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転生したら息子も召喚って!?  作者: 十月猫熊
38/145

38ハルト

「お嬢さん方。聞いてくれ」


グレイの声に、二人の言い争いはぴたりと止み、それぞれに期待のまなざしで大男を仰ぎ見る。


「ここはもう、森の中心辺りだ。ここまで魔物に遭遇しなかったのは運が良かったのと、恐らく俺たちがもう狩ってしまったからだ。低級な魔物しか出ない森だとはいえ、我々騎士でも一撃で倒すのは難しいこともある奴らだ。お嬢さんは腕試しをしたいようだが、もし複数体同時に遭遇して、一体を攻撃している間に、もう一体がそちらのメイドさんを襲ったらどうするつもりだったんだい?二人とも防具も一切身に着けていない。恐らく身を守るすべを持っていないメイドさんは、即死だろうな」


みるみる令嬢の顔が青ざめ、メイドさんの顔を見る。


メイドさんは、ほらみなさい、という顔をしている。


令嬢はそのあと、僕らの装備を見て、自分のドレスをみて、メイドさんのお仕着せをみて、もう一度僕らの装備をみた。


今日に限って、アレックスと僕は筋力と体力の増強のために、騎士団から借りた、重いプレートメイルにフルフェイスの兜、大きめの盾まで装備していた。


グレイだけはいつもの装備で顔も出ている。


公爵令嬢とそのメイドだ、僕ら二人の顔も出ていたら、すぐに王子だとばれただろう。

ばらしていいものか、ちょっと迷う。


「今更ではございますが、騎士団長様でございましたか…お見苦しいところをお見せして、申し訳ございません。こちらガードナー公爵家令嬢マリア様、私はマリア様のメイドをしております、エミリーと申します」


騎士団長だと気付いて挨拶をしたメイドの声に我に返って、やっと頭の冷えたらしいお嬢様は、それは見事な礼をとり、改めて自らの名を名乗って、非礼を詫びた。


「帰る気になってくれたかい?じゃ、俺たちも今日はこれくらいにして、そのメイドさんの言う通り、お二人をお屋敷までお送りしますよ」


マリア嬢はすっかり意気消沈して、大人しく頷いた。


それから森を出るまでに、運がいいのか悪いのか…マリア嬢の期待通り?あともう少しで森が終わる、という辺りで、魔物に一度だけ遭遇した。


マリア嬢は真っ青になってガタガタ震えて、何もできないようだったので…僕も初めて魔物と遭遇したときはそうだったな、と自分が成長したことを再確認できたけど…僕ら三人で倒した。

 

森の入り口では、僕らの馬を見ていてくれた騎士さん達と、公爵家の馬車の御者が心配そうにしていて、僕らが一緒に出てきたのをみると、公爵家の御者さんはほっとしたのか涙ぐんでいた。


さんざん落ち込んでいる様子だったマリア嬢は、その涙を見て、またもうひと段階落ち込んだようだった。


女性陣が馬車に乗り込み、出発したところで、僕らも馬車を守るように馬を並べた。


町に入ってからは騎士さん二人に屋敷までの護衛を託し、僕らは城に帰らせてもらった。


僕ら王子の存在を公爵令嬢に気付かせずに済んで、ちょっとホッとした。


あの大騒ぎを騎士団長だけでなく王子達の前で繰り広げ、王子達に護衛までさせたと分かったら、さらに落ち込ませ要素を増やしてしまう。


キースが才女だと感心していた記憶があるけど、かなり規格外のお嬢さんでもあるんだな、という認識が上書きされた。

 



城に戻って装備を外し、馬のお世話をしたあとは、今日は重くて蒸れるプレートメイルを着たこともあり、すぐに入浴した。


今日は自室の浴室ではなく、温泉だ。

実は、城の敷地内に温泉が湧いていることを知り、日本風の入浴施設を作ってもらったのだ。


僕は元の世界での日本人の習慣として、毎日お風呂に入りたかった。

でも、この世界では本来入浴は贅沢な行為だ。


なので、そこだけは身分が高くて良かったなーと思っていた。

僕の侍従たちも心得ていて、寝室につながる浴室では、いつでも入浴できる準備が抜かりなくされていた。


いつも、頼むとすぐに入浴できるので、どこでこんなに大量にお湯を沸かせるのかきいてみたら、王宮敷地内のとある場所で、数年前から熱い湯が湧くようになり、そこから汲んできていることを教えられた。


その水を池に通すと水の性質で魚が死んでしまうので、その湯だけを貯めておく池を作ってあり、あったかい水は下働きの者にとっては洗濯や掃除に、冬は特にありがたい、とか。


湧き出してすぐのところは相当な高温なので、樽に高温のお湯をためて常に侍従の控えの間に常備しておき、僕が入浴したいと言ったときには温め直したり時によっては水を足すなどして適温になるように調整している、と聞いて、もう、すぐにそのお湯が湧き出る場所に連れて行ってもらった。


そしてそれは、やっぱりどう見ても温泉だった。


掃除や洗濯に特にいい、という言葉から、水質を調べて貰ったら、元の世界でいうところの美人の湯。

アルカリ性のお湯で、シャンプーや石鹸がなくても、汚れ落ちがいいのだ。


そのあとはすぐに周りにお願いして…こんな風に作って、というのを一生懸命説明して、今に至る。


大人なら五人くらいまでは同時に入れそうな石造りの源泉かけ流しの浴槽と、タイル張りの洗い場と壁。

脱衣所と、侍従たちが待っているための部屋もある。

僕は他人に体を洗ってもらう趣味はないので…。


もちろん、掃除や洗濯のためのお湯は別の場所で確保してある。

そこには正式な洗濯場が作られた。

 

まあ、そんな経緯で、王子宮からは別棟になっているのが残念ではあるけれど、いつでも入り放題の温泉ができたのだ。



夏は日暮れが遅い。


窓を全開にして、のんびりお湯につかって体をほぐし、さっぱりしたあとは、外の木陰に簡易な休憩所を作ってもらっているので、そこで涼もうと行ってみると、先客がいた。


マリアは転生したらの定番、異世界の食べ物をこの世界に持ち込んでいますが、ハルトは温泉文化を持ち込みました。

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