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転生したら息子も召喚って!?  作者: 十月猫熊
35/145

35マリア

少し長めです。

ジュリアス殿下は持っていた本を侍従に渡すと、私に歩み寄ってスマートにお茶のセッティングがしてあるテーブルまでエスコートしてくださった。


なにこれ照れる。


未成年の私は、男性にエスコートしてもらうのは、実は初めてだった。


もちろん、スマートにエスコートされるための練習はしている。でも、実践となると…。


触れた手から感じる体温に、自分とは違って柔らかくはないその感触に、なんだかドキドキしてしまう。


ほんの十数歩の距離で良かった。

もっと長かったら、ドキドキしていると周りにばれちゃうところだったかも…。

 

席につくと、王妃陛下達がいないのでお茶菓子には手を付けず、お茶だけ淹れてもらって、ジュリアス殿下とたわいのない話をした。


マリアの中に少し残っているおばさん視点から見ると、この王子殿下は四人の王子の中で一番お堅い。


真面目さはキース殿下と同程度だけど、長男さんは王太子とされるだけあり、清濁あわせのむ度量がある気配があるのに対して、三男さんはこうでなくてはならない、という理想にこだわる節がある。


施政者としてはちょっと難しいかもしれず…芸術関連や研究者としてなら成功しそうな気がする。

…ってすでに教育や研究といったものに関する事柄を任されていたっけか。


私程度で分かることは国を担う賢い大人たちには分かって当たり前か。


いや、でもそれはつまり、私の見る目が正しいということでもあるまいか。


……やるな、私。


思わずうふふ、と微笑んでしまい、バチっと殿下と目が合った。


王妃陛下そっくりの、真っすぐサラサラの金髪と青い瞳。

腰まである長い髪をゆったりと三つ編みにし、銀縁の眼鏡が知的な雰囲気をさらに助長している。


ほんと、綺麗だなぁ…王族の皆さまって綺麗すぎて、『作り物』感ハンパないのよね…。


ついじっくり鑑賞していたら、殿下が目をそらし、お茶を飲んだ。


あれ、なんかうっすら頬が赤いようだけど、暑いのかしら。


「あらー抜け駆けしている子がいるわぁ」

 

側妃殿下の声に、声のした方をみると、楽なドレスに着替えた側妃殿下と王妃陛下がメイドに日傘を差し掛けられながら、回廊からこちらへ向かってくるところだった。


慌てて立ち上がり、礼をとってお二人にご挨拶をする。


「エメレア様、セリーナ様、ご機嫌麗しゅう」


お二人がお座りになられたのを確認してさらに続ける。


「ハルト殿下の御成人、おめでとうございます。本日は良い天候に恵まれた中、成人の儀、無事行われましたことにお喜び申し上げます。そしてお披露目の際に席を設けていただけましたことに、深く感謝いたします」


深々とお辞儀をした後に、脇にずっと控えていてくれていたエミリーに目配せをする。


「こちらは、お口に合うかはわかりませんが、手土産に持参いたしましたチーズクッキーでございます。甘くないので父には好評なのです。よろしければ…」


王妃陛下も側妃殿下も鷹揚に頷いてくださったので、エミリーから受け取った缶の蓋をあけ、スティック状に焼いたチーズクッキーをトングで三本取り出し、それぞれの端を少しずつ割り、それらの欠片を食べて見せる。

毒見だ。

そのあと、その三本を王妃陛下、側妃殿下、ジュリアス殿下のそれぞれの前のお皿に載せる。


不安そうに見つめていると、三人とも興味深そうに少しかじった後、お互いに顔を見合わせ、すぐに残りを口に入れてくださった。良かった、不味いとは思われなかったらしい。


「公爵家ではこんなお菓子も食べているのねぇ。甘くなくても香ばしくサクサクしていて、こういうのも美味しいわね」


王妃陛下に褒めていただいたので嬉しくなってつい余計なことを口走る。


「これは、私が発案したもので、今日は私が作ってまいりました。お口に合って嬉しいですわ」


「あら、マリアはそんなことも?」


側妃殿下の言葉に、ぎくり、と固まった。


公爵令嬢ともあろうものが、厨房に入っていると自ら宣言してしまうとは…。


思わず俯いて、冷や汗がたらーりと背中を流れる。


「ふふ、とても美味しいです、今度はぜひ城の料理人にレシピを教えに来てください。じゃなかったら、また作って来てほしいですね、そうしたらまた美味しいチーズクッキーをいただきながら、貴女とお茶ができますから」


