五話 都市ネビュラ
マイレから指令や命令を任された。っといっても彼女の言葉を聞いてそれを威厳ある言い方に直すだけ。側近みたいだな。っと思ったが、いざこの迷宮にいる全員を一つの場所に集めると、何人いるんだ?数万人はいるな。
声量拡張
転生前のこの犬が魔法が使えたようで、魔法が少し使える。この声量拡張は俺の声量を大きくしたりする。魔法に関しては感覚的にわかる。具体的な例を出すと久しぶりにゲームをプレイしても感覚が覚えていてあんまり下手になってない感じと同じだ。なんとなく思いついた言葉を言ったら成功する。
「皆の者!これより大規模転移魔法を使用し、十年前の土地に戻る!そこに何があるかはわからない!二級から三級魔聖賢者は転移後外に出てこのダンジョンを隠せ!四級魔聖賢者は飛行の魔法を使い、空から偵察。怪しい者は捉えよ!残りの五級魔聖賢者は第一階層の警備だ!」
大規模魔法。基本百人単位の魔術師が何十時間もかけて行う魔法。過去に一つの都市を一気に転移させたという記録が残っているらしい。ちなみにそんな魔法をマイレは簡単に行える。どうやら魔法に関しては全部無詠唱で、発動できる領域まで思い出せたみたいだ。そこまでの大規模魔術を単独で、一瞬で、無詠唱で行う。
「では...いきます!転移魔術アブソリュート・オーバーワープ!」
....
成功したのかな。よし...
「転移成功だ!各自配置につけ!
マイレ様。」
「いやマイレって呼んで...?様はいいようぅ。敬語もいいようぅ。」
へー。なんか人化した瞬間態度が豹変した気がするが、まあいい。
「では...マイレ。まずはこの迷宮の主戦力と言っていい者。一級魔聖賢者を探しましょう。世界中に五人が散らばっているはず。すべてはそこから始まります。」
このダンジョンを支配している強大な存在がバレたら戦争になる可能性もある。そう考えたときにやっぱり戦力は必要だ。おっもしかして俺ってこういうの向いてたりする?
「....?」
やべっ。一人で笑ってたら変人扱いされちゃうわ。俺たちは地下でゴロゴロしているが、実際は魔聖賢者が頑張ってるんだよな。
よし。
「リーン!行くぞ!地上の調査だ。」
俺たちが動かなくてどうするって話だ。「マイレ。俺たちは今から一番近場の国や村に赴き、いろいろと調査をしてみる。十年前の地図ってあるか?」
「これです!...怪我しないでね?行ってらっしゃい!」
服装はいつものパーカージーパンでいっか。これが馴れてるし。そうして実に数か月ぶりに外に出た。太陽が眩しいな。ダンジョン入口では二級の者が土魔法で土壌を弄っている。
「頑張れよ!俺は周辺調査にリーンと行く!ここは頼んだ!」
「ハッ。勿体なきお言葉!リーンですか?その底辺ではなくここは私を!」「いいや私!」「ここは私を!」
「これは俺が決めた事だ。異議は認めん。いいな?」「...チッ。」
え?今舌打ちした?怖いんですけど。
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地図を頼りにまっすぐ進む。この先に村があったはず...ってあれ?平地で何もない。
「リーン。あの平野を調べてきてくれ。ここに村があったはずなんだが。」
「ハッ。歩行上昇!」四級魔聖賢者と違って五級は空を飛べない。だからああやって走る速さを変えたりする。
そういえばこの近くの国はどうなってるんだ。今俺たちがいる場所はネフゾーラ帝国の領地。一番近い都市はギシタというらしい。
「飛行」
おっ体が浮く。こりゃすごいな。ちょっとくらいハメ外してもいいよ...ね?
「ひゃっふー!」
空を自由に飛ぶ。某アメリカの兄弟が最初に成し遂げた人類の夢だ。それを魔法で叶えた。
夢見心地で浮いていると遠くに何か見えた。....!
ビームのようなものが俺に急接近している。やばいぶつかる!こういう時に使える魔法はこれだ!
「魔術時間停止!」
膜のようなものにビームは包まれ、ビームの時間のみ止まった。このビームって確か四級魔聖賢者の...
