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目を覚ましてみると、見たこともない部屋のベッドに寝ていて、びっくりして跳ね起きた。
また転生してしまったのかと思った。
でも私が跳ね起きたことで、傍についていてくれたエミリーがすぐに声をかけてくれたので、ホッとした。
エミリーの話によると。
状況的に私が魔法を発動したのは間違いはなさそうなこと、魔力測定は後日改めて行われること、興味があるから私も見たいという側妃殿下のお言葉で、その測定は王宮内で行われること、眠ってしまったのは持っている魔力を使い果たしたからで、魔法発動をより強く肯定させること。
「そして、お嬢様をこちらまで運んでくださったのは、なんとアレックス殿下でございます!」
エミリーが頬を赤くして教えてくれた。
アレックス殿下にはまだお会いしたことがなかったのに、そんなことになっていたとは!
私がそれを聞いて頬が赤くなったのは羞恥のせいだけど、エミリーの場合は、素敵だった、なんだろうな、とチラッと思う。
絵姿で見る限り、我が国の王子殿下達は揃いも揃ってイケメンなのだ。
おっと、今の世界にはイケメンと言う言葉は通じない。
私が眠ってしまったことが分かって、誰かに私を運ばせようにも、誰に頼もうかというときに、ひょっこりとアレックス殿下が音楽室に「何の騒ぎ?」と顔を出したので、「あら、ちょうどいいわ」と側妃殿下が命じたのだとか。
アレックス殿下は側妃殿下の息子だからきっと頼みやすかったんだろう。
「女の子って軽いんだなー片手で持てそう」
アレックス殿下がそんな軽口をたたきながらエミリーにもたれていた私を抱きかかえたので、エミリーが不敬罪を覚悟で、「どうかお嬢さまをお落としになりませんよう」とお願いをしたら、側妃殿下が「そうよ、公爵令嬢を落としたとなったら、どんな責任をとってもらおうかしら」と、にこーっと微笑まれた、とか…。
その後、キリッと顔を引き締めて私をお姫様抱っこして運ぶアレックス殿下の姿は、エミリーいわく、そのまま絵画にしたいほど格好良かったんです、とのこと。
私の黒歴史ができてしまった。
今の一連の話は、私は知らなかったことにさせてもらおう。
魔力切れで眠っていたんだし。
私が目覚めたら、側妃殿下へのご挨拶はいいから帰って良し、という話になっていたそうで、エミリーと一緒に控えていてくれた側妃殿下のメイドに、お礼とご挨拶をことづけて、その日は帰った。
後日、私の魔力量と属性を調べる魔力測定を受けるために、王宮にあがった。
今度は、お母様も一緒だ。
案内された部屋で待っていると、測定技師や側妃殿下、さらに王妃陛下までが来て、私の魔力測定が始まった。
王妃陛下と側妃殿下は私の測定の様子を見ながら楽し気に話をなさっていて、お二人より若いお母様も話に混ざっているけど、お母様は珍しく緊張しているようだった。
測定はかなり長時間にわたるもので、途中休憩として王妃陛下と側妃殿下と私とお母様でお茶をした。
私が念願の魔力測定が受けられて、嬉しさのあまりに、のびのびとかつ無礼にあたらない態度でお茶を楽しんだので、お母様の緊張も少しほぐれたようだった。
そしてさらに驚くべきことに、その日、私は王妃陛下と側妃殿下から名前で呼んでもいいという許可をいただいたのだ。
「私のことはエメレアと呼んでね」
「あら。私のことも、セリーナと呼んでちょうだい」
王妃陛下が言い出したら、側妃殿下もすぐにいたずらっぽく笑いながら同調してきたので、頷いた。
断れる類ではない、『王族のお願い』というやつだ。
その日、半日以上かけて調べた結果、私の魔力量は多く、今後鍛錬をすることでさらにかなり増やすことも可能だろうということだった。
属性は複数属性もちも少なからずいるので、全てを調べていった結果、基本的には聖属性で、レベルとスキルが上がると、聖属性の召喚魔法も使えるようになる、そして水属性と風属性も持っているので、それらの魔法も使える可能性がある、だった。
そして魔法を発動させる方法として、一般的な詠唱の他に、私のオリジナルの能力として歌うこと、があった。
「さすがマリアね!複数属性持ちだなんて。さあ、私達は公爵夫人とマリアの魔法の今後について話し合いますから、庭を散歩してらっしゃい。中庭に新しい花のアーチを作ったの。後で感想を聞かせて欲しいわ」
王妃陛下に言われて、はい、とお辞儀をして、大人しくエミリーと中庭に向かった。
何か大人の話し合いがあるのだろう。
測定中もさんざん大人だけで話していたような気もするけど。
中庭に新しくできたという花のアーチは見事だった。
つる性の草の花で、バラのように木ではないため、シーズンが過ぎると葉っぱすら無くなるものだろうが、今は薄紫色や白の大振りの花がたくさん咲き乱れている。
脇にあったベンチに座ってしばらくぼーっと花を眺めた。
正直、疲れていた。
エミリーがポケットからキャラメルを出してくれたので、甘さに癒されながら、気を抜いて、ぽわん、としていた。
その姿を、三階の窓から複数の人間に観察されているなんて気付きもせずに。
「母上達の言いつけの、見ておくようにっていう子はあの子か。なんだか母上達がすごく気に入ってるとか」
「あーこないだ寝てるとこを運ばされた子だ。軽かったぜ」
「そのあたりのいきさつ、後で教えてもらおうか」
「そんな大した話じゃないぜ」
「とりあえず僕は歳も近そうだし仲良くなれそう」
「…………可愛い…」
「「「!」」」
どこからか、急に男の人達が騒ぐ声が聞こえた。
慌てて辺りを見回したけれど、すぐにその声がやみ、なんだろうと思っていたら迎えの人が来たので、それ以上は詮索もせずお母様たちのところへ戻った。
そして私は王家のはからいで、女子にもかかわらず、週に一回、自宅に魔法の勉強のための家庭教師が来てくれることになった。
しかもそれは王子殿下達に魔法を教えている先生で、さらに、側妃殿下の歌のレッスンのときに、私も一緒に歌のレッスンを受けることになった。
こうして、私は月に何度もお茶会だけではなく歌のレッスンのためにも王宮に向かうことになり、王妃陛下や側妃殿下のことはエメレア様、セリーナ様、と呼ばせていただいて、この上なく懇意な仲となった。




