23ハルト
毎日が相変わらず充実しているので、うっかり失念してしまっていたけど、気付いたらアレックスが言っていたお茶会の日が迫っていた。
あのあと、婚約者について家庭教師にきいてみたところ。
王族の場合、王女なら10歳になるかならないか、王子でも成人のころには婚約者がいるのが普通らしい。
ということは、キースは21歳、アレックスは19歳、ジュリアスは18歳、クリスは17歳、僕が16歳。
全員婚約者がいない方がおかしいし、キースに至っては結婚していてもおかしくない、というのが正解らしい。
確かにキースは見た目もその言動も、5歳しか違わないとは思えない大人っぽさがある。
そういえばジュリアスも落ち着いていて、アレックスの方が幼く感じる時がある。
ガタイは断然アレックスが大きいのだけど。
となると王妃の息子たちが落ち着いた感じなんだな…と王妃を思い浮かべて少し納得した。
王妃と側妃は姉妹のような関係性で、幼馴染で年下の側妃が年上の王妃になついているような印象を受けたことがあった。
それにしても、彼らはおそらく降るように迫りくる縁談を、どう回避してきたのだろうか。
罠だと言っていたけど。
王命で婚約しなさい、とはならないものなんだな、と変なところを感心した。
その辺りを、朝食の場でそれとなく聞いてみると、王妃と側妃の強い意向により、王子達の気に入る娘と婚約、婚姻となるよう、周りはお膳立てしないことになっていたらしかった。
でも、それに甘えて一人を満喫していすぎて、この頃は晩餐会だの舞踏会だので、少しでも特定の娘と長く話をしたりしようものなら、偶然を装ってその娘と二人きりにされる機会を設けられたりするらしく、気が抜けないらしい。
「キースがとにかくさっさと王太子妃を決めれば僕たちにとばっちりがこないのにさ。なんで適当な娘を選ばないのさ」
「じゃあクリスはその適当な娘と一生を共にするのでいいんだな」
「いや、その、適当なっていうのは言葉のあやでさ…ほんとに気になる娘とかいないの?」
「正直、面倒くさい…」
キースの心底嫌そうな顔を初めて見てしまい、そんな顔もするのかと驚きでポカンと口が開いてしまった。
「あの、キースは女嫌いなの…?」
小さな声で隣のクリスに訊いたつもりだったけど、本人に聞こえていたようだ。
「王太子となってから、まとわりついてくる女たちが急に増えて…自分が王太子でなかったとしたら、果たして話しかけてくるものだろうか、と。彼女らの話がどうにも入ってこないし信用ならなくて」
「あー確かにそういうところはあるよな。肩書が好きなんだろうなーとか感じちゃうときあるな」
キースとアレックスの言葉を聞いてあきれてしまった。
「はあ?キースもアレックスも自分のことを鏡でみたことないんですか?みんなおそらく世の中の女の子たちが妄想する王子様の代表みたいなものじゃないですか!キースが絵にかいたような王道の王子様で、アレックスはたくましい系、ジュリアスは知的系、クリスは可愛い系。各種取り揃えているんですから。どのお嬢さんでも四人のうちの誰かは好みの範疇でしょ。そして、好きな男性にアプローチする積極的なお嬢さんはいたっておかしくない」
「ん…そういわれてもな…ハルトはまだ目の色が違う令嬢の恐怖を経験してないからな」
「恐怖…?ジュリーは恐怖を感じるの?」
「ああ…舞踏会のときダンスの途中で間違えたふりをして体を必要以上に押し付けられたり、飲み物を飲みながら話をしていたら、急に、酔ってしまって、とか言ってしなだれかかられたり。悲鳴を口から出さないようにするのにいつも苦労する」
「好きな女の子にされたら嬉しい可能性もあるけど、良く知りもしない女の子にされると、うげって思うよ。僕はキースやジュリアスみたいにはあからさまにされることがあんまりないんだけど…きっと僕は背が低いから」
「クリスは可愛いから、下手に寄ると自分のブサイクさが際立つことが令嬢達もわかっているからな。ま、俺は抱きつかれたら、ラッキーって思っておっぱい堪能するけどな。どんな性格悪い女の子のものでもおっぱいはいいもんだ」
「アレクだってそんなこと言ってるけど、いっつもダンスは逃げ回って踊らないし。晩餐会でももくもくと食べて全然しゃべらないじゃないか!」
「俺一人くらいさぼってても、他に三人もいるんだし…」
「いや、そういう問題じゃないし!」
「あーごめん、朝食の席が台無しになっちゃったね、僕の話題選びが悪かったです、ごめんなさい。喧嘩にならないで」
「ハルトは悪くないよ、知らないことを知ろうとしただけだからね。とにかくハルトの言う通り、私は女性が苦手になりつつあるのは本当だな。お見合い名目のお茶会すらなかったここ数か月は本当に気が楽だったから。でも、いつまでも逃げ回ってはいられない。本当はこの人だ!と思える人と出会いたいが、そうでなければ父上と母上達に相談して見繕ってもらおうと思っているよ。将来の王妃としてふさわしい人物をね」
目前に迫ったお茶会に対して、すっかり気が重くなってしまった。