「侵入者め!殺す!」
遠くから賢者が飛んできた。
「ってミュー様?!」
おかしいなぁ。俺は怪しい者は捕らえろと命令したはずだが?
「...この失態。この命を持って償います!」
は?
気が付くと、その四級魔聖賢者は自分の首を切って空から落ちて行った。
血しぶきで顔が汚れる。前世なら発狂して泣いてたシーンだろう。俺にグロ体制はなかったはず。
「ミュー様!こちらタオルとお着換えです!最後までミュー様にお手を煩わせるなんてなんと愚かな...」
俺は地上に降りて顔を拭いて着替えた。着替えてる時にリーンが顔を赤くしていたのはいつも通りだ。何が変なんだか。
茂みに入り、四級魔聖賢者の死体を拾った。死者をそのままにするとアンデットという魔物になってしまうからな。あ、そうだビームの時間を解除して...
なにしてんだ俺?
俺の行動一つで人が死んだんだぞ?なのに涙すら出ない。こんなのおかしい。冷静すぎる。心は人間のはずなのに。なのに。
「クソガァ。」
できるだけ小声で言った。
「っっ!申し訳ございません!私が何かミュー様を不快にさせることを」
俺はリーンを見れなかった。そして一言
「死なないでくれ。」誰にも死んでほしくない。その思いはある。この思いが俺の最後の砦だ。人間としてのな。
「うううう。はい。ご命令された通り。死にません!ううう。」
泣いちゃったよ。
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歩行上昇を使って走って約半日。地図にない都市に到着した。
「何者だ!ここは都市ネビュラ。冒険者は冒険者ナイフ。商人なら許可証を提出しろ!」
迷宮のことは言わない方がいいな。情報は武器だと美玲の書物に書いてあった。
「リーン。一旦引いて転移で侵入しよう。冒険者登録をしてまた入ればいい。」
「わかりました。ですが良いのですか?あのような下等な者相手。我々なら殲滅できます。」
「リーン。今回の任務は調査だ。殲滅ではない。」
奥の森に入り、転移魔法のスクロールを使用した。これはマイレからもらったものだ。
路地裏に転移したな。好都合だ。
「すいません。冒険者ギルドはどこかわかりますか?」
大通りにいた若い人に聞いてみた。
ならべく刺激せずに...
「冒険者ギルド?ああ。そこの角を右に行けばあるぜ。ってかお前ら冒険者になるのか?俺も今日登録したんだ。その感じこの都市に来たばかりだろ?案内するぜ。ついて来いよ。」
チャライ。それが第一印象だ。歩きながら話を続ける。
「ああ。ありがとう。俺はミュー。こっちはリーンだ。よろしく。」
「おう。俺はカイルだ。人族だが、ドワーフの国で育った。ちょっと女遊びに夢中になってたら全女に恨まれて逃げてこの都市に来たよろしくな。おっリーンちゃん可愛いね。今度遊んでよ。」
リーンが殺意で満ち溢れている。魔力を見るためにリーンがくれた眼鏡をかけたいが、今は控えよう。こいつ童貞じゃないのか。見たところ俺と年齢は変わらないが、むかつくな。
「冗談だって。お前らはどこから来たんだ?恰好からして近接タイプの獣族と、遠距離魔法の人族といったところか。」
まあ情報はあったほうがいいしこいつから情報を引き出すか。
...ん?なんか声が。あ、念話か。
【ミュー様この傲岸不遜な者は殺しましょう。醜く、愚かです。見てて反吐が出る。】【こら。念話でもそういうことは言うんじゃない。】
「俺らは.....南の方にある村からきた。あと俺は魔法もできるし、リーンは近接もいける。」
「ふぅん。俺はな。恐竜使いだ!」
「恐竜?!存在するのか!」
恐竜ってのはロマンの塊だ。俺も小三のころ親に博物館に連れて行ってもらったのを覚えている。この世界では普通にいるのか...。
「は?当たり前だろ?まさか知らないのか。ドワーフ国では有名だったが南ではあまり話されてないんだな。
恐竜ってのはドワーフの領土の中だけに生息する爬虫類型生物でな。頑張れば使役することもできる。ドワーフは器用だからな。もちろん夜のベッドの方も...」
こいつすぐ話を逸らすな。だが恐竜ってのは興味しかない。恐竜は多分魔物じゃないからうちの迷宮にいない。魔物だったらどっかの階層に湧いてるはずだからな。
「俺も何年か頑張って肉食を一匹を使役したんだ。そいつと俺は旅してる。っとついたぜ。」
アニメで見るような市役所のような物を想像してみてみると驚きだ。石造りの神殿のような場所が冒険者ギルドだ。
「なあ。カイルさんよ。ほんとにここが冒険者ギルドなのか?もっとこう。木造の古臭いのだとおもってたぜ。」
俺は疑いのあまり聞いた。入ったらほかの冒険者たちが椅子とかに座ってて、美人の受付に、壁掛けの依頼。それが俺の中の勝手な定番なのだが、ここは違うのか。俺はすかさず念話を飛ばす。
【なあ。リーン。十年前の冒険者ギルドはどうだったんだ?】【ハッ。十年前は木造二階建てで、入ったら酒臭い冒険者たちがいて、女の受付に、壁掛けの依頼...ですね。】
ほぼ俺のイメージと合致してんじゃねえか!