楽し気な声でジュリアス殿下に言われて、顔を上げると、王族の御三方は、咎める風でもなく、にこやかに私を見ていた。


はふ、と息が口から洩れて、とりあえず礼をとった。


心臓はまだバクバクしているけど、どうやら助かった。


「まだあるのでしょう?いただけるかしら?」


王妃陛下に催促され、クッキーの入った缶を先ほどからお世話してくれているメイドさんに渡す。


「マリアも座って?お茶を飲んでいくくらいの時間はまだあるでしょう?」


お礼も言ったし、お礼の品も渡したし、もう帰ろうと思っていたのにー、…とは言わない。

あくまでも、ありがたく、喜んで!の姿勢で参加させていただく。


「マリアは本当に規格外の子ねえ。なあに?クッキーの他にも作ることはあるの?公爵も最初は驚かれたでしょうねぇ」


「魔力測定を受けたいって何年もお願いし続けていたくらいですもの、厨房に入りたいって言われても、そうか、くらいにしか感じなかったのじゃないかしら」


王妃陛下と側妃殿下がきゃっきゃと私を肴に楽しんでいらっしゃる…。


私はうふふ、とか、そうですね、とか相槌を打ちながら、またしても冷や汗が止まらない。


だって…。

あまり接点のないジュリアス殿下の前でそんな話しないでー!私の評判がー!どっちも子どものときの話ですからー!


…と内心では叫んでいるけど、どのエピソードもその通りなので、何も言えない。

心の中で、悶えるだけだ。


当時、精神年齢はおばさんでも、公爵令嬢としての常識はからきしなかったので、見た目通りの子どもらしいことを随分とした。


エミリーに相談した、働きたい、というのもそうだ。


今なら、そういう働き方はこの身分では相応しくないことは良くわかっている。


お母様が公爵夫人として、実はかなりお忙しいということが、大きくなるにつれて分かってきたのだ。


ひとえに、数年おきに私達を産んでいたので、産休的に家にいただけなのだ。

お母様は貴族としては珍しく、子育てに参加する人だった。


そして下の弟も少し手が離れた今、文官としても高位の父が仕事と領地の経営を両立できるよう、お母様は東奔西走している。


ちなみに領地の方はおじいさまが今は治めてくださっているので、そんなに本格的ではないにしても、おじいさまに万が一のときはすぐに引き継げるよう、お母様がパイプ役を担っている。


お母様の働きぶりを見ていると、前世での女性議員さんのようだなあ、と思うときがある。


領民たちがより良く暮らせるようにおじいさまの視察に同行して、その様子をお父様に伝え、時にはお父様と意見を戦わせていることもあるようなのだ。


お母様、美しいだけじゃなくて、才女だったのよ。

ただ、第一子の私の子育ては女の子だったからか、激甘すぎて、危うく失敗するところだったけどね…。


「マリア嬢?」


ちょっと思考の海にトリップしていたら、ジュリアス殿下に怪訝な顔をされた。


王妃陛下と側妃殿下はまだ私の話で楽しんでいるけど、今、殿下が、外国から輸入された物語が面白かったので、貸そうか、と言ってくださっていたのは、なんとか聞き取っていた。


ありがたくお借りすることにして、その本をジュリアス殿下の侍従が取りに行っている間に、私からは今日持ってきていたお気に入りの物語の本をお貸しすることになった。


エミリーがバスケットからその本を取り出してくれて、私から殿下に手渡す。

とても嬉しそうにしてくれたので、こちらも何だか良かったなあ、という気持ちになる。


そんなやりとりを、王妃陛下が嬉しそうに見つめ、側妃殿下が抜け駆けよーと呟いていたなんて、気付きもしなかった。

 

本をお借りしたところで、いとまを請い、もう一度第五王子殿下の成人を寿いで、その場を辞した。


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