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転生したら息子も召喚って!?  作者: 十月猫熊
14/145

14ハルト

大きなスーツケースを引きずって観光してる人は多くないので、少し目立ったような気がしたけど、仕方がない。


母さんを連れてこられなくて残念だったな、とパワースポットと言われる辺りに近寄ってみた。


巨大な岩が草原にどん、と置かれている。


見上げていると、髪の毛が逆立つような、鳥肌が立つような…。


なんだろう?この感じがパワースポットと言われるゆえんなのか?

これは母さんも体験したら大騒ぎしただろうにな、と思っていたら目眩がした。


おっと疲れが出たかな?


そろそろ待ち合わせの駅に戻ろう…と思ったら、目の前の光景が今までと全く異なっていて、フリーズしてしまった。


観光地のパワースポットにあったのと似たような巨大な岩が草原にあるところまでは一緒なのに、その岩と僕とを囲むように…半径十メートルくらいの円を描くように…いつのまにか大勢の男の人たちが立っていた。


彼らは物凄い形相で、僕をにらみつけてきているのだ。


でも、思わず出た僕の「えっ」という声をきくと、にらみつけていた表情から一変、歓喜の表情に変わった。


涙を流す人までいる。


おじさん達の喜ぶ様を見ながら、なんだこれは、と辺りを見回してみる。


さっきまであんなにいた観光客など一人もいない。


規則正しい距離感で立っていたおじさんやお兄さん達は、その立ち位置を離れて、肩をたたきあったり、ハグしたりしている。


何だかよくわからないけど、ここはサクッとずらかろう、と思って、スーツケースを持ち直して、そーっと一歩踏み出したとたん、呼び止められた。


「どこへ行かれる、ユウシャどの!」


ユウシャ?

僕はユウシャじゃなくて悠人だからね、僕のことじゃないよね、ともう一歩進んだところで、周りの大人たちが慌て始めた。


人数も増えている。お引き留めしろ!とかなんとか騒いでいる。


周りをみても、やっぱり自分に向けられている言葉のようだったので、仕方なく立ち止まってみた。


すると、大人たちがホッとしている。


「あの、ユウシャって僕のことですか?僕はユウシャさんではないのですが…人違いでは?」


「何をおっしゃる!われらの召喚に応じて異世界より来られたユウシャ殿!」


「……………は?」


しばらく、色々理解することを拒む自分と戦った。


そういえばさっきまで周りは外国語を話す人たちばかりだったのに、このおじさん達日本語だよ…見た目はゴリゴリの外国人が、外国で全員日本語とか。どんなドッキリ?


ハッとして、カメラがないか辺りを見回す。


そして、見回したことで、人垣の切れ目から、衝撃的な光景を目にしてしまった。

そこには鬱蒼とした森があったのだ。


あの観光地に、森なんて…ない。


その衝撃で、さっきのおじさんの言葉が一気に脳内に到達した。


異世界から召喚されたユウシャ…『ユウシャ』ってもしかして『勇者』。


「はあ?!!!」


僕はへなへなとそこに座り込んでしまった。


後日、留学生が行方不明、というニュースがひっそりと流れ、クラスメイトや商店街のおじさんやおばさん達が僕の為に泣いてくれたことは…一生知ることはなかった。




生まれて初めて、馬車になんて乗った。


茫然自失してる僕とリュックとスーツケースを、これ幸いとばかりに屈強なおじさん達がひょいと担ぎ上げて、馬車まで運んでしまったのだ。


お姫様抱っこされた屈辱感…。


「お、勇者様、軽いね、うちの嫁の半分くらいかも」なんて言われてしまった。


まだ十五歳だし。

まだまだこれから大きくなるんだ、と思っても口にはしない。


状況が全く分からない今は、迂闊なことは言いたくない。


周りの人たちの言動、窓の外の景色…耳も目も最大限に情報収集につかって、注意を払う。


これが外国語だったら、ひそひそされたり早口だったりすると聞き取れなかったかもしれないけど。


やがて、なんとなくだけど、本当に僕は召喚されたらしいと思えてきた。


同じ馬車に乗った少し偉い人と思われる人と、そのお付きの人?助手?が、ようやく成功した、王陛下にあわす顔がなかったがやっと帰れる、マーヴィン様がいらっしゃらないのが残念だが…などと喜びあっているのだ。


王陛下って、僕のいた国にはいなかった、国王、王様のことだろうか…。


マーヴィンって誰だろう…。


召喚って召喚魔法だよなー普通は…。


意を決して、質問してみることにした。


こっちのことは話さなくても質問はいいよね、召喚した方とされた方だから、この世界のことについて質問してもおかしく思われないはずだ。


…本当に召喚されたのなら。


「あのー。質問いいですか」


母さんを亡くした直後の僕の周りの大人たちのように、僕をどう扱っていいのか分からない感丸出しだったおじさん達は、一瞬びくっと肩を震わせた。


え、何?怯えられてる?


「はい、なんでしょう、なんなりとご質問ください」


偉い人らしいおじさんが、笑顔をはりつけてこちらを向いた。


「まずこの国の名前とか世界の名前とかそういうの教えてもらえますか?」



結局、馬車にはかなり長い間乗っていた。


その間、沈黙に耐えられなかったのか、おじさん達は国の名前からはじまって、一生懸命に色んなことを教えてくれた。


聞いていて、やっぱりここは留学先の国ではないし、知らないことばかり…。


と思いかけたのに、何だか国名の『グラディア』は聞いたことのあるような気がするし、記憶にある地名や人物名がちらほら出てきて…おじさんに話を一旦止めてもらって、考えてみた。


いや、思い出してみた。


まさか、と思ったけど、試しにまだ聞いていない人物の名前を確かめてみる。


「第二王子の名前って、アレックス…?」


「はい!…何故ご存じで?」


「銀色のまっすぐな長い髪で、緑色の目で?」


「その通りでございます」


僕はショックのあまりに黙り込んだ。


この世界…ゲームの世界だ。


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