「ああ。ここは国お抱えの冒険者ギルドだぜえ。数百年前の冒険者ギルドは木造だったらしいな。百年前にあった賢魔大戦で賢者様が天変地異レベルの魔法で作られた建造物がこの石造りの神殿だ。世界中の各地方に点在してるぜ。これくらいは知ってるだろ。」
数百年前?あれれー?
【リーン?おかしいな。十年前じゃなかったのかなぁ】【申し訳ございません。おそらく転移による影響でしょう。最初の転移ですでに時間の流れが狂い、二度目の転移でもとに戻った。っといったところでしょう。】
なるほど。そんな話もあったな。それにしても数百年か。一級魔聖賢者はまだ生きているだろうか。
「神殿の中は絶対安全で傷の回復速度が上がるんだ。骨折とかも一週間とかで治るんだぜ。」
受付はどこだろうか。美人巨乳フロントは...
「さて。冒険者ナイフを組合長から受け取ってきて。登録が必要だから。」
組合長?美女は...いないのか。って何考えてんだ。俺。俺には美玲がいるんだ。
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この冒険者ギルドという職業のシステムは思ったより普通だ。
先ほどから話に出ている冒険者ナイフというのが身分証明書になっていて支給武器てもある物。別にそんなもの俺には月のナイフがあるから必要ないが、身分証明書なら持っていたほうがいいな。
そしてこの支給武器、なんと無料。税金でどうにかしているらしい。
冒険者の依頼は、壁貼りの物を出すシステムではなく大目標というものがランクごとに設定されていて、それを一か月以内にクリアしたら報奨金がもらえるっというもの。下位ランクなら採集だが、上位ランクになると戦闘や未攻略迷宮の攻略などの仕事になる。
ランクはシンプルにブロンズ、ゴールド、オパール、ダイア、レッドダイア、の順番。レッドダイアになると国にオファーを貰えて貴族になれる権利を貰えるらしい。平民が貴族に成り上がる唯一の方法だな。だがこの道から貴族になった者はいない。なぜならレッドダイアになった者はなぜかオファーを無視して冒険者を続けるからだ。この町にもレッドダイアがいるらしいからいつか話をしたいな。
「おう。登録終わったか!犬耳!ブロンズの最初のミッションはペンゾウっていう薬草の採取で、量は指定されてないな。多けりゃ多いほどいい評価を貰えるっぽいぞ。」
この男。まだいたのか。
「どうだ?俺とパーティー組まないか?俺はドワーフ王国の博士の所で育ったから知識だけはあるぜ!算術なんてのもできる。」
ちょっとからかってみるか。
「パーティーはいいけどほぉ。算術ねぇ。じゃあ3×6は?」
「舐めんな!18だ!」
最低限はできるっぽいな。
「じゃあ20×30は?」
「う...うーんっと?」
計算要因としては...ダメそうだな。
「きょ...恐竜を見してやんよ!こっちだ!」
【リーン。恐竜は興味深い情報だ。話を聞きたい。適当に乗らせて情報だけ吐かせよう。】
【かしこまりました。】
そうして仲間にカイルが加わった。
少し長くなりました。