102件目【魑魅魍魎】
「蠱術か何かって感じですかね?蠱毒を持った虫を作り出して、それを誰かが使役して桐生の首元を噛ませたっていう見解でよろし?」
[うん。そういう類いのことは私は詳しくないから。そういうのなら藍華が結構詳しいかなって思って。それで藍華に電話掛けたんだよ]
「なるほどっす~」
蠱術っていうのは、容器の中に毒虫を沢山詰め込んで、そこで虫同士のサバイバルを行わせる。そうして生き残った1匹が死んだ虫達の無念やら憎悪などを抱えて、その生き残った虫の毒性は更に強まる。
太古の中国から使われている呪術の一つで、歴史としては相当古いものになる。虫を扱うYouTuberの中でも同じように蠱術の真似事をしている人間はチラホラ居る。
それを使役するってなると、また特別な力が必要になってくるからね。使役する力が無ければ、毒性が強まっただけの1匹の虫に過ぎない。
その虫を使役した人間はおそらく、その虫を呪術の道具として遣うだけでなく、更に自分の能力を使って毒性を更に強化させているはずだ。
由利ちゃん曰く、検死の結果……毒が回り始めてから30分足らずで絶命に至っているようだった。
猛毒の薬品と言われている青酸カリですら、致死量を摂取したとしても、死亡に至るまでは1時間ほど掛かるとされている。
コナンのように致死量を摂取したからと言って、秒で即死に至るような毒は世の中に存在しない。どんなに毒性が強くても1時間弱は死亡するまでに掛かるものだ。
それの半分の時間と考えると……王水なんて目じゃないくらいの超猛毒というところか。
「で、虫の方はどうなってるんですか?」
[さっき社長から聞いたんだけど、桐生の死体の首元にムカデの死骸があったらしい。そのムカデの口元から桐生の血液も付着していたから、そのムカデが桐生を殺したっていうのは確定しているみたい……]
「………………犯人の目星は?」
[それがまだ付いていない。やっぱり殺したのは虫っていうだけあって、足取りが掴めていないんだよ。警察も虫1匹で30分で絶命なんて考えられないから、他の要因による自殺っていう見方をしているようだから]
「人が死んだのに適当なんだな、警察の方も」
[シンプルに面倒臭いだけだと思う。完全犯罪を解明するなんて、そんなことに注力する人間が珍しいよ]
「そうだけどさ~。でも、警察の方は別に何にも信用してないけどね~。そもそも、未來との繋がりからあるから私達の詐欺紛いも取り締まらないようになってるわけだし。その闇の恩恵を私達はしっかりと受け取っている人間達ですからね~」
「未來、どうやって警察と繋がるの……?」
「色々とあるんだよ。私は直近の身内以外っていう以外にも"血筋的"にも色々とあるからさ……色々あったから、ちょっと身内からは冷たく扱われているだけで。それでも、協力者が居たから。その結果が………警察とか色々なところに広まっちゃってた」
[そ、そんな軽いもんじゃないでしょうしょ、未來の人生。………未來以外の2人もだよ?"家"のことには本当にバレないようにして。今回の一連の騒動の事よりもバレちゃいけないことだから]
「分かってますよー。それは私達が一番分かってるから一番気を付けてますから。ご安心を」
あっ、やべっ。屁ぇ出たわ。