1037件目【ヒト娘プリティーダービー・中山競馬場】
『そして、最後に入場してきたのは……………2人!白ヶ峰遥華と黒崎藤華だ!この2人は陸上部出身!お互いにライバル関係!白ヶ峰遥華の方は中学時代に1年から3年の間に掛けて全国大会三連覇!黒崎藤華は実力が高すぎて高校時代からは大会出禁という……本物の化物コンビがレースに嵐を巻き起こしに来たぞ!』
「「「シロォォォォオオオオ!!!!」」」
「「「シロちゃぁぁぁぁんっ!!!!」」」
もう、お客さんからアダ名付けられている………すげぇな、遥華。今日が芸能界に関わり始めてから初日やぞ?
ガチモンの異端児じゃねぇか。
知名度に関しては一般人の割には比較的に高い方なのかもしれないけど、これだけガッツリ芸能人に囲まれていても遜色無いっていうのは異例だよ。
芸能界って本当の天才っていうのは何人も埋もれる世界とは言っても、その天才が天才すらもビビるようなレベルだったら、必然的に引き上げられるっていうことか。
藤華という天才と、由利ちゃんと姉ちゃんという2人の天才が「半端無い」っていう評価をしているわけだ。
売れなきゃおかしいよな。
既に売れるっていうのが見えているよ。
『観客の皆様!私はまだ芸能人としての活動はしておりませんが、これからは正式に活動していくことになりますので!これを機会に私のことを名前だけでも覚えてくだされば幸いです!よろしくお願いいたします!』
「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」
「「「可愛いぃぃぃぃぃぃ!!!!」」」
「「遥華ちゃぁぁぁぁんっ!!!!」」
「遥華、めっちゃ人気じゃないか」
「へへーん」
『さぁ!そろそろレースの方が始まる時間になりました!出走者の方は各々指定のゲート待機してください!』
遥華のヤツ、マイクパフォーマンスまで完璧じゃないか。
素人技とは思えないな。本当に芸能界とか、そういう人前に立つ仕事の経験が今まで無かったっていうのが怪しくなってくる。
ある程度慣れている人間でも、ここまで観客を引き寄せることなんて難しい。これが私みたいな凡人と天才の差かって実感するしかないよ。
観客を湧かせた後、ゲートで待機している私の左隣のゲートに遥華が入ってくる。相変わらず鼻息を荒くして「全力でおねがにゃいしにゃにゃ!」とかみかみで私に言ってきた。
興奮しすぎて何を言ってるのか4割くらい聞き取れなかった。
私の右隣には藤華が全部ブルッ!と震わせてからゲートに入ってきた。
武者震い……なんだろうけど、人間じゃなくて動物にしか見えない動きだったな。本当に馬が憑依したのかと思った。
私と遥華の方をチラッと見ると、何も言わず正面へと視線をズラす。
他のメンバーも続々とゲートに入ってスタートの合図を待つ。特に皆から緊張している様子は感じられない。私も緊張はしていないんだが……両隣からの圧が半端じゃない。
私、殺されるんじゃないのかなって思えてきましたわ。
『全員!ゲートに入りましたね!では、そろそろお時間となりました!ワルキューレpresents"ヒト娘プリティーダービー・中山競馬場"………』
(負け戦なり)
『スタートです!』
実況の掛け声と共にゲートが開く。
勝つのは藤華か遥華か………どちらなのでしょうか?