14:ヤクザ
決して枠に捕らわれない、そんな戦い方だった。僕では思いつきもしなかっただろう。
拡張現実という枠を飛び越え、リアルに対して攻撃を仕掛ける。なぜそんなことを思いつけるのか、不思議で仕方ない。
死体を運ぶこともそうだ。
戦闘終了後の死体を運ぶことは、ない。なぜなら魔物の死体は残らないからだ。いや仮想現実においては、存在していない。
彼の言い方に揃えるなら、PvEとPvPは戦い方が違うという。その違いを身をもって教えてくれたのだろう。
「おすすめされた?」
「あ、ああ。知り合いが、人間を殺すのが経験値集めになっておすすめだぞ、って」
「ちょっとその人物のことについても教えてもらおうかな」
「いや、それはちょっと……」
「ヤマトさん、恐らく西東組です」
「西東組?」
「はい、以前まではもう少し東側を拠点としていた団体なんですが、最近この辺にも勢力を伸ばしていると聞きました」
「ヤクザですか?」
「……そうです。さすがヤマトさん。ヤクザをご存知なんですね」
「ええ。以前そういったジャンルもやったことあるので」
「聞く話によると経験値を上納することで、身の安全を確保して貰っているとか」
「ああ、なるほど。そういう仕組みですか」
ヤクザ。地域差はあるものの大体やっていることは同じで、周辺地域を取り仕切る人間たちだ。
「つまりこの男は、そのヤクザに経験値を上納するために、我々を襲ったということですか」
「ち、違う! 俺はヤクザの傘下には入っていない!」
「では、なんで我々を襲ったのですか?」
「知り合いにおススメされたんだ! 人殺しは経験値を貯めるのに効率がいいって! リスクも少ないって聞いてたんだが……」
「そうなんですか?」
「いえ、特に経験値の効率がいいというのは聞いたことありません。」
「じゃあこの男性は、騙されたってことですね」
「そ、そんな――」
ガクリとへこむ男性。