03:旧時代の遺物
今回ソラは正直ダメもとでここに来た。政府に勤めていたため、この家の存在は知っていたし、ここの人物が政府が支援として送っていた課題を難なくこなしていたことも知っていた。その支援の中に勇者が世界を救うという議題で送られていたものがあったことを知っている。
本当にここに住んでいるのは、デバイスを埋め込まれていない出来損ないと言われている人間なのか疑ったこともあった。
だが今回話をしてみて、相手にとっては何の利点もない提案だったが提案を飲んでくれたことで確信へと変わる。
(ここにいるのは傑物だ……)
これで本当に魔王にも勝てるかもしれない。そんな期待さえできる。
「ですが私はその、デバイスを埋め込んでいないため魔物が見えないのですが」
「ああ、それはご安心下さい」
魔物は、デバイスを埋め込んだ人間が見えるAR技術を利用しているため、手術をしていない彼からしてみると何も見えない状況になる。
「こちらを利用して下さい」
取り出したのは旧世代の遺物である、サングラス型のAR機器だ。まだ埋め込みの手術が行われいなかった時代に使われていたもので、本来は骨董品という扱いで博物館に飾られている。
まるで見慣れたものをみるかのような態度。手慣れた動作で顔に付け起動させる。
「もしや、使い方をご存知で?」
「え? ああ、よく知ってますよ」
まさか歴史にも造詣が深いのか。能力だけでなく知識の深さにも驚く。
「それで私は何をすればいいのですか?」
「はい、それを利用して僕たちに指示をして下さい!」
「指示?」
「はい、僕が貴方の指示通り動いて、魔物を倒す。そういった形です」
「ふむ……」
彼は少し悩む。
「失礼ですが、私は貴方が何をできるかすら分からないのですが」
「あ、これは失礼しました!」
しまった、こちらの常識に照らし合わせて話してしまった。デバイスを埋め込んでいない人間からすると分からないことも多いのだろう。
「私はLv1の剣士です。先ほどのデバイスを使用していただくと剣士のスキルが閲覧できると思います」
「んー……ああ、できました」
流石だ。手慣れているだけあって操作が速い。
「Lv1ですと……通常攻撃だけですかね?」
「はい、スキルポイントがないので通常攻撃だけになります」
「……まあ、やってみましょうか」
「お願いします!」