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転生したら息子も召喚って!?  作者: 十月猫熊
53/145

53アレックス

弱い自分達が、弱い魔物を相手に、徐々に強くなるのを待っていては時間がかかりすぎる。

もっと強い魔物と戦い、強くなるペースを上げたい。


そして、もっと旅の仲間が欲しかった。

複数体の魔物との戦闘のとき、二人では危ういこともあったのだ。



最初に行った町の冒険者ギルドで、六人程度のガタイのいい男性グループを見かけたことがあり、ハルトはその人たちにフラフラと数歩歩み寄り、ハッとした顔をして、なんでもないそぶりをしたことがあった。

それを俺は見逃さなかった。


ハルトが話そうとしないのならそれでいいか、とそのときは見守ることにしたけれど、その冒険者の中に元の世界での知り合いにそっくりな人物でもいたのか、冒険者として二人ではなく大勢のパーティーが羨ましかったのか、どっちだろう?もしかしたら両方か?などと思っていた。


ハルトはきっとあの時には既に、人数の多いパーティーに魅力を感じていたのだろう。


城についてすぐに、そのことを伝えたものの、仲間の件は保留とされ、強くなるための特訓が即決された。



向かうことになった村は、街道沿いよりも強い魔物が大量にわくのが特徴の地域だそうで、過去の勇者がこの村で実戦訓練をしたこともあるんだとか。


ハルトとその村に向かっていると、なんとその馬車の御者がグレイ師匠だったというサプライズがあった。


師匠が来てくれたことで、旅立ってからずっとうまくいってない感がぬぐえなかったのに、一気に勢いがついた気がした。

気持ちも上向きになった。


それはハルトも一緒だったようで、城にいるときのように軽口も出るようになった。


ただ、毎晩、宿屋で食事をとった後などに、ハルトが師匠をじっと見つめ、何かを言いかけてはやめてしまうのが気になって仕方がなかった。


師匠も、何だろうなあれ?と気になりつつ、何だか分からないようだった。






実戦訓練を繰り返した結果、村周辺の魔物がほとんどいなくなった頃、師匠から森の木を伐って村に運ぶ、という無理難題が課せられた。


「えっ普通は馬が引くやつでは…?」


俺がそういって絶句し、伐り倒すように指示された木を仰ぎ見て呆然としていると、ハルトも、「剣で伐り倒せるの…?」と呟いていた。

 

師匠からのひと睨みで、俺らは黙って木に挑んだ。


それでも、俺は数時間で、剣で木に切れ込みを入れる感覚をつかみ、伐り倒せた。


その後、枝を二人がかりで落としていくときに、俺は木を切る感覚をつかんだ後だったので、太もも程度の太さの枝までも、一刀両断にできた。


ハルトも、細めの枝を切ることを繰り返すうちに、一振りで切り落とせるようになった。


そのあと、その一本を適当な長さに切り分け、丸太となったものを、ハルトと二人で紐をかけて引いたり押したりしながら、村まで運んだら、その日は俺もハルトも動けなくなっていた。


その日は、食事をとるのもぎりぎり、といった有様で、倒れるように眠った。

 

次の日は体中が筋肉痛で悲鳴を上げていたけれども、ハルトと二人でぼやきながら丸太の残りを村まで運んだ。


合間に出会った魔物を倒す時に、あれ?こんなにもろいヤツだったっけ?というほどに手ごたえが変わっていて、木を切るためにつかんだコツを使って剣を振るうと、剣の威力が増していたことに気付いた。


さすが師匠。


理不尽な訓練に思えても、一切無駄がなかったのだ。


そんなに硬い魔物の出る地域でもなかったので、ハルトもすぐに魔物を一刀両断にできるようになった。


そして最後には、あの華奢な体で、俺と同じように丸太を一人で村まで引きずっていけるようになったのだ。


ハルトは、スキルを身に着けるペースも俺より断然遅く、戦闘を繰り返しているうちに上がる身体能力もゆっくりだったので、目に見えて体が変わったことに、ハルト自身も驚いていた。



そんな感じにいい結果も出たので、城に帰ることになった。

 

御者席に三人で座って雑談をしていたら、急にハルトがグレイ師匠に、ブラックドラゴンを倒す仲間になって欲しい、と言いだした。


騎士団長という身分の師匠が、その責務を放り出して、おいそれと国を抜け出すことなんてできる訳がない。

…でも、師匠が一緒に来てくれたら!と、俺も一緒に頭を下げていた。


命令ではなく、お願いだ、というのがハルトらしいな、と思いつつ、もしかして、ずっとハルトが言いたそうにしていたことってこれだったか、と気が付いた。


騎士団長をブラックドラゴン討伐の仲間に誘うなど、頭の固い俺には思いつかなかった。


断られる可能性が七割といったところか…でも、どうにかして一緒に行ってもらえないものか、と念じながら下げていた頭を上げて、師匠の顔を見てみれば。


師匠はたまにしか見せない厳しい顔をしてハルトと俺のそれぞれと目を合わせ。


そして「ん。いいよ」とあっさり答えたのだった。


この世界最大の我が国の、その騎士団を統べる騎士団長。

他でもないその人が、俺たちと一緒に来てくれる。


ハルトも、俺みたいなひよっことの二人きりより、今後はかなり安心できるはずだ。

というか、俺自身が安心した。

 

ホッとしていると、師匠から、この村での実戦訓練中に一緒に行ってほしいと頼まれなかったら、一緒に行くことはなかった、という話を聞き、戦慄した。


ハルトが宿で師匠に頼み込もうとしていたことを俺にも教えておいてくれれば、二人で頼むこともできたはずだ。


ハルトの抱え込む性格の一端を見て、見守るばかりではなく、ときにはこちらから聞きだす位のこともしてやらなくてはいけないのだな、と反省したのだった。


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