六話 冒険者
この世界に来てから俺はなぜか早く起きる。悪夢を見てしっかりと寝れないのだ。
すぐに部屋の外を確認して転生したことを確認する。
生前の記憶が蘇るのだ。後頭部の痛み、トラックが迫る恐怖、絶望感、そして何より美玲を守らなければという使命感と守れなかったという悲しみ。
迷宮を出て宿にいても思い出しては布団を頭から被る。生前中二病を発症していた俺の頭の中では都合の良いことばかり起こっていた。世界を救ったり、特殊能力でイキったり。だが都合はそこまでよくない。今の俺だって別に強くもないし全軍命令も、中二病の発展でやった。魔法だって俺がすごいわけではない。種類は確かに多いが、全然強くない。威力で言ったらリーンの方が断然だ。そもそも言ってしまえば俺があの迷宮を統べる資格がない。
統べる?違うな。いつ俺があの迷宮で天下を取った?天下を取ったのは美玲だ。いつも控えめなマイレは正しい。俺は間違っている。
心の中は第二の人生に燃えているし、やる気に満ちている。落ち着けと自分に言い聞かせても実際は無駄なようにやる気ではどうにもできない。いくらやる気があっても体が動かない。
「ミュー様!大丈夫ですか!ミュー様!汗が酷いですえっとこういう時は...人口呼吸?いやいや。それは...」
そんなマイナスな考えがぐるぐると回ると思ったらいつもリーンが起こしてくれる。
俺は泣きそうな涙腺を我慢しながらリーンの頭を二回撫でた。
彼女は俺の世話をしてくれる。ついてきてくれている。孤独じゃないだけ俺は幸運なのかもな。
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冒険者としての一日が始まった。森に出向き、薬草を集めるだけだ。そう思ってカイルと合流した。
「おはよう二人とも。紹介するぜ。こいつが俺の相棒恐竜。シェミルラプトルだ。」
紹介として出された恐竜は70cmほどの大きさで、思っていた大きさではないようだ。
「か...カイル。恐竜ってのは全種こんな大きさなのか?」
生前見た映画ジュラ〇ック〇ールドの恐竜はこんなもんじゃなかったはずだ。3Dで見て迫力のあまり俺は体が震えた。恐竜という種が全てこの大きさなら正直この男といる価値はもうないに等しいだろう。
「いや。もっとデカい奴はいるぜ。軍用だと5mを超えるやつがほとんどだ。レックスZという伝説の恐竜は6m代で封印されてるって噂だぜ。かっちょいいだろ?」
なるほど。覚えておこう。ドワーフ王国は恐竜大国なんだな。
「ミュー様。早くペンゾウを採集しに行きましょう。早く次のランクに進まないといけませんから。」
リーンナイスフォロー。
「なあ?リーンちゃんはなんでミュー様って言うんだ?そういうプレーか?朝聞いたぜ。リーンちゃんの叫び声と、「ダメですぅ」って声がな。朝っぱらから激しいねぇ。」
...撫でたときのやつか。
「///いや。その。違うんです。別にそんな変なことは...ううう。」
「ふん。中二病で嫌われ、キモがられてきた俺がこんなかわいい子を抱けるわけがなかろう。」
あ、やべ本音が出た。
「中二病?...確かにな!はっはっは!そりゃあそうだ。じゃっ森に行こうぜ」
チっこいつ。抜かりないな。
「か...かわいい...?///」
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「な...なあ。もうよくないか?」
「何を言ってるんですか?まだまだです。」
「ミュー?なんで...なんでそんなに見つけられるんだよぉ。」
後ろでカイルが嘆いている。
「ふふふ。俺は鼻が利くんでね。」
「にしても利きすぎだろ。次から次へと見つけてる。そういう魔道具か?そうなってくると二級...いやモノによっては一級だぞ?その性能。」
残念だが俺は違うのさ。
「獣人だからね。野生の感って感じ?」
俺の獣人のイメージってもっと毛むくじゃらのイメージだが、俺は人間肌に獣耳を持ってるだけ。だからフードで隠したら人間にしか見えない。
「あっという間にもう今日のノルマクリアだ。さあ帰ろうぜ。えーっと確かこっち...え?あ?おかしいな。」
カイルの後ろをついて行ったらなぜか村にたどり着いた。
「は。え?こんなところに村はないはずなんだけど。おっかしいな?」
「ほんとですね。私も見てましたが地図上にこんな村はありませんでした。ミュー様。あの村を見てください。争いの痕が多く残っています。行ってみましょう」
カイルが嫌そうな顔をしたがリーンは行く気だ。
「ふぅ。わかったよ。ラプトル!偵察に行ってこい。」
偵察に恐竜か。面白い使い方ができてる。俺も正直欲しいな。
