33:こんにちワーク
本来仕事というのは、おいそれと変更することは出来ない。
仕事は本来、幼少期から学生の間に決める。AR技術によりどんな人間でも、ある程度のレベルまで成長できるようになったが、それでも適正というのは存在していた。
例えば筋肉がつきやすい人は力仕事に。例えば話がうまい人は芸人に。そういった形で職業が決まっていく。
その中でやはり大人になってから仕事を変えたいと思うときが、極少数だが発生する。その時に使われるのが【こんにちワーク】だ。
【こんにちワーク】では様々な職業紹介をしてくれており、また新しいジャンルへ挑戦する人間には職業訓練もしてくれるという。優れた職業紹介施設だ。
なのでソラのように、本来の仕事が戦いに向いていない人間は今回の騒動で戦いに向いた職業に変更したものも多い。
「旦那さんは、【こんにちワーク】にいって職業変更はされないんですか?」
「それが……おれは今までコレ一本でやってきたから、他の仕事の仕方は知らないと……」
職人みたいなことを言っていた。いやこの時代に料理人は、かなり職人よりな仕事ではある。
しかしそこでふと疑問が生まれる。
「ソラ。戦闘職以外の人間は、どうやってレベルを上げているんだ?」
「え? それは……頑張って魔物を倒してではないですか?」
そんなはずがない。数々のゲームをやってきた俺の勘がそう告げている。もし本当にそうなら所謂、職人系のジョブに就く人間が減ってしまう。そんな戦闘職だけが優遇されるような仕様にするだろうか。
いや、そんなことはしない……
そもそもこの技術を作った【川上春樹】は、ゲームが全盛の時代の人間だ。今の人間が作ったならまだしも、その時代の人間がそんな仕様のゲームを作るはずがない。
なら……
「奥さん、良ければ旦那さんをコチラに連れてきてくれませんか?」




