21:想定外
「おらぁ!」
殴り合いは一方的だった。
(なんだこの弱さは……)
体型がひょろく、本当に殴り合いが強いのか疑問だった。だがあれだけの自信、なにか秘策があると思って警戒をしたが今のところなにもなし。それどころか顔がパンパンに腫れあがり前すら見えなそうだ。
(同情を誘ってって考えてんなら、上出来だ)
殺し合いをしているはずなのに、さすがに惨めすぎて気が引けてきてしまうくらいボコボコだった。相手はついに立っていられなくなり、ぐにゃっとする。
「お、おいおい……」
死んだか?
「まだ……」
こんな状態になっても、まだ闘志が消えていないのは凄いがさすがに無理がある。もう一人では立てないだろう。
「ひと思いに、そろそろ決着をつけてやるよ」
「まだ……こない……」
そんな時、ヒュゥゥゥゥゥゥと一陣の風が吹く。
「なっ――ばかな、まだ時間まではあるはず!」
まだフィールドボスが現れるには時間があったはず、だから表で決闘をすることに承諾した。多少出現時間に誤差はあることもあるが、それでも5分以内程度だ。
(それが、30分も早いだと――)
まずい、早く逃げないと。そう思い踵を返そうとするとジャラと腕に付けた手錠が音を立てる。
「あ?」
そうだ、俺は今決闘中で手錠を付けた状態だった。
「おい! フィールドボスが来る! 早く手錠を外せ!」
「……いやだね」
「――は?」
こんな時に何を言っているんだ。
「おいふざけんな! 俺はお前とここで心中するなんて御免だぞ!」
「……ふざけ、てるのは。そっち、だろ……今は、決闘中だ。逃げるのか?」
こいつ――!
「ああ、だったら望み通り殺してやるよ!」
殴るのを再開する、先ほどの風が吹いて1分程度は余裕があるはずだ。そこで止めを刺して――
ドシン、ドシン、ドシン、ドシン! ドシン!! ドシン!!! ドシン!!!!
あ――死んだわ