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転生したら息子も召喚って!?  作者: 十月猫熊
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28グレイ

今日の訓練は終わりにするから、部屋に戻って気持ちを落ち着かせて来い、と言うと、何も言わずにハルトは大人しく戻っていった。


その後ろ姿が見えなくなるまで二人で見送ったところで、本題を切り出す。


「アレックス、ハルトに何か言ったか」


気分は騎士団の寮の寮長。

新人の間で起きがちなトラブルを解決しなくてはいけなかったとき、だ。


横目でジロリと睨んでやると、アレックスが慌てて背筋を伸ばす。


「いや、何も言った覚えがない…本当にいつも通りだったんだ、走り込みして、素振りして、投擲して…。俺から見てもおかしくなったように見えたのは、体術の途中からで。だから師匠が来てからですよ」


「うーん、確かにいつもと変わったことはなかった、か…強いていえば弓の扱いを教えようというのが今日初めてのことではあったな」


「そういえば泣く前も、弓って言ってたような」


「泣くほど弓が嫌だったのか?そんな話聞いたことあるか?」


「無いです。むしろ、旅立つまでに全ての武器の練習が間に合うのかと不安そうにしていたこともあったくらいで。あ。そうだ。旅立ちが二か月後ぐらいになりそうで、それまで舞踏会や晩餐会が目白押しだと教えたら、目が虚ろになっていて…」


「それか」


「え?令嬢の恐怖で泣いた?」


「アホか。あと二か月しかない、と焦ったんだろうよ。間に合うのか不安がっていて、弓は今日初めて、そしてその練習期間は二か月しかなくて、なのに晩餐会や舞踏会で訓練できる日が減る。ま、とにかく不安になったんだろう」


「そうか…あいつでも不安になるんだ…」


「おいおい、一体、アレクの中でのハルトってどんな奴なんだ」


「いや、急にこの世界に来ても取り乱すこともなかったし、むしろ常に落ち着いていたくらいだし、ドラゴン討伐の話を教えられた時も淡々と受け入れていたし、師匠の鬼のような特訓でもいつも泣き言も言わないし…。なんだか、こう、異世界人っていうのは俺らと感覚が違うのかなって…嫌だ、とか怖い、とかそういう感情がないのかなと思うことがあって」


「ふーん…、そうか、そうだな。俺から見ると、全てを押し込めて、一切合切出さないように必死に堪えている子ども、なんだがな」


「そ、そうなのか?」


「そもそも、ハルトの元の世界の家族の話とか、聞いたことあるか?」


「…………ない…」


「何か一つでも零れ落ちたら、ぼろぼろと崩れていきそうで無意識に頑なな心になっているだけだろう。心を守るために。そもそも、俺からしたら、勇者になってドラゴンを倒すのも嫌だが、いきなり王族の一員になるのも相当嫌だぞ。侯爵家の息子をやるのも嫌だっていうのに…」


3男なので家は継がないし、気楽に生きるためにも騎士になったのに、騎士団長を押し付けられるし、息子のいない家からの婿入りの打診は後を絶たない。


騎士の寮に未だ住み続けているけど、何故か寮の入り口で毎日のように何人もの令嬢が待ち伏せをしているし…それは余談だが。


頭の中での愚痴を軽く頭をふって振り払う。


「まあ、ハルトも笑ったり喜んだりはするだろう?さっきは泣けるところも見せてくれたじゃないか。きっと本当は怒ったりすねたり、何かを嫌がることだって内心ではしてるはずなんだ。それを出さないのは、まだ信頼されていないのか、あの子の心の鎧がそれだけ強固なのか…。見た目が幼いのに、表向きのあの子がしっかりしているのでつかみどころがないような感覚になっているが、あの子はまだ十六歳だ。三年前のアレックスがどんなだったかをちょっと思い出してみるんだな」


アレックスが顔を真っ赤にして、プイ、と横を向く。


アレックスはガタイはいいし、真っすぐな銀髪のお陰で黙っていれば知的で大人っぽく見えるのだが、ハルトとは逆に内面はちょっと幼いところがある。


ちなみに三年前の揶揄した出来事は、この王子殿下は自分の成人の儀式の最中に、緊張のあまりに儀式の手順がとんで、しばらく固まって動かなくなってしまい、神殿の中がなんともいたたまれない空気に満たされた事件だ。


神殿内にはごく少数の神官と身内の王族と重臣達しかいなかったので、あまり世の中に知られている事件ではないが、あー緊張に弱いタイプか、と皆に印象付けるには十分すぎた。


神殿の警備でその場に居合わせたので、部下たちにも箝口令をしいたものだ。


その点、あのハルトは儀式もすんなりとこなしてみせるだろう。


あの子は何でも器用にこなすのだ。

そして、そのどれもが人並み以上。


まだ教えていない弓も、あの子の集中力でなら、すぐにものにするだろうことは想像に難くない。


弓は他の武器と違って意外と扱うのに恐怖を伴う。

顔の後ろに引いた矢を放つため、本能的に、顔の横を矢がすりぬけ、弦も音を立てることにすくむ者は多いのだ。


今日のところは見送ったのは、あの精神状態では無理、だったから。万全の調子のときに教えてやりたい。


「俺、ハルトに、旅立つときは絶対一緒に行くからってまだ伝えてない」


アレックスもバカではない。

ハルトが勇者である前に、自分達と同じ感情を持つ、年下の男の子である、と再認識し、色々思うところがあるらしい。

両手で顔を覆い、くぐもった声で呟いている。


よし、ここは年上のお兄さんとして、旅立つ前にひと肌脱ぐことにしよう。

アレックス殿下に色々と指示を出して、自分も準備のためにすぐさま行動を起こすことにした。


一日3話投稿を頑張ってきましたが、これから2話だったり1話だったりと日によって変わります。

毎日投稿は、もうしばらく頑張ります!

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