43ハルト
僕らの替え玉達の出発を物陰から見送って、その後、僕らも出発した。
僕は念のためにフードを深くかぶって黒髪は見えないようにしていたし、アレックスはサラサラの銀の髪をきっちり結い上げ、帽子を被って髪の長さまではわからないようにしている。
いつも馬で駆け抜けるだけの城下町を、とりあえず歩き回ってみる。
最初の目的地は冒険者ギルドだ。
城はゲームとほぼ一緒だったのに対して、町は全く違うものだった。
大きな建物や広場はゲームにもあったけど、それ以外は端折られていたようだ。
僕はまるっきり、田舎から出てきて今日初めて城下町を歩いています状態、だったのだけど、アレックスが意外と慣れていて、こっちだ、と案内してくれた。
道を歩いていても、時折、ちらちらと見られるので、ばれてやしないかと気が気ではない。
途中、道具屋に立ち寄り、回復薬を少しだけ買い、冒険者ギルドに冒険者としての登録をしに行った。
僕らは、冒険者として色んな依頼を受けながら、世界を旅するし、情報も集めるし…ゲーム風にいうならレベルを上げていくのだ。
大人たちが事前に話をつけていてくれたので、すぐにギルドマスターに会え、通常はカウンターで済ませる登録や説明をギルドマスターの部屋でしてもらえた。
絶対に僕らが王子だって知ってるのに、おくびにも出さない。
こういう態度が大人の対応ってやつなんだろう…。
まずは、冒険者としての『ランク』を測定することになった。
ランクは、特殊な装置…魔道具の一種らしい…に触れることで、判定される。
魔力量や筋肉量などなどが、触れるだけで測定されるのだそうで、八級から始まり、強くなるに従って数字が減り、一級の上は、今度は特一級、特二級…と数字が増えていくんだとか。
魔力量や筋肉量が多いだけで強いとは限らないし、色々複合的に強さを判断しているところが、なんだかここだけゲームでのステータスの数値を思い出させる。うん、ゲーム世界っぽい…。
それはさておき、残念ながら、僕は七級で、アレックスは六級だった。
そして、僕ら二人でのパーティーとしても登録をし、僕が七級なので、パーティーとしても七級となった。
手続きが終わったところで、早速ギルマスお勧めの仕事を受けることにした。
その仕事はゲームでも最初にあったイベントで、商隊を隣の町まで護衛する、というものだ。
近い隣町は一日で着いてしまうけど、商隊が向かう町は、途中で野営をしないと着かない距離だ。
でも、商隊についていくことで、迷ってしまう心配がない。
初心者向けの案件だった。
城内と、最寄りの森しか知らない僕にとっては、世界が文字通りに広がる。
商隊の出発時刻まで一時間ほどしかなく、ギルマスに送ってもらって商隊と合流した。
そこでギルマスが丁寧に、雇い主との挨拶の仕方や冒険者としての振る舞いを教えてくれたので、ものすごく助かった。
ギルマスと別れた僕らは、商品と一緒の荷馬車に乗り込み、馬車に揺られて、出たことのない門から城下町を離れた。
荷馬車の幌の隙間から、遠ざかる城や城下町をみて、思わずぶるっと体が震えた。
いよいよ始まったんだ…。
アレックスも、同じ気持ちらしく、珍しく神妙な顔をしている。
「よろしく、アレックス兄さん。これから長い旅になると思うけど、頼りにしてます」
そういって、片手を差し出すと、
「こちらこそ頼むぜ、勇者の弟よ」
と、ものすごい力で握り返された。
そして二人で、笑った。
商隊の護衛は、ゲーム内ではいわばチュートリアルだった。
初めての、護衛としての戦闘だからだ。
僕らだけでの戦闘と違い、護衛対象が死んでしまうとペナルティを受けることになる。
守りつつ戦うので、通常とは戦闘モードが違うのだ。
…というのはゲームの話。
現実世界では、護衛対象のHPが分かるわけでもないし、目の前に見えている物だけが見える。
今はとにかく出てきた魔物を片っ端から倒しさえすればいい。
護衛対象の雇い主も人間だから僕らが見えないところから魔物が近寄ると、声を上げて知らせてくれる。
夜になって街道脇のキャンプ場にテントを張り…張っている最中に早速魔物の襲撃を受けた。
馬がいなないて教えてくれたので、誰もケガをしないうちに倒せた。
暗くて見通せないので、急いで火をおこして、テント脇にたき火、ちょっと離れた四方にかがり火をたいた。
夕食を準備していると魔物が、食べているとまた魔物が、といった具合で、かなりの頻度だ。
奴らは生き物の気配に引き寄せられるので、見えていないところからでも近づいてくるのだ。
それでもお馴染みの低木のようなやつと、初お目見えのでかいキノコみたいなやつで、どちらも一撃で倒せるので、戦闘時間そのものは短い。
はじめてのこのような夜に緊張していて、眠くなることはなく、朝になって遠くまで見通せるようになってからは、こちらから行って倒したりもした。
雇い主さん達が起きてきて、朝食を作ったり食べたりする頃には、魔物は出てこなくなった。
この辺りの魔物を一掃したらしい。
ほっと肩の力が抜けた。僕らも朝食を食べさせてもらい、また馬車にのりこんだ。
この辺りの魔物は馬のスピードには追いつけない。
馬車の中でうとうとしていたら、昼頃には目的の町についた。
依頼主さんに書類にサインをしてもらい、お別れだ。
この書類をギルドにもっていくと、報酬がもらえる。
もらったお金ですぐに宿をとり、宿の食堂で何だか良く分からないものを食べ、部屋に戻ると、装備を外すのが限界で、ベッドに倒れこみ、次の朝まで眠ってしまった。
諸事情により、今後は一日一話投稿になります。




