早く、するべき行動を指示してもらって、大けがを回避して何とか倒せた、とか。
やられる!そう思った瞬間にグレイの攻撃で魔物が倒され、命拾い…とか。
そんなのは日常茶飯事だった。
僕とアレックスの使えるスキルと魔法、僕らの行動速度、残っているであろう魔力量、さらに僕らの性格、それらを全て把握しきっていて、余裕のない時ほど的確な指示がとんだ。
この人が騎士団のトップに上り詰める実力は伊達ではないのだと、改めて納得させられていた。
シャベルやクワを魔法のカバンにしまうと、重い体を気力で動かして、村の宿に向かって歩き出した。
アレックスなんて重たい大剣を背負っている。僕ならきっと歩くこともできないだろう…。
僕らが口数少ないので、エドガーさんも遠慮しているのか、時々師匠と何か小声で話をしているのが分かる程度だ。
戻る途中で出た魔物を倒すのは、エドガーさんも参加してくれたので、すごく楽だった。
三人よりやっぱり四人!
今の僕らだと何回切りつけると倒せるか分かっているのだけど、それよりもかなり少ない回数で倒せた。
…エドガーさんって相当強いんだろうか。
なんとか宿にたどり着き、食堂で待っていますので、というエドガーさんと別れ、部屋で重い装備を外した。
鎧としては軽い部類なのは知っているけど、疲れている身には重くて仕方ないのだ。
ここで座ったりしたら眠り込んでしまうし、夕食も食べ損ねる。
ずるずると足を引きずるようにして一階の食堂に行ってみると…。
なんだか場違いな、何度も目をこすって確かめたけど間違いない、花のようなドレスに身を包んだお嬢様と、お付きのメイド、そしてエドガーさんが待っていた。




