114件目【死屍累々】
「さて、今日は先生方の方で少しトラブルが発生したので………今日は自習という形にいたしましょうかね。授業の範囲は僕達のクラスは進んでいるから、少しくらいは自習の時間を取ってもいいかなと。寧ろ、この自習を使って各々の独創性や創造力というのを培っていってほしい。けど、題材は絵画限定にするね?それと、水彩画か鉛筆画のどれか………それでお願いしてもらってもいいかな?僕は今から職員室に行ってくるから。終わりまでに戻ってこなかったら、そのまま解散っていう形で大丈夫だよ?」
モブの癖によく喋る奴だな。名前の無ぇモブが職員室に行くだけでダラダラと長台詞を喋ってんじゃねぇよ。
ヒョロガリが居なくなったのを確認してから、クラス全員でそれぞれのグループで話し始める。私の席は男子2人と私と千柰都の4人なので、男子2人は男子で話して、私と千柰都は2人で話していた。
「アイツ、生徒デスノートとか書いてるのに、私達にあんな感じで優しく振る舞えるっていうのが恐怖でしかないんだけど。本当にああいうタイプは苦手だよ。苦手どころか、本当に同じ人間として生きているのかが謎」
千柰都ちゃんは意外とハッキリ物申す性格でもありんす。
「千柰都みたいに裏と表がどっちもハッキリしている方が珍しいんだよ。表裏一体っていうのかな?」
「そーかな?あ、そういえば………ちょっと秘密の話。周りに聞かれたくないから、ちょっと教室の奥の方に移動しよう」
「お、おぉ………?」
私は千柰都に連れられて教室の、美術品やら道具が入った段ボールが山積みになっているところに移動した。
私と同じくらいの大きさのダビデ像のレプリカと段ボールが間に入って、そこにしゃがんで千柰都と話す。
思い切りダビデ像のダビデの部分が後頭部に当たってるんだが。材質は紙粘土とかなのに、何でだろうか?何かと複雑な気持ちになってしますのは。
ここまでリアルに作らなくても………てか、なんでダビデ像を作ろうと思ったんだろ?先代の美術を受けていた生徒は、美術部っていう可能性もあるが。
本当に美術のセンスがずば抜けている人って、本当に拘るところとか題材を選ぶセンスとかっていうのが常人には理解できないよね。だから天才と呼ばれる部類に入るんだろうけどさ………
「ど、どうしたの?秘密の話って」
「実はさ…………私、一般公募で受かったんだよね。藍華達の居る事務所のアイドルのオーディションっていうの?」
「あっ、えっ?あれ、受けたの?しかも、受かったの?」
「うん。社長からグランプリにしてもらった。私がトップバッターで色々とやったんだけどね。他にも2000人くらい受けてた人が居たんだけどさ………終わった後にマネージャーの女の人に「社長からお話が」って言われて、そのときに「君がグランプリだ。正所属を確約しよう」ってその場で契約書書かされた」
「あー、そういうね………」
確かに、あのオーディションを千柰都が受けていたなら受かるだろうなって思っていたけど。
社長、そういう出来レースみたいな真似は止めろって言われてるはずなのに………
オーディションには審査員として参加していたんだろうけど、その契約書を書いている間は由利さんに任せたんだろうな。