906件目【ユイ「心の中がザワザワする……」】
「さっきから本当に失礼なガキ達だね。これがあの兄の経営している事務所のアイドルってことなの?こんな常識知らずの女達が売れるなんて……世も末だよ」
「あっ?テメェ、ナメた口を聞いていると本気で殺すぞ?こっちはテメェ等のことをいつでも殺せるんだぞ!?分かってんのか?」
「藤華、話し合いだから。まだ話し合いが始まっていないのに怒ったって仕方がないから。一旦座ろうか。席に座るのは私と………未來にしようかな。今のところ、落ち着いて話せそうなのが私を除いたら未來以外に居なさそうだからね。水月も珍しく、表情が険しくなっているし」
「今日はちょっと降りるわ。こんな奴等と対面で話していたら、いつ殴り掛かるか分からん」
「ぶん殴っちゃえよ。もう」
「そうやってすぐに暴力に走る。どういう教育をしているんだろうか?学校も、事務所も、ましてや親に関しても……」
「このアマぁ………!」
「調子こいてんじゃねぇ………!」
「藤華、水月、2人も私の言葉が通じないのかな?」
「うん。藍華が大人しくしててって言ってるんだから。大人しくしないと駄目なんじゃないのかなって。私もそう思うよ。柚依と咲希だって大人しく立って待っているんだから。あっ、後ろの方にパイプ椅子あるから、それ持ってきて私と藍華の後ろあたりにでも座ってスマホでもいじっていればいいんじゃない?私達の話は聞かなくても特に問題は無いから。何かあった時にいつでも動けるようにしてくれれば良いから。余計なことは………止めてね?」
「は、はい………」
「わ、分かった………」
未來の冷たい視線と共に藤華と水月に放たれた鋭く研がれた言葉。その台詞を聞いて、2人の怒りで赤くしていた顔が一気に真っ青になった。
目の前の2人も私達の威圧を感じたのか、俯いて少し震えているようだった。
「では、あらためて。話し合いとさせていただきましょうか♪」
「何が、望みなんだ」
「兄さん、コイツ等に渡すものなんて何一つとして無いよ。あの馬鹿の差し金で、アイツの言いなりで動いているだけだろうから。こんなクソガキ6人を送り込んでくるなんて……ナメられたもんだと思うよ」
「お前も落ち着け。状況をちゃんと捉えるんだ。あれだけの銃声が聞こえていたのに、コイツ等は傷一つ負っていない。何よりも………目の前に居る鵺島藤華。コイツだけ血を誰よりも浴びている。おそらく、俺達が雇ったボディーガードの全員を鵺島藤華一人で殺したっていうところだろう。あの銃声は鵺島藤華が放った銃弾だっていうのは少し考えれば分かることだろう」
「だから、なに?」
「今は鵺島藤華には凶器を持っている様子はない。しかし、これがそのまま拳銃を持ってきて俺達の前に乗り込んできたとしたらどうだろうか?話し合いができないとなれば、容赦なくボディーガードの二の舞になっていたことだろう。お前は確実に……真っ先に頭を撃ち抜かれていたことだろうよ。そうやって喋れるのは鵺島藤華の気紛れ……その気紛れによって寿命が無くなったと考えるべきだ」
「なっ…………!」