「よし。鳴き声がないってことは異常なしだ。さっさと行こうぜ。」
カイルが先陣を切って進んでいくが...妙に静かだ。畑や道は壊れているのに人の匂いが濃い。
「おー-いラプトル?フュ!どこだ!やばい。ラプトルがいなくなった。」
ほらやっぱり何かが起こった。
「探してみましょう。探せばいるかもしれません」「いや。俺の口笛に受け答えできるように教えてる。」
昔俺のクラスメイトにも犬に調教してたやつがいた。確か失敗して噛まれたって言ってたな...不安でしかない。
「一軒一軒確かめてみよう。」
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「おい。なんだよこれ。隠し扉か?なんでこんな村に。」
隠すように扉はカーペットに埋められていた。そしてその下は階段で先は暗く見えない。隠すってことは何かやましいことがあるってことだ。
そう考えた途端に寒気が俺の背中を走る。
自慢じゃないが、俺は耳も良い。この二人が聞こえない音も俺は聞こえる。
そんな俺は聞こえた。男の声だ。唸り声に近い音がなっている。
「誰かいるな。音がする。」
「へ?そんな音...確かに言われてみれば。音楽もなってるような。」
「確認してみましょう。カイルさんは後衛。私とミュー様は前衛をお願いします。」
「ごめん。俺戦闘経験無...」「さあ!行きましょう!」
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「匂いの感じだと男二人。内一人は寝ていますね。いびきをかいている。あと魔物らしき匂いが一匹。」
「かしこまりました。偵察感謝します。私が男二人をミュー様は魔物をお願いいたします。カイルさんは見学でもしといてください。」
「見学って...でも魔物の所持は違法だからな。犯罪グループのアジト。もしくはその仮拠点かもな。」
俺は慎重に階段を下りていく。どうやらリーンが最初に乗り込むようだ。どんな隠密行動を。「死ね!下等害虫め!」
勢いよくリーンが飛び出したと思ったら氷魔法の氷結塔槍を撃った。この魔法は家一つ分ほどの大きさの氷塊を出現させるもの。
「ぐあああ。何者だ!ギャぁ!」
地下にあった拠点は地上に吹っ飛ばされた。
「やりすぎやりすぎ!なぁにやってんの!」
あいつらは氷の中に閉じ込められている。死...そんなものを目の前にしている人間を見て悲しみや焦りが全くない。
キィィィイン
!
「地上から人の音がします。急いで外へ!」
階段を駆け上がるが、外に出た瞬間刃物を持った男に囲まれた。
「ワンコは毛皮は金に換えてやれ。男は奴隷へ売り飛ばして...女はお楽しみかな?」
なるほど。こいつらも仲間か。
「殺ってよろしいでしょうか。ミュー様。」
「いや。俺がやる。」
ってか俺がやりたい。
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「じゃ。いまから君たちを蹴散らすんだけど。この家じゃ狭いよね。」
地震!
地面が揺れだし、家が倒壊した。
「な...なんじゃぁこりゃあ。魔法?まさかゴールド...いやダイアランクの冒険者か!だが残念。あの攻撃は効かんかったぞ!」
今のは家が邪魔だからやっただけなんだが。
「こいつは魔法使いだ!距離を詰めて切り殺せ!」
十人くらいだろうか。俺を取り囲んで剣を振り上げている。正直ぬるい。人に一番有効な攻撃手段は炎...あーあれがあった。
不可視な太陽
俺は人差し指を頭上に立てて、くるっと回した。その瞬間俺とカイルとリーンが立っている直径3mほどの幅の外が一瞬で光り、消えた。本当に一瞬だった。村はほとんど残っていない。
「えっ...え........あっ。へ?...うえ?」
カイルはまだ混乱状態らしい。
「さすがですミュー様。通常大爆発を起こす魔法をわざと上空で爆破させその熱波と風だけで倒すなんて...私じゃ思いつかない案です。」
「.........マ?あれが全力じゃないとかマジで言ってんの?」
「あ?ああ。ほかの魔法もあるし、今のはお試しでやっただけだ。」
俺たちが立っている床の外はエグられ、高温に熱せられた痕が地面に残っている。
「.....帰ろっか。」
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その後、違法魔人所持者のアジトを見つけたことを通報して、凍った死体を突き出したら一気にランクアップしてゴールドになった...
正直うまくいきすぎて困る。
「リーン。一度迷宮に戻ろう。報告と休暇だ。カイルにもそう言っておく。」




