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転生したら息子も召喚って!?  作者: 十月猫熊
41/145

41マリア

そして…もう三日、部屋に閉じこもっている。


食事も家族と一緒ではなく、自室で一人きりだ。


きっと王妃陛下や側妃殿下からのお茶のお誘いもあっただろうけど、私の耳にまでは届かない。


両親の怒りは凄まじく、罰も決めかねているようで、なかなか伝えてこない。

自室謹慎程度は罰のうちに入らないのだ。


監督不行き届きとして、エミリーも謹慎処分を受けていて、あれ以来会えていない。


いつも一緒のエミリーとこんなに何日も離れているのは記憶にない。


今ついてくれているのは、エミリーが休暇のときや、エミリーだけでは手が足りないときについてくれる、それなりに気心のしれたメイドさんなのだけど、長年の付き合いからくる、あうんの呼吸がないため、こちらの調子も狂う。


エミリーと離されること自体も、罰のようなものだ。


それに、罰を受けたのはエミリーだけではなく、御者さんも減給されたと聞き、激しく落ちこんだ。



今、受け取った本は、今読んでいるものの続きだ。

もうすぐ読み終わりそうだったので続きを持ってきてもらった。


魔法関連の本は読むことを禁止されており、読むことを許されているのはお母様のチェックの入った、今巷で流行中の恋愛小説だ。


ちょっと本の世界に入り込み過ぎたので、お茶を淹れてもらって、一息つく。


するとすぐに、この状況に陥らせた自分自身に、激しい後悔を覚える。


あの日を無かったことにしたい…。

戻れるなら全力で自分を止めたい。


何だか似たようなことを思ったことがあったな、とぼんやり考え、そうだ、あの人を失ったときだ、と思いだした。


あの日、家を出るのがもう数分早ければ…お花見の話なんてしなければ…何度そう思ったか知れない。


でも、起こったことは変わらないものだ。

 

後悔しても、何も変わらない。


そうだ、私はそのことを良く知っていたはずじゃなかったか。

 

後悔からは何も生まれない。


反省をして、悪かったところを二度と繰り返さないことだ。

 

大きく息を吸って、ふうー、と長く息を吐く。何度か繰り返す。


よし、御者さんには、謹慎がとけたら、お詫びの品をもってもう一度謝りに行こう。

御者さんの奥さんにも、減給分を補えるような何かを贈ろう。


エミリーには…エミリーには、あの時約束したことを決して破らないことだ。


エミリーはお詫びの品はきっと受け取らない。

エミリーとの約束を守り続け、公爵令嬢としての振る舞いを、常に意識し続けることが、きっと一番だと思う。


『悠人を手伝いたい、助けになりたい』


その一念でもって、ここ数カ月は視野が狭くなっていたように思う。


こんな自分では、勇者ご一行に加えてもらえるか、はなはだ疑わしい。


あのとき、どんな魔法も使うことはできなかった。


すごい魔法を覚えたとしても、本番で使いこなせなければ意味がない。


両親の怒りがとけ、ほとぼりが冷めたら、攻撃魔法については諦め、もともと得意だった回復魔法などの訓練に特化しよう。


魔物に出くわした、あの時のことを思いだすだけで鳥肌がたち、喉の奥がきゅ、としまってしまう。


そうだ、どんな場でも歌える度胸をつけよう。

ブラックドラゴンを前にして、怖気づいて歌えなかったら意味がないではないか…。



翌日、ようやく両親が熟考の末に決めたらしい私への罰が言い渡された。


一か月間の外出禁止。

一か月間の魔法禁止。

一か月間の読書と勉強の禁止。

 

外出禁止は誰にとっても罰になるだろう。

でも、二つ目や、特に三つ目は、普通の人にとっては罰ではない。

でも、私にとっては…。


もしかしたら読書禁止はくるかも、と思っていたけど、勉強まで禁止とは。

両親は私が好んで行うことを禁止することにした、ということだ。


色々禁止されたけど、エミリーが私のところに戻って来てくれたのは救いだった。


私の部屋にあった本は全て教科書含めて持ち出され、そうするとびっくりする位に部屋の中が閑散とした。


他の物があまりない上に、本のカバーに使われた布たちのカラフルさにより、華やいでいただけだったのだ。


することもなかったので、数年ぶりにフリルたっぷりのクッションや、豪華な刺繍を施したクッションなどを作って、女の子らしい部屋になるようにしたり、厨房でおやつを作ったりして過ごした。


勉強や魔法の訓練をしていると、一カ月なんてあっという間なのに、なかなか日々が過ぎていかず、悶々とした。


両親は本当に効果的な罰を考えたものだ。


弟たちが気を使って、一緒にお茶をしてくれるのが、唯一の楽しみなくらいだった。


今日も、相変わらず可愛いに尽きる弟たちとお茶をしていると、ヘンリーが剣の稽古のときに剣の師匠から聞いた話として、とんでもない話を教えてくれた。


いわく…成人した第五王子が、この魔物大発生の世界を憂い、世界のどこかにいる勇者を探しに旅立つことにした。それに賛同した第二王子が同行することを決め、二人は既に旅立った…というのだ。


は?

…え?

勇者を探しに?


勇者は悠人…第五王子のハルト殿下のはずだけど?

勇者が旅立った、のではなく、勇者を探しに旅立った…?


なんだろう、私にはわからない大人の事情ってやつの匂いがする…。


悶々としてたところに、この上もやもやさせられるとは!


外出できないので情報も集められない。

お茶会でのたわいない話を装った情報交換の大切さよ…。



そして私は思い付き、側妃殿下にお手紙を書いた。


少々やらかして、外出禁止であることはもう伝えられているので…噂でアレックス殿下が旅立たれたと聞きましたが、さぞかしご心配なことでしょう、お傍でお慰めして差し上げられたらよかったのに…ということを貴族らしくもったいぶって書く。


謹慎がとけたらまたお茶に呼んでね、などとは目下のこちらからは決して言わない。

でもこれで、会いたがり、話したがっていることは伝わる。


前世で空気読むのが得意な国民性だったことは、貴族社会では活かされる。


側妃殿下がアレックス殿下を心配しているだろうことは、私が悠人のことが心配でならないことと一緒のはずだ。


もう旅立ってしまったのなら仕方がない…二人の無事を毎日祈ろう…。


 

真摯に二人を心配し、今は世界のどのあたりにいるのかしら、と思いをはせ、毎日祈りを捧げていた私は、謹慎の一カ月が過ぎて、歌のレッスンのために久しぶりに登城したときに、アレックス殿下と悠人を見かけて、膝がかっくんとなりそうな位、びっくりした。



城門をくぐり、馬車を降りたところで、厩舎に向かっていく二人の後姿を見つけたのだ。


変装していたようだけど、母親の目を誤魔化せるわけがない。

 

走っていって、一体どういうことなの?お母さんに教えてちょうだい!と言いたかったけど、走っていくところから我慢をした。


とにかく久しぶりに登城したのだ、何らかの情報は側妃殿下から絶対に貰えるはずだ。


でも。


「なんなのよ、もう!」


という叫びは抑えられず、エミリーに怖い目で睨まれた。


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