57ハルト お買い物
冒険者ギルドからお金が用意できたと連絡があり、魅力減退アイテムを身に着けたグレイを含めた三人で、ギルドを訪ねた。
そして、グレイも冒険者として登録し、僕ら三人でのパーティーとして登録し直した。
グレイは、冒険者としてのランクが、いきなり特一級だった。
レベル上げをしてきたあとで、僕が五級、アレックスは四級だというのに、さすが騎士団長。
その特一級のグレイが入ったことで、僕らのパーティーのランクが一気に三級まではね上がり、受けられる依頼がとんでもなく増えた。
冒険者として世の中からいっぱしと認められるのは三級かららしい。
換金して得た大量のお金は、ギルマスの部屋に用意してもらっていたので、魔法のカバンに詰め込んでいると、「このペースで続けると、国家予算を食い尽くしちまうぜ」とギルマスにあきれられた。
ゲームでも、序盤でこんなにお金持ちになったことはなかった。
「昨日から何を買うかうきうきしているんです」と言ったら「そうかそうか」、と、グレイに子ども扱いでまた頭をなでられた。
「ハルトには悪いが、一応こんな感じで考えたんだが…」
グレイがさすがの騎士団長様なので、僕ら三人分の能力を鑑みて、買う物リストを作ってくれていた。
見ると、僕が考えてもいなかったようなものや、その存在を知らないものも含まれていて…。
「やっぱり長生きしている大人がいると違うね」
「そうだな、聞いたこともないものもあるし、さすが年の功だな」
「…こら。おっさん扱いするな、俺はまだぴちぴちの二十代だ」
「うーん、そのぴちぴち、とかいう表現がもはやおっさんくさいよねえ」
「そうだな」
アレックスと言いたい放題言っていると、珍しくグレイが機嫌を悪くしたようだった。
「プラチナソードとかかっこいいのに」
話題を変えるために、リストになかったものを言ってみたら「あれは見た目ばかりで、費用対効果を考えると無い」とにべもなかった。
そういえば、ゲームでも、かっこよくて欲しかったけど、攻撃力がもっと高くて安い剣が他にあって、結局買わなかった。
素人の僕らはそのリストに口を挟む余地もなかったので、たくさんの店を回って、それらを買った。
同じ店でたくさん買い過ぎると目立つので、あえて複数の店に分けたこともあった。
途中からはグレイが手配しておいてくれた馬車に、買ったものを積み、次の物を買う、を繰り返した。
魔法のカバンはあまりにもレアアイテムなので、みだりに店の中で使っては目立つことになるらしい。
そして、アレックス用に買った、何か魔法陣の彫り込まれた大剣が今回一番高い物だった。
剣自体が思わず目を引くようなシロモノで、これは魅力減退アイテムがなければ、人目を引いて仕方なかっただろう。
魅力減退アイテムを使っていても、ちらちらと見られている。
とりあえずアレックスが人目につく件は、今はおいておくとして、買い物を続行した。
ゲームでも、こんなに装備を一新したことは無かった。
お金がたまったら、次は武器を強くして攻撃力を上げるか、防具を変えて防御力を上げるか、はたまた特殊アイテムを買うか…といつも悩ましかったものだ。
それが、一気にかなりのいいもので揃えられたのだ。
それに、回復薬やものすごく高い魔力回復薬も結構買った。
僕の魔法のカバンの中のお金が全部なくなった後も、グレイがお金を払っていたので、そのお金の出所をきいたら、キースから、ということだった。
初めて旅立った時に、僕らがお金に苦労したことを相当気に病んでいるのだそうだ。
全てを買い終えたのを確認して、城に戻り、買ったものを再確認の為に並べてみると、圧巻だった。
義兄達も興味津々でわざわざ見に集まってきた。
「ねぇねぇ、新しい装備身に着けたところ、見せてよー」
クリスは自分の身長ほどもある大剣をつつきながら、目をキラキラさせている。
防具などサイズを微調整する必要のあるものもあり、全てを装備してみた。
鏡に映る姿は、ゲームで見たことがない。
そりゃあ、ゲームで買ったことない装備もあるから当たり前だ。
例えば僕とアレックスの鎧は、鎖帷子とラメラーアーマーを足したようなものだ。
胸などの急所を守る部分に金属の小さなプレートをつけて鎖帷子より防御力を上げつつ、プレートアーマー程の重さはない。
そんな実用第一の鎧なのに、アレックスが身に着けると、その長い手足とすらりとした長身で、着こなしてしまう。
「うわーかっこいいねえ…」
「クリス、このアイテムの威力だけでは足りなくなっちゃったね。これではアレクが目立ってしょうがないよ…これ以上効果は上げられないのかな」
「うーん…」
クリスが考え込んで、ブツブツと言い出した。
一人の世界に入ったらしい。
「アレクだけじゃなく、ハルトも、グレイ師匠もつい目がいってしまうな。なんというか、出ているオーラが違うっていうか…」
「ジュリーの言う通りだな。一人ずつでも目を引くのに三人集まるとさらに…だな…」
キースもジュリアスも綺麗な顔の眉間にしわを寄せて考えてくれている。
綺麗な人は悩んでいる姿も美しい。
そんな人たちに目を引くとか言われてもね…。
僕は庶民で。町を歩いていても気付かれないのが普通で。
「注目を集めない…人々に埋没したいんだよね…こう、存在に気付かれなくなりたいっていうか…」
「それだ!…貸して!」
クリスは僕らからリストバンドを奪うと、走って行ってしまった。
僕らは一瞬ぽかん、としたけど、あの様子なら満足いくものを用意してくれそうだな、と頷きあった。




