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転生したら息子も召喚って!?  作者: 十月猫熊
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22グレイ

騎士団長グレイ視点です。

騎士団長などという大層な役職について、そろそろ一年になる。


二十六歳での抜擢に、さまざまな陰口も叩かれた。


正直、自分でも早すぎると思ったけれど、魔物の活発化による、ブラックドラゴン発生の気配に、納得がいった。


伝承にある通りの、ブラックドラゴンが湧く前兆が、いくつも現れてきていた。


今この時期に騎士団長となると、ゆくゆくは軍と連携しての魔物の退治や、ドラゴン討伐への協力は必須となるだろう。


妻や子のいる年代の、おそらく自分より先に打診のあったであろう諸先輩方が断っている姿が目に浮かぶ。


この国はこの世界で一番大きな大陸にあり、そしてその大陸において一番の大国だ。

国土面積も国力も、この世界で一番であり、国境も、大河や山脈であるため、国境由来のトラブルもほとんどない。


周辺国もこの国同様、穏やかな気候で、農業も盛んで、飢えて戦いを挑まれることもなく。

…つまり、ここ数百年戦争とは無縁だった。


そもそもが人間同士で戦って疲弊する愚を犯すより、ある程度の周期で必ず発生し、未然に防ぐことのできないブラックドラゴンという共通の脅威に対して、お互いに協力して乗り越えよう、という意識の方が一般的には強い。


ブラックドラゴンの湧く場所は、この大陸ではないが、その周辺は瘴気が強いためにどこの国にも属さない。


どの国の責任でもなく、平等にその被害を受けるので…余談だが、国際的に駆け引きが行われるのは主に勇者についてだ。


戦争へのそなえが全くないわけではないが、そちらは軍が担当なので、私が率いている騎士団は、基本的に国の重要人物の警護と国内の治安維持の方に重点が置かれている。


組織的には騎士団長をトップにいくつもの隊に分かれており、それぞれの隊にも隊長がいるし、騎士団長の補佐役として副官も三人いる。


ある意味、隊長だったときの方が直属の部下たちの顔が見えていたし、やるべき仕事も分かりやすかった。


団長になってからは、すっかり執務室に籠って各隊への指示出しと、王族の警護が多くなってしまった。


このままでは剣の腕が鈍ってしまいそうだ、そう思っていたところ、アレックス殿下から、久しぶりに剣の指南の依頼が来た。


殿下達が幼いころ、剣の指導をしたのは私だった。


もともとアレックス殿下は、殿下達兄弟の中で一番性格も素直で単純で分かりやすく、直情型で扱いやすかったし、自分ともちょっと似たところがあり、親近感もあった。


なので、忙しい中でも引き受けることにした。


殿下が、身を守るためと王族としての最低限の嗜みとして以上に、何故?と不思議に思いつつ、久しぶりに手合わせをした。


王子殿下達はさすがの血筋で、四人とも飲み込みも早く、それぞれあっという間に騎士団に入団できるほどの剣の腕前になったので、その段階で私からの指導は終わっていた。


が、アレックス殿下はその後も研鑽を続けていたようで、体も大きくなって体力も筋力も付き、かなりの腕前になっていた。


とにかく強くなりたい、という一点張りのアレックス殿下への指導を続けているうちに、あるとき、ふと殿下が本音を漏らした。


王が勇者召喚をしている、自分ではダメなのだろうか、やっぱり努力では勇者属性は得られないのだろうか、と…。


まだ知らされていなかったのは意外だったので、異世界渡りが必須であることを教えてやると、かなり落ち込んでいた。


名誉欲から勇者になりたがったのではなく、アレックス殿下の侍従の身内が凶暴化した魔物に殺されたらしく…侍従はそんな話を殿下にはしなかったのに、休暇と侍従の様子を不審に思ってわざわざ調べたんだとか…民を守るためにも、一刻も早くブラックドラゴンを倒したい、と拳を握りしめていた。


おお、なんともいい子に育ったものよ、と半ば感心していたら、ある日、勇者が召喚されてしまったが、ヒョロヒョロした小さい子どもだった、とこれまた落ち込みながら教えてくれた。


屈強な戦士が召喚されてくるのを想像していたので、そのお供ができれば、と思っていたら、勇者はスプーンより重いものを持ったこともなさそうな少年だった、今後はせめてその子を鍛える手伝いをしたい、と…。


では、お供ではなく、勇者の右腕、冒険の仲間になればよいではないか、と言ってみたら、ぱあっと顔を明るくして、どうやらそうすることに決めたようだった。


そして、殿下をそう焚き付けた手前、勇者が望むなら自分も帯同せねばなるまいな、と腹をくくった。


そうこうするうちに、その勇者への指導もすることになった。


初めて訓練場にあらわれたハルトを見たとき…何故か、急に胸が締め付けられるような切ないような懐かしいような…訳の分からない気持ちに襲われて、困ったし焦った。


異世界人を初めて見たのでそんな奇妙な感覚になったのだと思った。


でも後日、自分でその感覚の理由に思い当たった。


異国にはいても、この国ではほとんど見ない組み合わせの黒髪と黒目の異邦人。


子どもの頃に、そのような髪と目をした外国からの使節団が我が家に逗留し、もてなしたことがあり、その中にいた、独特の雰囲気の美しい女性に、子どもながらに目を奪われたのだ。


まあ、恥ずかしながら初恋、というやつだ。

そのイメージが強いのだと思う。


ちなみにハルトは、この使者の一団にいた女性と陛下の間の子ども、という設定らしい。


かの国にどう承諾を得たのか気になるところだが、騎士程度が知るべき内容でもない。


年齢的にもおかしくないし、あのような美しい女性となら、と思わず周りも頷けてしまうだろう。まあ、男性に限ってだろうが。


ハルトと顔を合わせた最初の数回は、ハルトを質問攻めにしてみたい衝動と戦ったり、めずらしい色の髪に触らせてほしい衝動と戦ったりと、大変だった。


まあ結局いくつかの衝動には勝てず、頭をなでたり頬をぷにぷにしたりはしてしまうのだが。


でも、精霊の加護のつく少年はさすがというべきか、素直で真っすぐで、異世界に誘拐されても腐らず、その使命を受け止め、この世界になじもうと努力をしていた。


人は、真摯に努力し頑張る人をみると、応援したくなるものなのだな、と心の中で苦笑して、魔物出現の頻発に激務となりつつある騎士団長の仕事の合間を縫って、ドラゴン討伐へ向かう少年たちの指導を続けているのだった。


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