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02:世界を救うもの

「ん?」


 家の中でダラダラと過ごしていると、この家にだれかが近づいてくるのが分かった。勿論、特殊な能力があるわけではない。


 ひと昔前に流行った旧時代の探知機のおかげだ。ここは立地上、正規の道を通ってこないとかなりの山道を通ることになる。そのためこの家に来る場合は大体の人間がその道を通る。そこに探知機を置いておけば自然と誰かが来ることがわかるといった仕組みだ。


(意外と旧時代の物だと気づかず探知に引っかかるんだよな)


 骨董品が故にバレにくい。そんな利点があって今も使い続けている。


「はあー、やだなぁ。多分働けって政府からの指示だろうなあ」


 俺はこの時代には珍しくデバイスの手術を行っていない。それも生まれたときに病気が判明し、手術に体力が持たないと判断されたためだ。まれにそういった人間がいるらしい。


 そういった人間は社会に組み込まれずこういった山奥に隔離される。政府もそういった人間を保護するという名目で市民から金を集めているらしい、寄付金というやつだ。


 だけど最近、世間の情勢が変化したらしい。らしいというのはその動画を後で見たためだ。デバイスを埋め込まれていない人間は能動的に情報を集めないと情報弱者になる。


 他人を助けている余裕がなくなった世間は、こんな俺にも働けとそろそろ言い出すと思っていた。はーやだやだ。


 家の外に出て待つ。外で待っていることで少しでも好印象を持ってもらうためだ。やがてかなり若い人物がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。距離が近くなり声をかける。


「やあ。こんにちは」


 相手が若いため少し大人ぶって声をかける。会話でイニシアチブを取るには最初が大事だ。


「失礼ですが、貴方がヤマトさんでしょうか」


「いかにも私がヤマトです」


 相手はこちらの情報を知っていた。やはり政府の人間だろうか。


「はい、是非ヤマトさんには世界を救っていただきたく、こちらに来ました」


(……え? どういうこと?)


「……立ち話もなんです。よければ中にどうぞ」


 これがもし相手の戦略だとしたら、圧倒的にこちらの負けだろう。家に入りとりあえず話を進めることにした。

 

「それで世界を救うというのは……」


「はい、実は僕はこういうものでして……」


 出されたのは名刺、やっぱり政府の人間だった。騙された。


「実は政府より、ヤマトさんに協力を仰いでこいと言われました。ご存知の通り今世界ではデバイスを埋め込んだ人間は、ほとんど無力な状態となっています。そこでデバイスを頼らずに生き残っているヤマトさんに一縷の望みを託して、この場に参上した次第です。」


「うーん、そうですか……とは言っても世界を救えと漠然と言われても……」


 そもそも世界を救うってなんだよ。俺にとっては隣の国の話みたいなもんで、特になにも被害は出ていない。


「話に聞くとヤマトさんは何度も世界をすくためのシミュレーションを行っているとか。あちらの旧世代のテレビを使って。」


ゲームの話か? ゲームなんて誰でも世界救えるだろ。


「ヤマトさんには十分に僕たちに指示を与え魔王を倒せると踏んでおります! どうか僕たちに力をお貸しください!」


そういって頭を下げる。


(うーん断ってもいいんだけど、支援が打ち切られるのも痛い。ここは適当に頑張って、頑張ったけどダメだったって感じにしよう)


「分かりました、微力ながらお手伝いさせていただきましょう」


「ありがとうございます!」

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