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転生したら息子も召喚って!?  作者: 十月猫熊
21/145

21ハルト

また、ブラックドラゴンが湧くと、どういう作用か、世界中の瘴気が濃くなり、普段からまれに湧いていた魔物達も莫大にその数を増やし、さらに凶暴化する。


ブラックドラゴンが湧くのは百数十年から二百数十年に一度で、その周期も一定しない。

とにかく瘴気がこごって生まれ出る、自然災害のようなものだ。


ブラックドラゴンを放置すると、命を奪いたい衝動だけを本能としてもっているブラックドラゴンに、人々は直接的にも間接的にも命を奪われる。


過去に、何らかの理由で勇者がなかなか討ち果たせず、世界の人口が半分までになった事例もあるそうだ。

そのときはこの世界各国の連合軍が勇者をバックアップしたらしい。


そして勇者が異世界からの召喚者であることは、各国の王族などのごく一部にしか知られていないことだった。


その召喚術を持ち合わせる国は、世界にほんの数か国。


この国がそのうちの一つ、ということだ。


召喚はなかなか成功せず、数か月にわたって儀式を続けてようやく、ということが多く、さらに既にこの世界に召喚された勇者がいると、召喚魔法自体が発動しなくなる。


勇者が複数人になることはない。


ドラゴンを討ち果たした後の勇者の生活…衣食住や身分などを、基本的には召喚した国が生涯保証することを、他の召喚術を持つ国が監視する。


世界を滅ぼすことができる能力を有する勇者には、ブラックドラゴンを討ち果たした後は安寧に穏やかに生きてもらおうということだ。


勇者を怒らせてこの世界を滅ぼされたらたまったものではない、ということでもある。


ただ、勇者が他国に移り住むことを希望した場合はこの限りではない、らしい。



…最後の、国が生涯を保証してくれる、などの辺りは初耳だった。


福利厚生もばっちり、老後の心配もなし。

ただし、命がけでドラゴンと戦わなくてはならない。


うーん、いいのか悪いのか…。


それと、勇者が複数人にならないっていうところ。


勇者を召喚する魔法の仕組みも良くわからないけど、勇者が二人いたらブラックドラゴンを倒すのも楽になるだろうに…。


グレイの話を聞きながら、ぼんやりそんなことを考えていると、「怖くないか」とグレイに訊かれた。


元の世界では、魔物が湧いたりしないことを、異世界召喚について知っている者は知っている。


そして、無理やり召喚させられて、いわばこの世界の災厄の尻拭いをさせられる立場の僕に対して、負い目を感じているようなのだ。


かといって、異世界からの渡りを経ないと、ブラックドラゴンを倒すだけの能力を得られないらしく、ジレンマなのだそうだ。


これは前にアレックスに聞いた。


そのときは、異世界渡りが必須でさえなければ、俺が頑張ってくるんだけどな、と複雑な顔で笑っていた。


「怖いですよ。まだ魔物をこの目で直接見たこともないし、自分の戦闘能力が低いことも、使える魔法がわずかなことも知っていますから…」


覚えたての、自分のステータスを見る魔法を発動して、確認する。

スキルもまだ何もない。

肩書だけが勇者でちょっと笑える。


ちなみに、ゲームではステータス画面で、経験値や、レベル、HP、MP、攻撃力、魔力、体力、素早さ、知力などなどが、使える魔法やスキルとともに見られたのに、現実だからなのか、ステータス画面で見られるのは、肩書、年齢、名前、一部のスキル、現在の状態のみだ。


名刺にでも記載するような内容しか見られない。


この世界では、ステータスを見るのは状態異常の確認のために使う魔法、という認識であるらしい。


だけど、実際に、その日の体調などで疲れやすい日もあればすごく元気な日もあるし、ゲームでのレベルのように、人は何かを階段状に成長するものではない。


レベルや経験値、HPやMPといった数字は、無い方が現実的なのだろう。


元の世界でだって、僕自身の体力や素早さを数値化、なんてしてなかった。

せいぜい、50m走のタイムだの、反復横飛びの回数だのから敏捷さ、長距離走で体力を推し量った程度だろう。


「怖がってくれる方がむしろ安心できる。勇者だから無敵と思いこんで早々に亡くなられた方も過去にはいたそうだし…」


怖いと答えたことでむしろグレイはホッとしたようだ。


でも、やっぱりゲームじゃないから、この世界で死ぬと死んじゃうんだな、ということを今の発言で再確認した。


今のところ、死んでも魔法で生き返る話は聞いたことがない。


まあゲームでの設定でも、戦闘不能になるだけで、死ぬ、という表現ではなかった。

だから魔法で回復できていたということか。


この世界で死んでも、ちゃんと母さんのいるところにいけるのだろうか…。


死ぬことよりも、そのことの方に不安を覚えた。


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